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第18話:平和な時間が一変してしまいました。

――俺とリリーナは牧場『カンプス・パスクウム』に来ている。


 話しているうちに盛り上がってしまったので、子供達が喜びそうな弁当を作って、今日は雲一つない快晴で風も気持ち良さそうだった事もあり、牧場の少し丘になった部分に生えている三本の木の下でピクニックだ。


「ボクねぇ ココの木の上に秘密基地が欲しいのぉ」


 秘密基地か懐かしい……

俺も子供の頃、近所の雑木林に友達とダンボールやビニールシートで作ったな。


「よし、じゃあこの木に牛や鶏の見張り小屋を作ろうか、みんなで材料を集めからだから大変だぞ!」

「本当にいいの!? やったぁぁぁ」


 心細そうに秘密基地が欲しいと言った男の子、まだちゃんと名前を覚えれてないがカプリスと言ったかな?

他の男の子達と嬉しそうに話している様子は微笑ましい。


「男の子達いいにゃぁぁ」

「ハナブサさまわたしたちにも何か欲しいにゃ」

「ああ、何が欲しいんだ?」

「わっわたしは小父(おじ)さんが作ってきてくれるお菓子を習いたいです」

「よし、今度みんなでお菓子を作るか、まずはプリンがいいかな?」

「やったにゃぁ」

「プリン、ボクもたべた~い」


和気藹々とピクニックしながら語らい、なかなか有意義な時間が流れる中


 突然、世界樹(ユグドラシル)のかなり上の方で無数の激しい魔法の光と思われる物が見え、遅れて轟音が空気を震わせ遠く離れているはずのこの牧場まで届いた。


 上の方では何か所からか煙が舞っていて、時折木の破片らしき物が降って来る。

一体世界樹(ユグドラシル)の上層で何が起きているのか……



 しばらくして轟音が止んだのち、上空から白い羽根の生えた者達が飛んで来るのが見えた。

 何かとても嫌な気配しかしない。

世界樹(ユグドラシル)の麓に残っている師匠は大丈夫だろうか……?

俺はみんなに森の中へ身を隠すよう指示しリリーナに預ける。


「師匠が心配だ。すまないがリリーナ、子供達を頼む。」

「これでもリリは先生と小父(おじ)様先輩に鍛えられて強くなったので任せるニャ、先生の事をお願いするのニャ」


 子供達が不安そうにしているのは分かったが、俺にとって師匠はこっちの母親とも呼べる特別な存在。

まだ覚えたての転移魔法で麓を目指す。


◇◆◇◆


――後に語られた世界樹(ユグドラシル)上層部での出来事


 一人の光りしエルフと共にアンゲルス神族が槍を放った。

樹の街は破られ戦いの魔法が紡がれ、多くの光りしエルフは槍に刺され灯火を絶やした。


 次にアンゲルス神族は地に襲い掛かり、猛威はアールヴヘイムを飲み込んだ。


 光りしエルフ、蒼きエルフは地から消える事となる。


◇◆◇◆


 俺は師匠の家に戻った。

そこは既に何者かによって破壊された後で、死体も争った形跡も見当たらず、ただ家が燃やされただけ。

敵も味方も人の気配を感じる事が出来なかった。


 師匠はどこに行ったのか……本当に無事なのだろうか……


 探しても手掛かりは見つけられないので牧場に転移すると、そこは今まさに光の槍を持ち、白い羽根のある女性達の手によって破壊されている最中だ。

見た目は俺の知っている天使なのだが、やっている行動は悪魔としか言えない。


 子供達とリリーナは転移魔法で一緒に沿岸都市アクアロンデへ逃げたのか、見つからないように森を探したが隠れていないようだ。


 折角軌道に乗りかけていたのに牧場も破壊されて……

フツフツと怒りが込み上げて来るが俺は魔法が少し使えるだけで勇者では無い。

この場で殴り掛かっても一方的にやられるだけだろう。


 悔しいがアノ時と同じように俺は逃げる。


 転移魔法で沿岸都市アクアロンデに飛ぶと街は燃えていた。

容赦なく天使の集団によって建物が破壊され、空を飛ぶ事のできる天使は数も機動力も群を抜いていた。


「シャルさんも探さないと……」


 通りには海のエルフ倒れていたりしたが、俺は既に放心状態で思考が停止していた。


「おいアンタ、人間だよな?

怪我はなさそうだしミズドガルド行きの船を出す。アンタも乗れ! 逃げるぞ!」


「お、おれは……」


 船乗りのような男に腕を掴まれ俺は船に乗せられ、その後すぐに船は動きだした。

エルフ以外には興味がないのか天使は追って来ないようだ。


「生憎この状況で船室はいっぱいなんだ。

船底の貨物室がまだ空いてるはずだからそっちに行ってくれ」

「あっああ……」


 何となくで歩み船底を目指す。

そこまで大きい船ではなかったので階段を下りて行き船底はすぐだった。

貨物室へと入ると既に俺と同じような人達が多数いて、空いていた場所に腰を下ろす。


 隣には元は青かったであろう髪を薄黒く染め、耳の形からエルフだと思われる少女が座っていた。

 少し横目で目が会ったが、お互い何も会話するわけでもなく、いつの間にか俺は気を失っていた。

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