第17話:牧場の名前を決めました。
――世界樹を中心とした森を抜け、ウルズの泉から流れる川沿いに作られた牧場。
言いだしっぺの独断と偏見で牧場は『カンプス・パスクウム(野営地の牧場)』と名付ける事にした。
そして、当初は牧場で「生乳が手に入ればよいなぁ」程度で、猫耳種フェリセラの酪農指導役二人と子達が十二人、牛が五十二頭、鶏が三十一羽が暮らすだけのはずだったのだが……
シャルさんと約束した加工場の構想について、家に帰って師匠とリリーナを交えて話していたら、話が膨らんで行き過ぎたのだ……
「リリは妹弟のような後輩がいっぱいできて嬉しかったニャァ」
「わっちはまだ会っておらんが少しなら魔法を教えてやってもよいのじゃ、なにせプリンの材料を作ってくれるのじゃからなっ」
こんな感じで二人がノリノリで楽しそうにしている。
とりあえずは第一次産業の牧場(牛舎、鶏舎)と寮ができたので、次は第二次産業のバター、クリーム、チーズの加工場兼子供達の学び舎を作りたいと思っている。
ただ学び舎に関しては指導する者が足りない。
シャルさんが手配してくれたフェリセラの双子姉妹、エルミアとアリエルは酪農専門の指導役で、仕事で使う最低限の読み書きと計算はできても、難しくなった応用問題や魔法に関しては苦手なようだった。
乳製品を安定して生産できるようになれば、牧場や沿岸都市アクアロンデで売ったり食堂を開きたくなるのは必然。
その際には十二人の子供達を中心に、全てを出来るようになって欲しいと考えている。
そこからかなり先の話になるだろうが、来訪者をターゲットにした宿泊施設を設けたりもして、裏路地で小さくなって細々と毎日を生きてきた生活から、もっと自然の中で伸び伸びと自由に遊びまわり、同時に自活できるだけの知識も身に付けてくれたらと思っている。
音楽や絵画などの芸術関係にも興味を持って、生活が華やかになるのもいいな……
でもまずは、実際に生活している子供達の意見を聞いてみよう。
◇◆◇◆
と言う事で俺はリリーナと一緒に『カンプス・パスクウム』に来ている。
『カンプス・パスクウム』と名付ける事にした事をまずは酪農指導役の双子、エルミアとアリエルに伝え、他の子供達を呼んでもらった。
「こんにちわぁ」
「こんにゃぁ」
「リリーナおねえちゃんだぁニャぁ」
「小父さん、こんにちわぁ」
「ハナブサさまのヒゲェ」
「今日はお土産は無いのぉ?」
子供達がキャッキャと集まってきた。
実に元気がよく尻尾を左右にふっている。
「残念だが今日はお土産はないんだ」
「今日もみんな元気ですニャ」
「まずはちゃんと居るか点呼するぞぉ、リリーナ点呼宜しくな」
「呼んでいくニャッ」
オルヴェル♂、カプリス♂、サルヴァ♂、シャウルス♂、リンドレス♂
ヴァランセ♀、クレッシェンツァ♀、クロミエ♀、
チェシャ♀、フォンティーナ♀、マロット♀、ミセラ♀
男子から順に呼んでいき全員いる事を確認、日頃頑張ってくれている事を褒めて本題にうつる。
細かい仕事内容の追加などは沢山言われても難しいだろうから、言葉や数字、魔法の勉強をしたいか、不満に思っている事、欲しい物があるかなどを聞いていく。