第13話:生パスタにミートソースを掛けました。
――沿岸都市アクアロンデから戻ってきた次の日の朝
起きると俺が右端で右を向き、師匠が俺の背中に抱き着いて、リリーナが師匠の背中にくっ付いて、『くくく』となっていて奇妙な川の字だった。
昨夜の師匠は相変わらずコロコロ寝返りを打って、俺に寝ながらの回し蹴りが入ったりもしていたが、リリーナには蹴りが行ってなくて良かった。
……俺狙われてるのかな?
◇◆◇◆
「それではリリの魔法適正を見るのじゃ」
師匠は俺の時と同じように七つの鉱石を取り出してきた。
「順番に鉱石を握って力を込めてみるのじゃ」
「先生、リリやってみるニャ」
立った状態で七つの鉱石を順番に握ってみるリリーナ。
力を込める時に全身が力んでいるのか尻尾もピンッと立っている。
「ふむ、むこうで話していた時に予想はしていたが、闇がとても強い光を発せさせておるのじゃ」
他の属性は薄ら光る物あったが微妙な感じだった。
そう言えば、猫耳も繋がりな猫王のケット・シーは闇属性だったかな?
俺もリリーナもまだ下位精霊から力を借りるのがやっとで、上位の存在を行使するのは難しいが、水のウンディーネとか、氷のフェンリルとか呼んでみたい。
「リリの適正も解ったところで外に出て特訓するのじゃ、リリはリリで良いが、弟子が二人になって”お主”では分かりにくいのぉ……」
「華房将生なのでハナブサでもマサキでも呼びやすいようにお願いします」
「う~む……」
「リリも小父様先輩って呼ぶの長いからマサキ先輩って呼ぶかニャ?」
「……ハナブサ……マサキ……ではマサキと呼ぶのじゃ」
「好きに呼んで下さい」
妹弟子が出来た事で少しずつ色々変わってきた。
俺はこの先どこに向うのだろうか
それからしばらく外で魔法の修行したのだが、リリは無詠唱で手に小さな闇の炎を灯してたよ……
もしかして兄弟子の方が出来が悪い!?
◇◆◇◆
――朝から修行を続け昼
「お腹が空いたのじゃ」
「空いたニャァ」
師匠とリリが上目づかいねだるような目線を飛ばして来る。
「ハイハイ、今から作りますので待って下さいね」
昨日師匠に粉にしてもらった小麦粉があるので、本当は強力粉を使うはずなのだが生パスタを作ろう。
リリと師匠にに手を洗って来るように伝えた。
小麦粉、オリーブオイル、オリーブ鳥の卵、塩を入れ、木ベラで切るように混ぜる。
まとまりにくいので加減しながら水を入れ、手の腹で押し込むように打ち粉をしながらよく捏ねる。
リリと師匠が戻って来たところで
「これを力を入れながら捏ねてくれるかな」
「了解なのニャァ」
捏ねるのは二人に任せて、ソースはどうしたものか……
ここはオリーブ・タウルスって牛の肉が塊であるので、少し使って定番のミートソースにしよう。
「ムニムニしてて気持ちいいのニャ」
「わっちもやってみたいのじゃ」
何やらリリと一緒になって師匠も捏ねだした。
「ムニムニがツルツルになってきたのじゃ」
「ツルッと気持ち良いのニャァ」
段々と表面が滑らかになり全体が均一に耳たぶぐらいの柔らかさになったら少し休ませる。
「グイグイして力を使ったのじゃ」
「二人とも上手でしたよ」
「それほどでもないのじゃ」
「エヘヘ」
師匠はすました顔してるが、リリは尻尾を左右に振って喜んでいるな
「ここからは少し難しいので俺がやりますね」
今度は板に打ち粉をして麺棒で十字に伸ばしながら厚さ一ミリぐらいにする。
三つ折りか四つ折りぐらいにして四ミリ間隔で切って行き、麺をほぐしつつ打ち粉をしながらテニスボールぐらいの量ずつまとめ、あとは茹でれば生パスタの出来上がりだ。
二人が作業している間に作ったミートソースは、オリーブオイルに微塵切りしたニンニクを入れ、その間にタマネギとニンジンも同じように切って行く。
切り終わったら弱火でニンニクを炒め、香りがオイルに移ってきたらタマネギとニンジンも加えて炒める。
荒く細かく切ったオリーブ牛肉をそこに投入し、肉の色が変わってきたら小麦粉を少し加え、トマトを手で潰しながら入れ、塩と胡椒で味を調えつつ軽く煮込んでおいた。
麺は生なので茹で上げは一分から三分程でフワッと浮いてくればok
ちなみに、生麺は応用編としてバジルやホウレン草、ニンジンなどを一緒に練り込んでアレンジしても彩りと香りが楽しい。
茹であがった生パスタを木皿にのせ、ミートソースを上から掛けて完成!
「ハイ、出来ましたよぉ」
「イイ匂いなのじゃぁ」
「リリ、お腹が鳴り過ぎちゃうニャ」
小麦の豊かな風味が感じられ、強力粉じゃないので心配したがコシもしっかりあり、挽肉よりは大き目に存在感のある牛肉の旨味が、少し太めの生パスタと絡んで実に美味しくできたと思う。
「この食べ物はじめて食べたけど凄く美味しいのニャァ」
リリが口の周りを真っ赤にしながら食べている。
「わっちもはじめて食べたのじゃ」
師匠もリリと同じで真っ赤だった。
田舎暮らしでスローライフしたいと思ってたが、こうやって異世界でそれが叶って、何とも微笑ましい光景に至福を感じる。