乙葉夜の町を駆ける
町に夜がきた。
町の者が眠りについた瞬間、乙葉は真の姿を現した。
まずいことになったな・・・
乙葉は内心そう考えていた。
ここは、例の小間物屋の塀の上である。
犯人の手がかりがないか探しに来た次第であった。
乙葉がそう思ったのは昼間の件である。
ただの盗人でも問題だが、今回の大きな問題点は、あやかしのせいではないかという噂が町人の間でひろまっていることである。
これは、人とあやかしが共存するという考えの妨げとなる、人々はあやかしに対し悪い感情をもち疑っている証拠である・・・
ほんとにあやかしのせいだろうか・・・
乙葉は思った。
町人達は悪いことがおこるとやれあやかしのせいだと言う風潮がある。
乙葉はそれが心配であった。
それに、あの青年・・・
そう、それは町の守り番 松橋 清司郎のことである。
乙葉は、いささかあの青年にも不安を感じていた。
彼は、殿の思想、人とあやかしが共存できる治世という考えに反し、あやかしに疑いをかけることが多い。
あのような、慕われている役人があやかしのせいと話せば、町人もそれを信じてしまうであろう。
乙葉は、新たな手がかりを見つけるべく、夜の町を駆けた。