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1‐2

 僕は事務所から歩いて5分ぐらいの公園に着いたのだけど、目の前には黒服の男が倒れていた。周りには人の気配はなく倒れていた男の近くにボールペンを発見すると、それを手に取った。

「こんなペンでも気絶はするんだな」

 恐怖心を感じながらも、男の首筋を見るとボールペンの跡があった。僕はヒヤリと血の気が引いた。


 ボールーペンを回収すると、警察に電話をかけようと思い、ポケットからスマホを取り出そうとした。すると一人の少女が倒れていることに気が付いた。


「あれ?僕が気付かなかっただけだろうか?彩音さんも女の子がって言ってたし、その子だろう」


 僕はその少女に近づきながら、少女に声をかけた。

「おい、大丈夫か?意識はあるのか?おーい」

 そう話しかけると、少女は薄っすら目を見開いて、僕を見た。そして口を開けた。

「お、王子様?あなたが私を助けた王子様なの?」


 僕の顔をずっと見ている。なぜか少女の顔が赤く火照っているようだった。ただ少女のわりにはトップクラスのアイドル並みに可愛かった。まるで現代のクレオパトラを見ているようだった。顔を見た瞬間、僕の胸はなにかの矢を貫いた気がした。

 ダメだダメだ。相手はロリっこだぞ。イケない、危ないところだった。僕はゴクリと喉の唾を飲んだ。


 ただ、今、少女を助けているのはこの僕であって、僕がこの子の言う王子様になるのかな?

 僕は少女の目を見ながら、コクリと縦にうなづいた。


「ようやく解放されたのね。良かった」


 少女はホッと息を吐き、笑みを見せた。そして立ち上がり、両手を握りながら、僕に言った。

「お願いです。王子様、私、神楽坂千尋をお守りして貰えないでしょうか?お代ならいくらでも払います。いつも男に追われるのです。そんな生活もう嫌です」


 とりあえず、予想外の状況に困惑しつつ、少女を保護し、彩音さんに相談することにした。


________



「彩音さん、警察に連絡および、ボールペンの回収に行ってきました」


 僕は事務所の扉を開けると、彩音さんはいつも座っている高級そうな椅子に座り、足を机に置き、腕組をしながら僕を見た。


「まさか、連れて帰ってこなくても良かったのに……」

 彩音さんは机に置いてあるコーヒーを口にした。コーヒーの器を机の上に置いて、ボソりと、

「ちょっと待てよ。まさか、これも時間平面上の流れなのかも……」

 そうつぶやきながら、右手をあごに付けた。


 たまに訳の分からないことをつぶやく人だ。ただいきなりそんなことを言われるとこっちが困惑してしまう。


「彩音さん?どうしたんですか?それよりもこの子に依頼されまして、守ってほしいらしいんですよ。助けてほしいと」


 僕の背中から隠れていた少女が僕の前に出た。そして手を両手でにぎにぎしながら、軽いおじぎを彩音さんに見せた。

「私は、神楽坂千尋と言います。どうか私を守っていただけないでしょうか」

 深々と再度、おじぎをして見せた。丁寧なおじぎで。ただ今にも少女は涙目だったのが見えた。


 彩音さんは腕組みをしたまま、立ち上がり、少女の目の前に向かった。セーラー服姿で。少女を見渡すと、一息吐いて黙り込んだ。


「…………」


「…………」


 無言が続く、耐えきれなくなった少女は、口を開いた。

「報酬は払います。男にいつも追われているのです。もうこんな生活から解放してほしいのです」

 涙ぐみながら、彩音さんに向かって言った。

僕自身、二つ返事で助けたい。そう願っていた。こんな少女が襲われる姿なんて見たくない。そう僕は思いながらも少女を見つめるしか出来なかった。


 彩音さんはため息を一つ吐いた。腕組みを止め、仁王立ちで少女を見ながら、

「いーや、助けない。助けられないよ。私では」

 彩音さんの予想外で悲痛な言葉が部屋全体に広がった。それと同時に、少女は激高した。


「な、なんで助けてくれないんですか。どうして、あなたに何がわかるんですか」


 そう言葉を発した瞬間、地震が起きた。けっこう揺れていた。本棚の本が下に落ち、彩音さんの飲みかけのコーヒーカップが下に落ちて割れた。僕は少女をかばおうとしたが、彩音さんはピクリともせずに神楽坂ちゃんを見ていた。


 落ち着いたようだ。急な地震でビックリした。余震が来るかもしれないな。


「彩音さん、ここは危ないです。避難を行いましょう」


 そう僕は彩音さんに伝えると、彩音さんは僕に手のひらを見せて、

「大丈夫よ。もう来ないわ。もうそんな力残ってないから」

そう僕を唖然とさせた。


 彩音さんは神楽坂ちゃんを見つめながら言った。

「これだからガキは嫌いなのよ。ふぅ。ただあんたの正体、君の過去、これから起こる未来もその過程も知ってるわ。私は何でも知っている。だけどあなたは救わない。救いたくもないの」

笑みを見せながら、少女を睨む付けた。僕の予想とは全く真逆の答えだった。

今回もご観覧ありがとうございます。

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