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怠惰と六人の仲間は今日を歩く  作者: 灰色の蛇
第一章 仲間がいれば
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六、《強欲》になる前は。

今回は、レージがちょっと軽いよ。

「仲間になった事だし、パーティを組もうか。」


 唐突に、アリアが言う。

 しかし、残念なことに、レージが知っているのは元の世界の事と神から聞いた世界の簡素な構造くらいだ。


「パーティって、なんだ?」


 当然、レージは問い返すことになる。


「パーティも知らないのかい?ってそうか、キミは異世界人だったね。

 パーティというのは、仲間として組んでおけるもので、最大十人、最低二人なんだ。これは、どこかの頭のおかしい魔法使いが、世界の法則を書き換える魔法を作り出して、世界に行使したらしいんだよね。

 パーティを組むと、一人ひとりの得た経験値がパーティに分散されたり、仲間の位置が分かったり、思念で会話もできる。便利だから、ボクとキミで組んでみたいな。ダメかな?」


 ダメかな?と言いつつ、ほんの少し首を傾げる彼女が愛らしい。

 そんな間抜けな思考は止めて、パーティについて考える。

 と言うか、当然組んだ方がいいと思うのだ。


「どうやって組むんだ?」


 聞くしかない。正直、一般常識を神から授かっていないので、こうするしかない。とても申し訳ない。


「別に難しいことはないよ?手を繋ぐか、重ねるかして、パーティ編成って言えばそれでパーティが組める。

 それじゃ、やってみようか。」


 言われるがまま、手を差し出す。その手を、アリアは握る。細いくて、柔らかくて、優しい手だけど、どこか力強い。


「「パーティ編成」」


 唱える。その瞬間、アリアとレージにパスが繋がれる。


『どうだい?これがパーティだよ?』


 アリアの声が頭に響く。これが思念会話なのだろう。

 頭の中で、声を出してみる。


『おっ、喋れた』


 口に出さなくても、相手に伝えようとすれば伝わる。これは便利だ。


『愛してる…』


『!?!?』


 めちゃくちゃ慌て始めた。

 うん、楽しいな。嘘はついてない。見た目とか、性格とかは好みだし、仲間として好きだ。


『冗談だよ。そんな照れんなって』


『とりあえず死んだらいいと思うよ』


 悪いが、俺不死なんだ。


「リアって、彼氏とかいなかったの?」


「あぁ、そうだね。人付き合いが苦手だったっていうか、人と関わることが少ないっていうか…

昔は、いろいろあったのさ」


表情が暗くなる。アリアの昔の話を、レージは知らない。


「そう言えば、お前の昔の話は聞いてないな。聞かせろよ。

 小さい時の事とか、初恋とか。」


「それは絶対に言いたくない!!と言うか恋なんてしたことない!

 まぁ、いっか。とりあえず、座って話そうよ。キミが暴れたせいで、切り株が結構あるんだし。」


 暴れた、と言われた。

 そういって、アリアは近くの切り株にちょこんと座る。

 俺も同じように、アリアの近くの切り株に座った。


「それじゃあ、始めようか。


 ボクの、強欲な前世のお話を。」






 アリア・アクィナスは、エルフの村に生まれる。


 村長の家系で、兄が一人、姉が一人、妹が二人の五人兄弟。

 村長は高名な魔法使いで、母は錬金術師という珍しい職種だった。


 故に、アリアはたくさん学んだ。兄弟の中で一番好奇心が強く、また知識欲に溢れていた。


 幼い時から天才的な魔法力を発揮した。それは努力の証であり、才能がそれに応えた証でもある。


 スキル《錬金術》《全属性魔法》《知識》


 これらは、彼女の努力と、才能が生んだスキルである。


 このスキルがあっても、彼女はさらに求めた。力ではなく、知識を。しかし、伴って力も得た彼女は、村の外から力の強大さを妬まれ、畏れられた。しかし、村人はそれでも、彼女に普通に接した。彼女は人に好かれる性格であり、やさしく、強かった。

 彼女は、村人も、村も好きだった。



 そして、事件は起こる。


 偶然にも、アリアが街へ、本と食材を買いに行った時である。

 村に、帰れなかった。

 村が、無くなっていたのだ。


 漂う火の粉、血の臭い。そして、見てしまう。


 何も喋らず、バラバラになってしまった村人を、焼きながら笑い、女を縛り、辱めたり、そのまま連れ帰ろうとする者達を。


 セカイが、止まる。


 アリアはそう感じる。


 実際には違う。アリアの知覚、思考速度が、感情によって加速されていた。




 ーー殺す。




 そう考えた途端に、魔法が発生する。最も得意な水属性魔法を、最大の殺傷力をもって


 ーーー苦しめて殺してやる。



 瞬間、一部のものはこちらに気付き、警戒するが、

 遅い。


 ある者は串刺しにされ、ある者は氷漬けになる。

 ある者は水に包まれ、ある者は内部から破裂する。

 ある者は切断され、ある者は蜂の巣になる。


 たった一瞬で、全て終わる。


 残るのは、大量の『死』と、一つの『生』のみ。



 アリアは、泣かない。泣けない。泣いていられない。

 そんな時間があれば、アリアは考える。


 ーー命を生み出す方法を。創世の魔術を。


 生命をゼロから生み出す方法は、創世の際に神に用いられた。あくまでも、神話でしかないが、可能性はある。


 ならば、実行するまでだ。



 ーーー例え、それが、禁忌でも。


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