表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰と六人の仲間は今日を歩く  作者: 灰色の蛇
第一章 仲間がいれば
7/35

四、《強欲》の名

 レージは白熱した怒りの中で思考する。


 《感知》は相手の情報を得る。

 人数は三人、武器は右のがナイフ、真ん中が弓、左のが杖。おおよそ魔法使いだと思われる。防具はなし、軽装のみで森に入っていたようだ。先程まで魔獣を屠っていたのが、服にこびり付く血からわかる。卑しい笑みを顔に浮かべている。


 憎い。邪魔をされただけとは思えないほどに憎い。


 ここまでの情報整理を、たった一秒で終わらせると、思考を切り替える。


 魔手を3本、透明化させ、切れ味を持たせる。


 そして、勢い良く振り下ろし、一撃で二つに切り落とそうと、魔手を振り上げ、


 そこで、彼女に肩を叩かれた。


「そうそう大罪能力を使うもんじゃないよ。大罪能力はこの世界に大きく爪痕を残しているからね。もし持ち主だとバレてしまえば、世界中から狙われ、殺されてしまうよ。それに、大罪能力じゃなくても、相手に見合った最小限で戦うのが、ボクは美しいと思う。


 まぁまぁ、ボクに任せてよ。」


 名前を知れなかった彼女が告げる。怒りが治まってはいないが、彼女に任せてみたい。それに、能力を使おうとしたのが読まれたのも気になる。後で、彼女の能力を聞き出したい。


 それに、単純に興味もあった。


 彼女は右手を出し、指を広げる。すると、人差し指、中指、薬指の三本から、小石ほどの氷が生成される。相手が表情を変え、警戒する。

 魔法が使えたことに驚く。しかしその威力には、目を見張った。


 彼女が右手を振ると、氷は凄まじい速度で飛び、男どもの眉間を貫いた。正確無比なコントロールだ。

 たった一撃だった。驚いた表情のまま、後ろにばたりと倒れる。


「…凄いな」


 圧倒的な技量に驚いた。魔法の力の強さを感じた。

 殺した三人を埋葬し両手を合わせ、それから彼女との会話を再開する。


 彼女はこちらを見て微笑むと、


「ふふん、ボクは強いんだ。あの程度なら、余裕だね!」


 自慢げで、嬉しそうな彼女を見て、ふと思う。

 

 ーー可愛い。


「可愛いな」


「っ!?」


 つい口に出てしまい、彼女は顔を真っ赤にして驚き、狼狽える。


「そ、それはボクの事を指して言っているのかい!?あ、い、いや、照れてるわけじゃないんだよっ!けっして!!」


「悪かった悪かった。ついつい可愛いと思って、口に出しちゃったわ。ごめんな」


「むぅ…。君は本当に…」


 つい、イタズラをしてしまう。やり取りに、何故か懐かしさを感じた。

 彼女は何かを言いかけて、すぐに口を閉じた。その表情が一瞬暗くなった気がして、今度は注意してその顔を見つめた。


 照れてる彼女は可愛かった。元々が綺麗な顔立ちな上に、白く長い髪は美しいし、性格も愛らしい。


 先ほどの表情は、きっと気のせいだ。



「そ、そんなことより!自己紹介をしてなかったじゃないか!

 まったく、可愛いなんて軽々しくいうものじゃないよ。もしかしたら惚れてしまうかもしれないよ?ボクは案外ちょろいんだ。

 さて、さっき出来なかった自己紹介をしようか。

 私は《強欲》。アリア・アクィナス・マモン。

 《強欲》の悪魔、マモンの名を持つ。

 エルフの元賢者で、転生者でもある。元、賢者だけど、ボクは強いんだよ?」


 彼女は、アリアは、そう名乗った。




 ーーこの時、レージは全く気づいていなかった。


 人を三人も目の前で殺し、平然としているアリアの異常さ。

 そんなアリアと、当たり前のように話すレージの異常さ。


 二人の、ほんの少しの狂気に、二人は気づくことは無い。



異世界なら、生命の価値観が違くてもおかしくない。


そう思う方もいるかもしれませんが、人を殺して感情に波がたっていないことに問題があります。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ