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怠惰と六人の仲間は今日を歩く  作者: 灰色の蛇
第一章 仲間がいれば
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三、お前の罪は

 声に対し、レージは沈黙で返す。


 ーー敵意があるかもしれない。


 レージの《感知》には、敵意感知という能力も存在する。

 これは、対象がレージに敵意をもっているのか、それを判別出来る能力である。


 それが、通じていない。妨害されているような感覚だ。

 それだけでなく、ステータスも読めない。ほんの少しならば相手の力を推し量れる《感知》が、完全に無効化されている。


 すなわち、相手は《感知》を知っていた、もしくは気付き、対策をしたということ。


それだけではない。《感知》が、違和感を訴えている。


 十分に警戒し、相手の動きを探る。

 すると相手、いや彼女は微笑む。


「そんなに警戒をすることは無いよ。《感知》とはまたいやらしいスキルだ。

乙女のプライバシーを覗くものじゃないよ?」


 おどけた調子だが、嫌な気はしない。独特な雰囲気をもった女性だった。

 だが、レージは聞き逃さない。


「そう言いつつも、《感知》を知っているということは、お前も同じようなことをしたんじゃないか?」


 彼女は眉をほんの少し動かす。


「おっと、口が滑ってしまったね。残念だけど、ボクは君みたいな力は持ってないんだ」


 彼女のスキルは、きっと、《感知》上位互換、または完全に別の、もっと高レベルのスキルだと思われる。


 だとしたら、発動条件は?範囲は?どこまで知れる?

 レージには、分からないことしかないのだ。


 何も、分からない。

 けれど、それは突然やってくる。

 彼女のことを知っている気がした。知らないはずなのに。


 レージのどこかが、彼女を求める。

 それは魂だった。知らない、はずなのに。


 そして、気付く。

 電気が走ったように、唐突に、強く。確信する。


 一つ、それでも、何故か確信できた。

 もしかしたら、《感知》が、それを知らせたのかもしれない。


 運命があるなら、そいつが俺に知らせたのかもしれない。

 彼女は『同じ』だと。

 彼女もきっと。


「お前の、罪はなんだ」


 口をついて出た。我ながら、なんと洒落た物言いだろう。

 しかし、こう問うべきだと、魂が告げる。

 彼女は、今までとは違う笑みを浮かべ、嬉しそうに、


「ボクの罪は、《強欲》。求めてはいけない【禁忌】を求め、触れ、囚われた。

 やっと、気づいてくれたんだね?《怠惰》」


 これは、きっと運命だ。その運命は、きっとあの”神”の仕業だろう。


 だから、感謝する。最後に、たくさんの思惑と、少しの慈悲で、この地の、高い空へ、俺を”生み出した”こと。


 《強欲》のそばに、俺を送ってくれて。

 あんな爺さん、二度と会えないな。


「悪かった。すぐに気付けなくて」


「いいんだ。いいんだよ。それより、名前を教えて欲しい。君の名前が知りたい。

 ボクから名乗ろうか?それともキミから?」


 首を少し傾けながら、彼女は笑う。


 美しい人だった。白い、真っ白な髪を後ろで結んでいる。だが、結ばれた髪の中に、漆黒の髪がひと房混ざっている。

 少し高めの鼻に、小さめの唇、耳は尖っていて、エルフのようだ。


 けれど、レージが一番惹かれたのは、その、目、瞳である

 大きめの目に、少し鋭い目尻は、知性を感じさせる。

 瞳は銀色をしている。どこまでも、どこまでも深く、神秘的な妖しさを醸し出す。


 そんなことを、今頃になって気付く。

 警戒ばかりに心を使いすぎて、余裕がなかった。


「俺から名乗るよ。

 俺はレージ・ネシア・ベルフェゴール。

 《怠惰》に選ばれた、元人間のアンデット。ってとこだ」


 転生者だ、とも言おうとしたが、転生者がどんな扱いか知らないし、もしかしたら、転生という概念もないかもしれない。

 バレている範囲で話させてもらった。


「ふふっ。レージ、気を抜いてるつもりかもしれないけど、抜け切れてないよ。もっと、楽に話して欲しい。


 ボクの名前は…」


 そこまで言って。

 勢いよく矢が飛んでくる。それも、彼女を狙って、真っ直ぐに。

 《感知》すると同時に、魔手を出し、たたき落とす。


 最悪のタイミングで邪魔が入った。

 《感知》は相手の正体を探る。

 それは、人だった。三人いる。


 声がする。


「仕留め損ねた〜…」

「上等な女だ、こんな所で会えるなんてな?」

「丁寧に扱えよ、お前ら?

 動けなくして、ポーション飲ませて回復させて麻痺させて…」


 虫唾がはしる。

 名を知れるところで。

 大事な大事なところで。


 己の汚い汚い汚い欲求のためだけに。


 レージが、《怠惰》が、激昂した。

焦らします。


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