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怠惰と六人の仲間は今日を歩く  作者: 灰色の蛇
プロローグ ~転生~
3/35

能力初使用、そして旅立ち

 神に、自分の《怠惰》の力について聞く。


「ふむ、《怠惰》の能力か。これは実に面白い力でな、使い方次第なのじゃよ。


 その前に、まず魔法を使ってみようかの?」


 神は嬉々としてそう言った。

 目がいたずらっぽいので、きっと何か考えがあるのだろう。


「わかった。教えてくれ」

「まず、手を前に出すのじゃ」


 言われた通り、前に右手を突き出してみる。


「そこに、エネルギーが集中するのを想像してみなさい」


 イメージをする。すると、右手の手のひらの前に、ほんのりと光の球が集まり出した。

 驚いているいると、神が話しかけてくる。


「それが魔法の素じゃよ。お主はとても強く魔法への適性があるようじゃな。

 属性の概念は知っているな?属性は、基本的に火、水、土、風の4種の一般的な魔法と、聖、魔、の2種が少しばかり存在しているのじゃ。

 聖、魔は別の言い方で陽、陰とも言うぞ。


 今、お主がやっているのはエネルギーの凝縮じゃ。そこに属性を持たせてみようではないか。

 適当に想像するが良い。

 楽なのは火じゃ。まず、やってみい」


 ふむ、確かにイメージはしやすい。

 とりあえず、手のひらを上に向け、火球を作るイメージをしてみた。


 すると、光だったものが一気に燃え盛り始めた!


「ふむ、《炎魔法》を扱えるか」

「それは?」


 またまた新ワードである。


「《炎魔法》というのは、【スキル】の一つじゃ。

 そもそも、【スキル】というのは、お主の《怠惰》のような、能力のまとめ、説明の様なものじゃ。

 《炎魔法》の場合、今お主がやったのがそこに属する。

 ちなみに、自らの【スキル】と能力は意識すれば脳内に映し出されるはずじゃ。

 特殊な【スキル】があれば、他人のものも見えるのじゃがな」


 といわれたので意識してみる。頭の中に勝手にイメージがわいてきた。


 個体名:ーーー

 種族:人間

 スキル:

 《怠惰》

 怠惰なる魔手

 《炎魔法》

 ファイア


「さて、とりあえず、魔法系のスキルを全て得ておこうかの。その方が遥かに楽じゃ。ここには無尽蔵にマナがあるから、いくら試しても問題ないしのう。

 わしが補助してやるから、六属性を制覇してしまおうかの」


 そう促され、《水魔法》《土魔法》《風魔法》《陽魔法》《陰魔法》の六種全てのスキルを手に入れた。


 いや、ちょっと待て。


「普通魔法は先天的に適性やスキルが一つで得意不得意があるもんじゃないか?」


 もし世界中の人が六種全てを自在に使えたら、戦争が起きた時、ゾッとするどころの話ではない。


「察しがいいのう。そうじゃ。しかし、お主はまだ生まれ取らんぞ?だから先に全てのスキルと適性を得たのじゃ。魔法スキルを手にする事は、無理ではないがほぼ不可能、と言うだけじゃ。

 そもそも、魔法の適性は魂に依存しているからのう。

 実際は、スキルだけでなく、肉体との相性が存在するがの」


 そんな屁理屈が通じていいのか。疑問である。

 まぁ、魔法を扱うのは楽しいし、強くなれるならそれはそれで悪いことではない。


「さて、魔法には一つ、制限があってな。

 人が扱うには、自らの手や指へエネルギーを集めねばならん。それが【魔力】じゃ。魔力は身から離れると制御が難しくなる。簡単に言えば、射程を求めると、威力が減るのじゃ。

 まれに、それを必要としない体質をもつ者がいるが、それでも高威力の魔法には魔法陣の展開が必要となる。

 さらに、本当の才を持つものは、遠くにも魔法現象を発生させることが出来る。極少数じゃが」


 そう言って、神は空中に魔法陣を描き出した。


「実例があったほうがよいじゃろ?本来ならば、わしは思考するのみで魔法をつかえるが。

 今から行使するのは、陰魔法の広範囲殲滅魔法、《テラグラビティ》じゃ。原理は簡単じゃが、扱いが難しい上、魔法陣も複雑なものとなってしまうため、遠方に描くことは困難じゃ。人が使い、失敗すれば自らをも押しつぶしてしまう 」


 そう言って、空いた左手でとても巨大な岩を地形ごと創る。


「よく見ておけ。《テラグラビティ》」


 一瞬のことだった。とてつもない重力がかかり、

 岩も、地形も、全てが潰れて平地になっていた。


「これが最高位魔法じゃよ」


「人には使えないんだろ?何で俺に見せたんだ?」


 その疑問に、神はこう答える。


「一つは、これを扱える人間は、存在しないとも限らないこと。それを知って欲しいからじゃ。

 魔法とは科学と同じ、理論と法則で成り立っておる。成り立ちさえすれば、なんでもありなのじゃよ。

 もう一つ、お主には陰属性魔法の才がある。それも相当のな。

 さらにもう一つ。お主の《怠惰》の能力は、それを可能にするのじゃ。

 先ほど、スキルを閲覧したと思うが、そこに、怠惰なる魔手という能力があったはずじゃ」


「あぁ、あった。どんな能力なんだ?」


「実に単純、故に強力な力じゃ。

 体のどこでも良い、手をもう一本生やすよう想像してみなさい」


 彼は想像力に自信があった。その程度なら余裕である。背中から、手を生やすイメージを浮かべる。

 すると、イメージの通りに黒い手が出てきた。

 視界の右手側に現れたそれは、背中から生えている感覚がしっかりあり、触覚を持っているようだった。


 なるほど、いかにも怠惰だ。怠惰らしい。移動などせずに、身の回りの物を動かし、取ってくることができそうだ。


 これは楽だなぁ。


「なるほど、これは便利な能力だな」


「ふむ、そうじゃろう?じゃが、お主の考えているよりも、もっと強力な能力じゃよ?」


 そこで、彼の頭に閃くものがあった。

 魔法を教えたのに、こんな意味があったのか。


 魔手を四本にし、それぞれにエネルギーを持たせる。火、水、土、風、聖、魔、六種の魔法を、自らの手も使って生み出す。


「こういうことで、あってるか?こんな力の使い方をするのが正しいんだろ?違うか?」


 六属性魔法の同時併用、それはとてつもなく強い。それに、この魔手はどうやらどこまでも伸ばせるようだ。つまり、遠方で、魔法陣を描かなくとも《テラグラビティ》を行使できるとゆうことである。恐ろしい能力だ。


「正確には、それで、仲間を助けて欲しいと言うのが本心じゃがな。それには、相応の力が必要じゃ。

 大罪の能力は他に六つある。それぞれの持ち主はとても苦労しているはずじゃ。助けてやってくれ。


 そうそう、仲間といえば、他の大罪能力者がいた時、そのものが適合者だと分かるようにする必要があるな、今、その力を授ける」


 神は、右手をこちらへ向け、「授与」と一言のみ発した。これと言って変化はないが、スキルを閲覧すると、《感知》というスキルが追加されていた。いろいろなものを感知できるスキルのようだ。


「さてと、これでお主は異世界へ行けるはずじゃ。

 しかし、お主が求めるなら、三つ程願いを叶えてやろうではないか!」


 ふむふむ、おねだりをしなくてよくなったか。三つの願いとなるとは思わなかったが、だとすると幸運である。いくつか欲しい能力があったのだ。


「それは能力でも良いのか?」

「もちろん。世界の均衡が崩れない範囲ならばな?」


 ならば答えは三つだ。


「一つ!《怠惰》に、停滞という能力をつけて欲しい。対象は万物に設定できるようにしてくれ」

「そんな能力でよいのか?お安い御用じゃ」


 そんな能力、だと思うだろう。しかしこの能力はとてつもなく万能なのだ。そして、怠惰らしい能力でもある。

 前に読んだ漫画で、この能力に憧れたのだ。


「二つ!不死身になりたいっ!!あと、食べる必要もなくしてくれ!」

「ふむ、それならば種族はアンデットじゃな。それは面白い。いいじゃろう。ちなみにアンデットならば姿は人形ならば容姿は自由にかえられるぞ。

 まぁ、完全な不死者にはなれん。流石に世界の調和が乱れる。制限をもうけるぞ」


 これで、ほぼ不死の生命体へと変化した。堕落した生活には、死なない体と食の必要のなさが重要だ。まぁ、娯楽程度に食事をこなせれば十分である。憧れだったのだ。

 そして、容姿まで自由にできるようだ。これは実に面白い。好きに容姿を変えられれば、歳をとらなくてすむ。外見に変化がないのは良い。


「そして三つめ。俺の中から、過去の記憶を消してくれ。

 正確には、使える知識を残して、思い出せなくしてほしい。

 やっぱ新しい所に行くんだ、前のことは忘れなきゃな!」



 本当は昔の事を思い出したくないだけだ。

 嫌な記憶がいっぱいある。


「名前も忘れさせてくれ。 代わりに、あんたが俺に名前を付けてくれよ」


「……?………お主がそれを望むなら。記憶はこちらで保管しよう。

 お主は名付けの効力を知っているのか?」


「名付けをすると力が一時的に奪われ、名と共に与えられるというやつか?」


「それで正解じゃ。神に名付けられるとなると、それは凄まじいものだと思うぞ?」


 神はどうやら初めてのことに、ほんの少しわくわくしているようでもある。


「頼む。ついでに魔法の知識もある程度頂けたら」


「わがままなやつじゃ。いいだろう。名前を与えよう。

 人であり、アンデットであり、転生せし《怠惰》の適合者でもある者よ。

 神がお主に、名と、力を授ける。

 お主の名は


 レージ・ネシア・ベルフェゴール


 名は怠惰を意味する言葉と、怠惰の悪魔でありながら人のために戦い散った、気高き男から取った。

 ベルフェゴールの名のように、気高く、勤勉な怠惰であれ!!」


 ここに、レージ・ネシア・ベルフェゴール、レージは誕生したのである。


「ありがとう。強いて言うならちょっと長いな。

 これで俺は旅立てるんだな?」


「あぁ、そうじゃよ、レージ。わしも、永い時の中で、久しく楽しい時であった。

 これは内緒じゃが、時折わしも世界へ行っておる。もし会うことがあれば、それとなく助言をしてやろうぞ。

 それでは、レージよ、旅立ちの時じゃ。

 道を誤るなかれ。ベルフェゴールの名に恥じぬように!」


「わかった!それじゃ行くわ。楽しんでくる。じゃあ、頼んだわ」


 神が世界への門を開く。左肩を、神の右手が掴む。


 俺の身体を光が包み始める。

「行け!!若き力よ!!」


 《怠惰》の器、異世界の住民、元人間のアンデット。

 レージ・ベルフェゴールは異世界へと、


 旅立ったのである。





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