一、一週間
二章スタートします。
一章に加筆修正をしましたので、(現在もしていますが)時々覗いてください。
矛盾とか多くて悲しくなりました。
雨の音がする。さっきまで見ていた夢は、何だったのだろう。
目が覚める。
ふかふかのベットで起きる。身体を起こし、指から腕、足からお腹までの筋肉を動かす。
これは、俺の日課だ。
「おっ、やっと起きたようだね」
《強欲》、アリア・アクィナスの声。
あれから一週間ほどたった。
「おはよ。もう一回寝ていいか?」
「だめ」
こんなやり取りも日常的になった。
一週間。何があったのか思い出してみようか。
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アリアの涙の後、まずは住むところが欲しいという話になった。
「それについては、心配は要らない。実は、この森に転生してから半年が過ぎているんだ。当然、拠点ぐらいは作るさ。ついてきて。」
アリアの後を付いて行く。
すると、なんと家があるではないか。
「…は?」
「すごいだろう!魔法の力さ。」
魔法の力、ということはアリアが作り出したということだ。
レージの理解が全く追いつかない。
「ごめん、やってみして。ちょっと頭がついていかない」
「あ、そっか君は魔法を知らないんだったね」
とか言いつつ、地面に触れる。同時に、手頃な石に魔力が注ぎ込まれていく。《感知》のおかげで魔力の動きがわかるのだ。本当に便利なスキルである。
そして、土が動き出し、人形になる。
「これがゴーレム。錬金術によって生み出されるんだ。これに命令を下し、建築をさせているのさ。
ついでだし、魔法と、スキル、この世界について、色々教えるよ」
そして、アリアの講釈が始まりました。
…凄く楽しそうだ。
アリアはどうやら人に知識を与えるのが好きらしい。
俺は考えたり実験したりするほうが好きだけどな。
要約しよう。
魔法とは、魔法スキルによって得られる現象で、魔力を必要とする。
スキルには、先天的に持っているものと、鍛錬や一定条件をクリアすることによって手に入るものがある。
例えば、全属性魔法を使えるようになりたいならば、何度も魔力を生成し、属性を持たせるイメージを作りづつける。すると、ただの魔力が色に染まっていくらしい。それを魔法として放つことが出来れば、その瞬間スキルを獲得できる。それを六属性続ける。
六属性の魔法スキルを手に入れる、という条件をクリアすれば、スキルが合わさり、《全属性魔法》が生まれる、というわけだ。
先天的なスキル、で身近なものは、《怠惰》や《強欲》である。
正確には転生時に得ているが、先天的なもので変わりない。
これらはユニークスキルと呼ばれ、持っている人と持っていない人が半分ずついるらしい。
先天的なスキルには、種族特有のものもあるらしい。
例えば、人間は《陽属性魔法》を基本的に持っている。普通の人間は魔力が少なく、明かりをつけたりすることしか出来ないそうだが。
「なぜ、ボクらのこのスキルが大罪と呼ばれるか分かるかい?」
この話に至った経緯を思い出せないが、アリアのこの一言から始まったことは覚えている。
「昔、七人の大悪魔がいました。彼らは恐ろしく強く、しかし、優しさも持っていました。無意味に殺戮をしたりする、おとぎ話のような凶悪な悪魔ではなかったのです。
彼らは、自分達が許せないものを持っていました。それが、【七つの大罪】です。一説には、彼らが犯してしまった罪で、それが許せず、また、それを犯そうとする者も許せない、そんな話があります。
それになぞらえ、彼らは七つの大罪と呼ばれました。一部の人間は、彼らのことを信奉し、崇め、そして一つの宗教を作り出しました。それを、七罪教、または大罪教とよびます。教えはただ一つ。『七罪を許すなかれ』。ある時から、教団は暴走し始めました。善悪の判断なく、狂気的に、七罪をほんの少しでも犯した者達を襲い、拷問し、改心させ、そして殺しました。
彼らは正しいことをしていると思っていました。勿論穏便派と強硬派はいましたが、人々の目には同じにしか映りませんでした
そして、教団を知らない者や理解していない者には、
『七つの大罪が、人を滅ぼし出した』
などと囁かれました。教団が七罪を名乗っていたためです。
そうして、七つの大罪は、人から憎まれ始めます。それは他種族にも伝染し、七つの大罪は、大罪人として世界に知られました。
そんな時です。たった一人の怪物が動き出します。
彼は、人間でした。しかし、ただのバケモノでした。世界を憎み、力を求め、その憎悪を隠して生活しました。
七つの大罪を滅ぼし得るならば、と人々は彼に力を与えます。
彼は、七つの大罪と戦いました。負けることはないだろうと思われていました。
そして、彼は勝ってしまいました。
彼は知りませんでした。これから来る地獄を。
七つの大罪を取り込んだ彼は、その力に負け、怠惰を愛し、強欲であり、暴食を望み、傲慢を極め、嫉妬し、色欲に溺れ、そして世界すべてに憤怒しました。世界への憎しみが、大罪に歪められたのです。
それしか出来ませんでした。
もはや、彼は彼ではなかったのです。
彼は傲慢ゆえに神にすら挑み、そして敗北しました。力は分けられ、器に注がれ、彼は封印されました。
偉大なる神によって、世界は守られたのです。
めでたしめでたし…?かな。
…つまり、ここで言われている器、というのは、ボク達の事を指しているのだと思うね。これには驚いたよ。
このお話にはとっても面白いところがあると思わないかい?」
「何がだ。」
「考えようよ…」
「…………どうやって大罪能力を奪ったんだ?」
「正解。そう、それだよ。そんなことは神にしかできない。
では、彼はどうやったのか。
これは憶測なんだが、彼は、スキルを奪う、もしくは模範するスキルを持っていたのではないかな。
だとしたら、恐ろしいね。そんなスキルがあれば、世界は彼一人で回ってしまう。
そして、大罪系スキルにはリスクがある。それは、普通の人ならば耐えられないはず。だからボク達器が必要なんだろうね。」
吸収する能力とリスクのある能力。
そんなスキルは、俺の読んだことのある本にもたくさん出てきた。
まぁ、それは大昔の話らしい。今のことだったら興味がわくのだが、どうにも。
強いて言うなら、七つの大罪がどんな人物達だったのか知りたいぐらいだが、
「そんなことはボクも知らないよ。」
と苦笑いされてしまった。
それから、アリアとたくさん話した。
魔法でどんな事が出来るのか、とか、どんなスキルがあるのか、とか、この世界はどうなっているのかとか、文明の発展、とか。
とても楽しかった。
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さっきの夢が、思い出せない。
さっきまでは思い出せたのに、いまは思い出せなくなった。
「アリア、夢を見て、思い出せたのに、それが唐突に思い出せなくなることってあるのか?」
アリアは、驚いた表情を浮かべる。
「ボクもそれが転生してから度々あるんだ。
これは、一体なんなんだろうか」
アリアもあるらしいが、知らない事のようだ。
大事な夢な気がする。大事な、大事な記憶な気がする。
分からない。何もわからない。
思考を切り替えて、アリアと話す。
しばらく、話していた。
ノックが響く。
「誰だろうね。」
「さぁな」
この音が、未知なる出会いの足音となることを、
まだ、二人は知らない。