八、大丈夫。
タイトルに、気づくかな…?
「そして、この森の中に転生した、というわけ。」
かなり重い話だった。仲間を殺した国に殺されたのだから、きっと復讐心は強いはずだ。
「…辛かった、か?」
こういう事は聞くべきかわからない。相手の気持ちを身勝手にも知ろうとするのは、良くないことだと思う。
けれど、もし俺がこの状態なら、心の中を、ほんの少しだけ理解して欲しい。分かったように振る舞われたくはないが、無理解でも怒りを覚えるだろう。
「…うん。辛かった。」
だから、辛かったか、それだけを聞く。
それで、十分だ。
「辛かったんだ、とても。たった一日で、ボクの世界は変わってしまった。仲間は殺され、ボクも捕まり、逃げ出したところを一撃で殺された。ついさっきまで本を読んだり、研究したり、おしゃべりしたりしていた、ほとんど普通の女の子だったんだよ?それが、人を殺して、禁忌を犯して、殺されて。
転生してから、独りで何度も何度も泣いたよ。今も、泣きそうだ。
…一人、だったんだ。」
あとは、相手が自分から話したいことを話す。軽く混乱したりするし、弱いところをさらけ出すようになる。
アリアは、泣いている。静かに、泣いている。
それが、可哀想で、守ってあげたくて、安心させたくて。
「大丈夫。俺がいる。一人じゃない。俺が、俺がそばにいてやるから。全部受け止めるとか、そんなことは俺には出来ない。そばにいることしか出来ない。隣で、泣いてる時に慰めよう。吐き出した気持ちを、共有しよう。だから、リア」
彼女を抱きしめる。細かった。見た目では気づかないけど、かなり痩せている。精神的にも、肉体的にも、かなり負荷がかかっている。
そんな身体を、強く、優しく、ただ抱きしめる。
「もう、自分を責めんな。
もう、一人で悩むな。
もう、一人で泣くな。
俺が、いるから。俺が、助けてやるから。」
驚いて、びくっ、としたリアは、そのまま嗚咽をこぼす。次第に大きくなる泣き声を、レージは忘れることは無い。
しばらくすると、落ちついてきたのか、彼女は声を小さくする。
「…い、いつまでボクを抱きしめているんだい?
恥ずかしいじゃないか…」
そう言われ、腕を広げる。彼女は目と頬を赤くしていた。
「しょうがないだろ、リアが泣き続けるんだから。」
「そ、そんな事言って!泣かせたのは君だろう!甘い言葉を囁いて、ボクを落とそうとしたって無駄だからね!!
…でも、ありがとう。凄く、助かったよ。」
「なら良かった。リアの助けになれるなら、俺は何だってするよ。だって、仲間だしな。」
そう、彼女と俺は仲間だ。
仲間とは、助け合って、手を取り合って、同じ事をして、同じように笑って、同じ時を共有するものだ。
「そう、だね。」
アリアは笑う。綺麗な、微笑みだ。
「仲間なんだから、しっかり助けてもらわなくちゃね!!
今は二人だけど、いずれ七人になるんでしょ?」
そう、大罪能力は七つ、残り五つだ。
もし、五人がアリアと同じように苦しんでいるなら、助けてやりたい。大罪能力持ち、と言うだけで、どうやら世界の敵になるらしい。
仲間は、同じ大罪能力者じゃなきゃいけないしな。
「ああ、そうだ。
悪いけど、アリアにも手伝ってもらうからな?お互いがお互いを守って、信じて。そんな七人になりたいと思う。」
なんか、甘ったるいな。でも、嫌じゃない。むしろ、心がそれを求めている。
早く、七人になりたい。
「うん。いいよ!
心強い仲間が六人いたら、きっと楽しそうだし。
それに、どんな事でも…」
言葉を切る。ちらっとこっちを見る。
それだけで、彼女が何かを言うのか、何故だろうか、なんとなく分かった。
「「仲間がいれば、大丈夫」」
予想通りで、びっくりした。目を合わせて、笑い合う。
あぁ、幸せだ。きっとこれが、幸せ、ってやつだ。
仲間がいれば、大丈夫。
絶対そうだ。大丈夫だ。何があっても大丈夫だ。
守るために、強くならなきゃな。仲間を、傷つけさせるわけにはいかない。
レージは最強を目指す。仲間のために。
それは一人の最強ではなく、七人での最強だ。
仲間のために、最強を目指す。
ここに、レージが全力で生きることが決まった。
それが世界を揺るがすことになるとは、まだ誰も知らない。
これで1章終わります。強欲に出会って、方針が決まり(?)ました。
『仲間がいれば、』の『大丈夫』というお話です。こんな感じのことしてみました。
しばらくの間は、仲間を集めることがレージ君の最優先です。ゆえにお話も仲間探しです。
(まぁ、平穏には終われませんが。)
2章からにご期待ください。
※総合PVが1000こえてました。驚き。
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