王子様は幸せな結婚をします
この国はオウジクワレ王国。
この日多くの人が望む結婚式がとり行われていた。
「王子が逃げ出したぞぉおおおお!!!!!」
「であえ!であえ!逃がすな!!」
無数の兵士が網や縄を片手に駆けた。
兵士達は慌てていた。なんとこの国のテイン王子様が隣国の姫様との結婚式の最中に逃げてしまったのだ。
隣国の姫様はその美しさと魔王討伐の事でとても名高い姫様。
どうやら王子様は異国の姫様の名高さと、生唾ゴックンな魅力的な姿を見て、自分ではとても釣り合わないと恥ずかしくなって逃げ出した様だ。
兵士達はそんな逃げ出した軟弱王子様を逃げたニワトリを捕獲する様に追い掛けた。
民たちも協力して、隣国の姫様に恥をかかせた顔だけは良いと大評判の王子様を追い掛けた。
王子が居そうな更衣室、トイレ、ゴミ箱、木ノ上、壁の隙間隈無く探索された。
「離せ!離してくれ!!?いやだ!結婚はイヤだ!!」
王子様は包囲され三時間の逃走劇の末に捕獲された。子猫の様に木に登って逃げられなくなった所を捕獲された。
縄でグルグルにされながら王子様は往生際悪く叫んだ。
「全く……幾らエリリン王女様が可愛らしいからって逃げ出すなんて」
「そうですよ。まったくあんな可愛らしい王女様をお嫁さんにするなんて王子の幸福者」
「可愛らしい!?可愛らしい!?お前ら目が腐ってるのか!?」
兵士や国民は苦笑、王子様はやはり大変恥ずかしがり屋な様だ。
しかし恥ずかしがって此れから結婚する相手に暴言はいただけない。兵士の隊長さんはヤレヤレ王子は仕方ないですなーと笑いながら布で口を封じて担いだ。
王子は売られてく子牛の様な瞳で教会に戻る。
「王子様!結婚おめでとう!元気に御子様を早く作ってください」
「お幸せに!!いやぁ美男美女の誓いのキスはどんなのか見るのが楽しみだ」
民や兵士は口々に結婚に対しての祝福の言葉を述べた。
何かを想像させる祝福、その度に王子様は担がれながら魚のようにビチビチと暴れた。
口を塞がれ新郎の豪奢な服を着た王子様
「おお、戻って来たか。全く王子殿は恥ずかしがりやだや。我が姫の美しさに逃げ出すとはな。フハハハハハ!!」
王女様の父上、隣国の王様は大笑いした。
世界観が違うと思わせるぐらいの、世紀末な覇王様の様に御立派な身体の持ち主で有られる。遠近感が狂ったと思わせる身体のサイズの様にとても器が大きい。
隣で何故かガタガタ震えるこの国の王様と比べたら子供と大人だ。因みに国力比も其ぐらいの差がある。
今回の主役の片割れ。
それはとても(肉体美的な意味で)美しい少女だ。肉体の大きさや風格は髪の長さ以外は父王にソックリである。
「……」
隣国の姫様は王子の到着を目をつむり腕を組待っていた。それはまさに武士、もとい奥ゆかしい女性の風情。エリリンは御歳14歳の姫君。ロリである。
「……ぁぁ、は、は」
主役、王子様は伴侶となる少女の隣に置かれる。口封じは流石に外されていた。
王子は見上げないと王女様の美しい覇気溢れる顔が見えない。王子は恥ずかしがって見上げない。代わりに見るのは王女エリリンのペットのタママン。王子より大きな虎にしか見えないのは気のせいだろう。
「なんで猛獣ぽい動物が居るんだ!?」
「猛獣って王子殿下、可愛らしいニャンコじゃないですか。姫様の大切なペットらしいですし特別に結婚式の参加を許可しましょうよ」
猫狂、好きの家臣が擁護した。
自分の命、もとい結婚式が大切な王子はテメェふざけんなと憤る。王子が何か訴える様に近くの兵士を見るとサムズアップされた。
「ハハハハハ、王子は動物が苦手なのか。安心しろ。その子は獲物以外は無闇に襲わんよ」
王様(強)がそう言った。
そうなのかと王子はニャンコのタママンを見ると、タママンは王子様が気になる様でジッと見ている。
ジュルリ
「私を見て咽鳴らしたぞコイツ!?」
大丈夫、ニャンコのタママンは主人思いなので主人の獲物には手を出さない。
結婚式は始まろうとした。
王子は緊張のし過ぎなのか目が死んでいた。新郎が縛られたり目が死んでいるのは結婚式ではよくあること、そのまま結婚式は始めても問題はない
しかし………エリリンは重々しく口を開いた。
「王子よ。何か心に秘めた事が有るようだな。言ってみろ。我等は夫婦となるのだ。秘め事をしての婚儀は後々の後悔を生むかもしれん」
エリリンのコトバに王子の目に光が戻る。王子は何故か深く考えハッ!と何かを思い出した。
「……じ、実は私には幼き日に結婚を誓った娘がいた。わ、私は約束を違えて…結婚することは…」
「約束か……」
元々この婚儀はこの国が主導した隣国との繋がりを強固にする為の婚儀、国との繋がりの為に好き会う者を裂くことは……義に厚い姫は沈黙。同じく義に厚い父王(強)も沈黙。
父王(弱)は強大な隣国との婚儀をぶち壊しそうになっている事に卒倒しそうになっていた。
そして一人だけ王子は顔色を明るくしていた。まるで今まで忘れてたどうでも良い約束で死刑執行から助かったかのようだ。
「王子殿下!」
声を上げたのは一人の令嬢、それは嘗て王子と結婚の約束をしていたクルーナ公爵令嬢。結婚式に駆けつけていたようだ。
「クルーナ!」
王子の顔に喜色
「王子殿下!私との約束は気にしないでください!」
王子の顔に絶望。
「王子殿下……まさか幼き日の約束を覚えていてくれるなんて想いもしませんでした。クルーナはとても感激し、嬉しく思います……しかし!私は……幼き日の約束で縛るような卑怯な女にはなりたくはありません」
クルーナはそう言うと涙を一筋流した。とても綺麗な涙だ。そして王子も涙を流した。何故か汚くみえた。
「それに殿下が……本当は、本当は……エリリン様の方が好きなのはわかっております!だって殿下の好きなタイプはエリリン様の様な女性ですもの!」
「クルーナ!?なにいってるんだ!?」
暴かれた秘密に王子は叫んだ。
「……王子様は、昔教えててくれましたよね。自分の好きな女性は自分の後ろ支える女性でなく。自分の隣で共に歩いてくれる頼りがいのある女性だと」
確かにエリリン王女は頼もしい。隣どころか前を爆走してそうな程に頼もしい。
「それに……お、お胸が大きい方が好きだと」
クルーナの胸は…慎ましい。それに比べてエリリンの胸はメートル単位のお胸、しかも脂肪でなく筋肉だけと言う特級の暴乳。つまり王子の好みの大きな胸だ。
「……結婚の約束をしたまだ7つ頃から15になるまで私は殿下に毎日揉まれましたが、結局は大きくなりませんでした。乳がデカクならないモノに興味はないと結婚したくないと言われましたよね……」
クルーナの暴露は終わった。王子の女性人気についても終わった。
「今まで弄んだと恨みもしました……ですが殿下は約束を覚えていて約束を守ろうとしてくれました!それで、其れだけで私は…」
クルーナは嬉しそうに泣き。王子の良心は何故か痛む。
「…エリリン王女様、この様な事で結婚式を中断させて申し訳有りません。……ど、どうか王子とお幸せになってくださいませ!」
「うむ、その想いこのエリリンがしかと受け止めた。王子と永久に幸せになろう」
エリリン王女は力強く頷く。それは約束を絶対に守る説得力を大きく感じる。王子には終身刑と聞こえたのは気のせいだろうか?気のせいだろう。
それから王女様と王子は結婚した。
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王子さま
顔だけ良い第3王子、知勇平凡、性格は巨乳好きのゲス。民からも臣下からの支持率も無い。無駄飯食い。
強国へと嫁ぐ婚姻対象に選ばれる。特に反対なし。
結婚後浮気が頻発、5度目の浮気にタママンに虚勢される。虚勢された後に女装癖に目覚めた。女装は普通に美女にしかみえない。何故かよくエリリン王女に男装させるようになる。夫婦仲は良好になった。
エリリン王女
性格は強引とか誤解される事が有るが、基本的にはおしとやかで物静か、12で魔王を拳で倒した事もあるワンパク王女な一面もある。
王子の事は特に何とも思ってなかった。むしろ結婚式を中断したかった。王子の約束から発したクルーナの発言で夫婦となる決意が固まった。
クルーナ令嬢
見掛けチッパイな悪役令嬢だが、性格は善良。
知性も高く将来を期待されていた。もし王子とくっついていれば生け贄、もとい婚姻対象には選ばれなかっただろう。
タママン
ニャンコ