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ヴァンパイア王の恋  作者: ルクス・エテルナ
2/2

2.カスケイド村

─カスケイド村─


少女アリアと共に近くの村まで降りてきた。

村の入り口には、いつ立てたのか分からないような古めかしい看板がある。


今降り注いでいる秋の落ち葉のように、これから朽ち果てていきそうな看板だ。


アリア

「良かった!」


後ろからアリアの声が上がる。

その声は年相応そうな軽快な調子。


「……カスケイド村」


アリアの明るい声も気にならないほどに何かが引っかかる。

口の中で、アリアに聞こえない程度の音で呟いた。

(俺は……知っている。この村を……)

当然といえば、当然かもしれない。


大部分の記憶が抜け落ちているとはいえヴァンパイアとして長年生きていたならば、眠りにつく前に存在していた村を覚えている可能性だって捨てきれない。


(こんな特に変哲もない村を覚えている?)


どこにでもあるような変哲もない村。

村の入り口から、どんなに欲目で見ても何もない。


左側には並んだ村人の墓ばかり。

左奥には農場に、真正面には村長宅らしい少し大きめの家。


右奥には小さな池と恋人たち。

そして高台になっている場所。


すぐ右手には教会らしき建物と魔法を練習している少年少女と青年たちの姿がある。


アリア

「ブラッドさん、私の家へ行きましょう!」


アリアの、まだ幼い手が俺の手に触れた。


アリア

「さあ!」


せかされてアリアに引っ張られていく。

そのまま歩いていると簡単な木の柵に囲まれた場所で魔法の練習をしている人々が手を止めてアリアを振り返る。


???

「アリア、どこに行っていたんだ?」


赤い髪に、勝ち気そうな表情。

理知的な黒い瞳をアリアに注いだあと、俺を見る。


アリア

「リサ姉!ただいま!」


リサ

「・・・・・・そちらの男性は?」


リサと呼ばれたアリアより10ほど上の女性は鋭い視線を投げかてくる。

どうやら俺のことを警戒していることを隠すつもりはなさそうだ。


「俺はエルンハイム=アーロン=ブラッド」


簡単に自己紹介を兼ねて名前を告げる。

その名前を聞いたとたんリサと呼ばれた女性の顔色と、その場に集まっていた15歳以上の青年たちの顔色が変わる。


リサ

「お前・・・・・・ヴァンパイアか。

この村に何の用事だ」


アリア

「すごーい、リサ姉!なんでヴァンパイアって分かったの?!」


アリアは純粋に驚いているのかリサを見る目つきが輝いている。


リサ

「アリア!ちゃんと勉強してないな!

ブラッド姓はヴァンパイア13氏族の一つの姓だろう」


アリア

「あ・・・ちょ、ちょっと忘れていただけ」


今更ながら”あ、そっかぁ”と呑気な声を隣であげるアリアを俺もリサと呼ばれた女性筆頭に青年たちは頭を抱える。


青年

「ヴァンパイアにしても、そんな趣味の悪い名前をつけるなんて」


その場にいた青年はボソリと呟く。

リサと呼ばれている女性は、さっと顔色を変えて青年に叫んだ。


リサ

「ユーリ!ヴァンパイアに関わるな」


「趣味が悪い・・・・・・」


俺はユーリと呼ばれた青年に近づいて首筋に噛みついてやろうかと足を前にだす。


ユーリ

「だってさ、ヴァンピールに殺されたヴァンパイア王なんて聞いたことないだろ?

そんな縁起の悪い名前つけるなんてあり得ないだろ」


ユーリの言葉をうけて、襲うのを止めた。


「ヴァンピールに殺された、だと・・・・・・?」


どういうことだ?

起きたときにあった胸の傷と何か関係があるのか。


しかも純血種に劣る、人間とヴァンパイアの混血種ヴァンピールに傷をつけられたかもしれないというあり得ない言葉に戸惑った。

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