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セイギノミカタ ~赤城夏希~  作者: 桜
三話 連続婦女暴行殺人事件
9/17

連続婦女暴行殺人事件 ♯3

   * * *


 彼は、いたく機嫌が悪かった。敢えて表に出すことはなかったし、するべき事柄でなかったから、あくまで無表情を保ったままでいた。けれど数人には「今日、機嫌悪いですね?」と言われたし、それに対し彼は「まぁね」と、頷くだけだった。

 一週間かけて作っていたプログラムは試作とは言え直ぐに起動させても支障がないくらい秀逸だったし、多少改良の余地はあるにしろ、後は数日からかえば済む話だった。警察へのデータベース侵入もすんなりいったし、それにより導き出された手はずも順調に整った。

 日本の警察は、プログラマーが優秀で、流石強大な個人情報や機密を扱うだけあって、気付かれない様に入り込むのは至難の業である。流石にホスト・サバー本体に攻撃を仕掛けると足が付くから、末端からの侵入を試みたし、それは比較的簡単だった。どれだけ設備を強固なものにしようと、どうしたって強大な組織には綻びが出る。特に末端連中はそうだ。いくらコンプライアンス、日本で使用する意味は本来のものとは異なるのだが、主に指して使われる個人情報保護法、それに乗っ取り規則を作り、パスワード制にしたところで、大した事はない。因みに何故か昨今日本で今更使われ出したその言葉は、実際個人情報だけではなく、“法令遵守”という意味合である。ただ、世間で多く認識されているのが、個人情報保護において、だろう。また、「個人情報」とうるさい連中もいるものの、保有個人情報の数で、実際遵守すべきかどうかも決まり、子会社程度であれば、実際そうしなくても違法にはならないのだが。

 しかし警察データベースともなれば、法令は遵守すべき量を持ち、実際漏洩したとなれば、罰則対象となる。しかし、古い体勢に馴れた人間は、不規則な数字を設定するのは余り好まない。自己の誕生日はタブーにしても、電話番号や家族の誕生日、もしくはその組み変えなど、ゆかりのある数字を入れたがる。本人には針穴一つ程度の綻びだろうが、プロにしてみたら何と侵入しやすい、立派な大穴だ。と感涙してしまう程だ。つまる所、そうして簡単に侵入し、情報を得た訳なのだが。

 しかしD―クラウン幹部の一人であるシーク、コード・ネームをSと言うのだが、彼の機嫌はいたく機嫌が悪かった。手順がすんなりといくのは好ましい事ではあるが、そのどれも、彼の機嫌を直す事は出来なかった。

 今日は比較的風が少なく、日が陰っているというのににじめっとしている。イタリアも海に囲まれているし、緯度もさして変わらないと言うのに、日本の六月、梅雨というものは非常に面倒だ。身に付けている薄手の、黒のロング・コートの下は僅かに汗が滲んでいたけれど、流石に幹部たる自分が脱ぎ捨てる訳にはいかない。何しろ、下の連中に示しが付かないからである。そうした時も涼しい顔をして表情を変えない。それが引率者たる人間である、と彼はボスに教わった。だからこそ、勿論利便性も兼ねて、なのだが、こうして暑苦しいコートを纏っている訳なのだが。

 するとふと、肩に大きな手がとん、と置かれたのに、Sはゆっくりとそちらを向いた。

「何だ、また機嫌が悪いな。あれか、まだランジェリーの色が決まってないからだろ」

 彼が機嫌が悪い事を一目で見抜けるのは、兄弟でも三人しかいない。一人はこんな気軽に触れてくる事はないし、軽快に話しかけ、ましてジョークなんて言わない。

「まぁ、色々あるんだよ、マルコ」

 彼の通常時機嫌が悪いのを見抜けるのは、たった二人しかいない。そもそも一人は触れてなんてこないし、声なんてかけてもこない。無口すぎるし、気の悪いジョークも投げつけてこない。

 D―クラウンの証である一つ、仮面を付けていない限りは、コード・ネームではなく本名で呼び合う事になっている。リーダーである彼は、陽の光に当たると眩しい程に輝く髪の持ち主で、色合いに負けず劣らず明るく笑う、愛嬌のある奴である。マルコムに肩を叩かれて、便宜上は部下でもあるシークは軽く首を傾げてみせた。

「簡単に言えば木曜のデートが潰れてしまった、非常に残念な事ではあるけれどね」

 普段木曜夜から金曜と言えば、彼は最近出来た彼女と楽しく甘い一時を過ごす、一週間の内にある定期的な大切な日だった。今度は鎌倉でも行ってみようかな、と折角プランもぼんやり考えていたと言うのに、その機会が次週以降に流れてしまった事が非常に悔やまれるのだ。

「何だよ、そんなのこの件が片付いたらさっさと彼女の家に行けばいいだろ。俺達が動くんなら、そうは時間がかからんだろ。むしろ仕事が忙しいって言って怒るような女は止めておけよ」

 彼が言う一件、とはD―クラウンの高尚な名を勝手に使い、あまつさえ陳腐な犯罪という泥を塗ってくれた事件である。シークが次動く日にちを検討づけたのは木曜であり、彼はその事を言っているのだろう。しかし。

「違うよ、彼女が忙しいんだ。僕が振られてしまった側って奴だよ、マルコ。まぁ、こっちとしてはランジェリーの色や形を吟味する時間が出来たからいいけれどね」

 眼鏡を正しながら、夕べ彼女と電話していた内容を思い出していた。たった数分でしかなかったけれど、多忙なせいもあってか多少苛立っていた。それ以外にも理由があるのは解っているが、多少の言い合いもした。言った所でキリはないし、向こうは仕事で、予定が潰れてしまったのだから仕方がないにしろ、癒やしを取り上げられた感は否めないし、少し不機嫌な彼女に対して次どんな手を打ったらいいのかも考えなくてはならない。以前から行っているサプライズは、自分がユーモア・センスが足りないからおおむね不評で、プレゼント以外で他にどう繕うべきだろうか。とにかく彼女との付き合いは非常に繊細で、時折ものすごく気を遣わなくてはならないのだ。

 今回の事件も、彼らにしてみたら事件という程大それたものではない。便宜上そう呼んでいるだけなのである。『D』の名にかけた解決のためとはいえ、幹部二人が出張る話でもない。本来ならマルコム一人でも組織の汚名を晴らすには十分だが、幹部がもう一人加わることにより、部下達へと、いかに重要な一件であるか、と、ついでに腹いせもかねて、捜査に加わってやろうと決めたのだ。

 四階建てのビルから下を眺めても、自分達のオフィスの高さほど見晴らしが良い訳でも、まして海が見える訳でもない。今は日中で人々が顔を突き合わせ挨拶することもない、さめざめとした日本の光景を見下ろしながら、シークは口角を上げた。

「さて、人海戦術と、推察力、行動力、どれだけ我々が日本の警察に勝るか、楽しみだな」

 日本の警察は、事前に行動を起こすのは得意ではないが、推察力は世界でも屈指だ。一度起きた事件を精査する技術も、非常に高く、機器類も日本のメーカーの繊細さや精密さは世界でも群を抜いている。ただ、扱う人間の頭が固すぎるだけなのだ。

 全てではないにしろ、データバンクから本件に関わりのある情報は大凡集め、精査した。ただ流石書類の得意な日本人と賞賛すべきだろう。詳細な科学捜査班のデータは、D―クラウン自体には不要だとしても、まとめてあった内容だけで十二分過ぎる程だった。

 稚拙で、馬鹿馬鹿しい犯行。一言でまとめるなら、それに尽きる。これならただのレイプ目的の方がずつとマシだった。犯した女の身体にDの文字、それと王冠を模したマーク、日にちを刻み付け、あたかも組織の犯行だと思わせる。その癖地図上にすらこの名を刻ませようと模索する。名を売る事は大歓迎だが、手法が良くないし、ただそれだけでは、人々の中に色濃く残る訳でもない。

 計画的、誇示欲がある事は同時に身を滅ぼす。まして良く知りもしない組織の名を騙るなら尚更だ。日本のことわざにある、狐の皮を被ったなんとやら、と言うものだろう。

 おそらく次に狙うなら、Dを騙り、あえて地図上に文字を描こうとしている沿線、日にちも限定されている。D―クラウンの総構成員は二五人、うち二〇人が二組で動いているだけにしても有能な連中には狭すぎる範囲だ。そいつらに十日本日、二時からある程度の目星を付けておく様に命じてある。一般人なら目がつかない場所でも、元々犯罪を犯してきた連中にしてみたら、どこで何が起こるかなんていくつかの検討は付くだろう。

 ただ、今回ばかりは自分達に向けられた泥を拭う意味合いもあり、幹部二人以外はランダムで選んだ二人組で行動させている。定刻通り連絡をどちらかが入れてくれば問題はない。その時に確認するのだ。『お前達は、今、二人一緒か?』と。できれば兄弟を疑いたくはないし、頭の悪い犯人が見つかってくれればなんの問題もないのだが。

 犯人の毛皮の下に隠れている尻尾だけでも掴めばいい。実際、犯罪事態を起こしていた後でも構わない。その方が日にちが経ってしまった犯罪より証拠を燻し出すことが容易だし、警察に引き渡す際も楽だ。とにかく、見つけて家を突き止められるだけの情報が欲しい。

 本当は、見つけ次第殺せ、と命じる方が楽だし、元々の職に近い命令だったけれど、さすがに今殺人の犯罪者グループ扱いをこの日本でされるのは困る。そこまでする相手でも、実はない。

 ならばいっそあえて半殺しのままこの名を覚えさせ、警察に突き出す。正義の味方、Dークラウンとして、一度名を馳せてもいいな。と思ったし、また東京中の広告等たる画面をジャックして、あえて締め上げておいた犯人の居場所を教えてやるのも、目立つかもしれない。悪くない、が、同時に少し面倒くさかったから、あくまでも第二案として頭の片隅に留めておくだけにしていた。このリーダーに言えば「そいつは派手だな! いいな!」と言うだろうし、その手はずを整えるのは、確実にシークが担う事になるだろう。電波を妨害するのも、乗っ取るのも多少時間と頭を使うのだ。汚名は晴らしたし名は売りたいけれど、時は金なり、無駄で楽しくない事はやりたくないのが本音だった。

 とにかくこちらが犯人の身柄を確保し、警察や政府に対し、『それだけの力がある』誇示、警戒させるだけ構わない。警戒されることはむしろ歓迎している。警察が代々的に動けば、それだけで立派なパフォーマンスになるからだ。しかし、警察よりも面倒な奴らがいる。

「さて、ところで今回は、あいつらは動くかな。ほら、レッドアロウズだ。アメコミヒーローにしちゃヤンチャすぎて、スーツはダサい奴らだよ」

「それは彼らに聞いてくれよ。最も、流石に次で四件目ともなると、正義の味方が動く口実にもなるだろうけれどね。奴らが動いたら、僕らとどちらが先に捕まえると思う? マルコ」

 端から警察という選択肢は入れていない。もし動くとするなら、圧倒的驚異は統率性のない、正義だけで動く彼らだ。少なくとも柔軟性と自由度は多少であり、難点を言えばスーツのデザインがどこかの作業着だろうか、もっとマシな奴を買ってやろうか、と思うくらいには頂けない程度である。

 シークが笑って問いかけると、マルコムは大仰に肩をすくめてみせた。

「いいな、賭けるか。そりゃあ、俺はDークラウンだからな、自分の場所に賭けるしかない。さて、じゃあお前はレッドアロウズだな。そうじゃないと賭けの意味がなくなっちまうからな。賭けようと言ったのはお前だし、異論はないだろ?」

 人懐こく、少し声の大きい悪役の幹部がそういうのに、部下であり、友人である男は眼鏡を正した。

「まぁ、仕方がない。なら、この場にいないナガレには後一つ、イレギュラーのものに賭けてもらおうか。賭は、賭けている人数が多い程面白い」

 もちろん、最後に、この場にいない人間に賭けさせた可能性は、警察ではない。そうして彼らは、次に何を賭の対象にするか、時間まで話し合う暇つぶしの理由を作ったのだ。


   * * *


 ちょっと可愛すぎじゃないかしら。胸元を見下ろすと、パステルカラーのトップスが胸元をさり気なく飾っていて、真麻はなんとなく辟易した。ピンクは嫌いじゃないし、身に付けない訳ではない。私服にもう少し落ち着いた色合いのものは数枚持っているけれど、流石にこんな感じのものは、好んで選ばない。

 胸元中央から真っ直ぐに谷間のラインを飾るひらひらとしたレース。トップスはまだいい。問題は腰より下だ。上もひらひらしているのに、下も真っ白の膝上のプリーツスカートで、同じようにひらひらしている。腰にはセット販売のおまけで付いてきたパール風の飾りベルトが弧を描くようにぶら下がっていて、歩く度それとスカート足を擦る。

 世の中のOLが毎日通勤程度でこんな格好をするかしら。悩むのも面倒だったから結局これに決めてしまったけれど、ここまで気合いが入っているとデートの勝負服みたいだわ。内心そう感じていた。

 と言っても、真麻自身人生で数度しかデート経験がなかったから、世の中の女性が毎回こんな可愛らしい恰好をするかどうかは知らない。けれど真麻自身少なくともその殆どはパンツスタイルで赴いていたし、だからこそ、滅多にスカートを着ない事もあってか、下にショート・パンツを穿いていたにしても、恥ずかしい。

 例え今回電車沿線の、人気の少ないムードたっぷりの場所を歩き、こちらにひっかかるかどうかも解らない強姦殺人魔と言う相手を待つにしても、だ。

 まだ靴まで気合いを入れる羽目にならないだけ、マシだっただろう。歩く度とん、と鳴るショート・ブーツは、流石に六月には似合わない。こんなに可愛らしい恰好なら、選ぶならパンプスか、少し早いけれど露出の少なめのミュールとかだろう。それを言ってしまえば、鞄も家から引っ張り出してきた、傷が付いてもいいようなブラウンの合皮で出来たものなのだが。

 現在真麻がいるのは、東京都小平市、小平市役所駅である。都心部の路線を利用していると、一見すると駅も小さいし、華やかさも少ない。都心部へのアクセスも比較的容易な街の一つであるが、午後十一時現在、駅前の賑わいは多くなく、だからこそ路地一つ曲がれば、危険の孕む臭いもする。犯罪というのは隠れて行いたがる場合、一見して住宅街のほんの片隅で行われるものなのだ。

 おとり捜査って言ったって、簡単に引っかかるものとは思っていない。実を言うと、三日前に麗花が言い出した事である。

「個人的には周囲への警戒プラス、おとり捜査がベストではないかな、と思います。こちらに引っかからなかったとしても、犯行予測周囲にいて、何かあれば対応も可能ですし、丁度隊には女性二人いますから、人数は少ないですが可能性は一つでもかけた方が宜しいのではないかな、と思うんです。そうなると、私は今回ナビゲートから外れる形にはなってしまいますが」

 言い分は解る。ベストはこちらにふらふらと寄ってきてくれる事がありがたいのだが、どうせ張り込みをするついでなら、効率としては悪くはないだろう。

 それには司令の柳も少し考えた後、小さく頷いた。

「まぁ、危険は及ぶかもしれないが、今回の件は、範囲も確定はしていないから、なくとも不便はないだろう。どの道、指揮権は警察に委ねられるだろうからな。まぁ、君達であれば多少の対処は出来るだろうが……」

 それに慌てて挙手したのが、隊内で尤も古株であり、先輩の藤堂だった。

「司令、その案を採用されるのでしたら、狙われるのはご婦人だけです。真麻君と麗花君になってしまいますが……真麻君は一人で対処出来るかもしれませんが、麗花君は遠距離後方支援型です。それなら誰か側につけてやった方が宜しいかと思われます。自分がやりましょう」

 その意見も利に適っている。真麻の実家は空手道場のその上総本山、真麻自身も師範代の免許を持っているし、警察や軍の女性指南も一時は彼女へと依頼がくる時もあったし、素人相手なら対処は難しくはない。その点、麗花は情報処理能力に長けていて、戦闘に赴く事があっても趣味の射撃を生かすのみで、接近戦は得意ではない。だから、一人にしても問題はないだろう、と藤堂が判断する事も解る。

 まぁ、元々女扱いされない事は馴れているもの。しょうがないわね。今更だし、諦めるどころか、扱われたらどうしたの、と問いかけてしまいたくなるだろうから、真麻にしてみたら“いつも通り”という訳だ。

 夏希だけは「いいか、なんかあったら直ぐに助け呼べよ。お前、怖いって言ってんだから」と言ってくれた。けれど彼は彼で、単独起動班として行動する予定となっている。 

 それでこの格好で、駅前を外れれば人通りも明かりも乏しくなる駅にいるのだが。ちなみに服装に関しても、麗花が提案を出した。

「司令、犯人はナイフを所持しています。襲われた女性達の特徴から言って、スカートの、ちょっと可愛い感じの、簡単に襲われそうなスタイルです。けれど自前となると、それが損傷する場合もあるので、おとり捜査部門に関しては、お洋服購入の経費を要請します」

 なんてちゃっかりとした意見だろう。と関心した。当初柳は戦闘スーツで行けばいいだろう。あれならナイフ程度容易に防げる。と却下したのだが、その却下も麗花の一言で阻まれた。

「だって、うちの戦闘スーツって、あれですよね。作業着ジャケットみたいな奴。色気がなさ過ぎますよぅ。だって男性の皆さん、デートであれ着てきて、わぁっ、可愛いって思います? 私なら、可愛い方が男性の食いつきもいいと思うんですけど」

 それに、男性一同でうぅん、とうなって、結局麗花のごり押しが勝利したのだ。全員口ではっきりと言わないが、戦闘服が格好悪い、というのは満場一致の意見である。何故その色にしたのかは解らないけれど、お揃いのホワイトシルバー、見た目は安物の、ぺらぺらの作業ジャケットだ。実際は弾丸も簡単には通さない上、濃度六〇パーセントの酸程度なら防げる、特殊素材なのだが、いかんせんセンスがない。しかも工場系の作業服も、殆どの企業は勤務先で着替えるものだし、そのままで通勤するとなると、ただのものぐさか、ロッカーがない類いの現場だろう。可愛いな。と暴行相手に選ぶとは言いがたいし、余程の物好きか、ラフすぎるくらいの女性が好きという事になるだろう。しかしこの場合防御性が高い、よりも相手の触手が無差別でも、「まぁ、可愛いしそこそこいいか」程度の、獲物が連れる格好でないと話にならないのだから、言い分として通った訳だ。

 経費でお洋服! 麗花は喜んでいたが、真麻は実はそんな経費は申請が通らない事も、実際は諦めた柳のポケットマネーから支出された事も、何となく解っていた。彼は独身で、財布の中身はいかほどかは知らないし、そう無駄遣いをする様なタイプでもないけれど、少なからず上司のお財布と頭を痛めた、もう一つの案件という事になってしまった訳だ。だから比較的安価な洋服で、と見た目が可愛らしい目の服選んだという訳だ。

 麗花はまた可愛い花レースのカーディガンを羽織った、なんて言うんだろう、妖精のようなふわふわした服を選んでいた。

「こういうのはある程度露出していた方が狙いやすいですよぅ」

 同じような、膝丈までのふわふわの生地のスカートに、フリルのおまけつきのトップスを選ばれるとは思わなかった。

 我が隊の頭脳派が「次に狙うとしたら、このあたりかなって」と指したのは、小平市役所駅、それとほぼ向かいにある、新小平駅である。新小平には麗花、藤堂のペアが待機し、中心部近くの見回りを夏希が、そして北に柳が自家用車で待機している。つまり、レッドアロウズの本拠地は今空っぽなのである。

 この事件がDークラウンのものではないと信じているけれど、今彼らが動くと、ちょっと困る事態でもある。とにかく、片付けるなら今日なんとかしなくてはいけない。

 そろそろ作戦開始時間かしら。と腕時計に目をやった、その時。耳奥に押し込んでいたコードレス・イヤホンから、『あー』とのんきな声が聞こえた。

『てーすとー。真麻、麗花、聞こえるかー? 今は無事かー?』

 それは、真麻の相棒でもある夏希の声である。真麻はそれに小さく溜息を吐いて、胸元に押し込んでいるマイクで応答した。

「馬鹿ね、まだ始まってもいないのに。無事です」

『いやだって、さっきはさっき、みんなでいた時だろ? 離れててちゃんと繋がるかどうか確認しとかないと』

「あのね、一応こっちは人前。アンタがどこぶらぶらしてるか解らないけれど、独り言言ってるみたいに見えるの」

『まぁ、真麻君。作戦決行前のテストにも、十分意義はあります。ほら、緊張していてもたった一言でほぐれる場合もありますから、ねぇ、夏希君』

 それに夏希はおう、と頷いたが、真麻はどうだか。と内心呟いたけれど、肩をすくめても相手に伝わらないだろう事は解っていた。

『おしゃべりはいい。定刻十一時、作戦開始だ。赤城は例のもの、準備はいいな? 最終的にお前の機動力が武器だ。各自電車の時刻表は頭に入っているな。それを元に行動するように。犯人発見、確保への検討を祈る』

 各自、夏希以外が押し殺した声で「はい」と返事をした。

 待ち伏せのしやすい地図は頭の中に叩き込んである。ある程度沿線で、しかしあまりにも住宅街から外れていない道。実を言うと真麻も始め、自分も車を出して機動力を確保しようか、と提案もしていた。けれど麗花がよし、とは言わなかったのだ。

「車は機動力は万全ですが、隅の隅まではつつけません。一方通行、通行禁止、そういうものに引っかかって進めない場合もあります。勿論それは相手も同じですが、計画的に犯行を進めるタイプなら、ある程度逃走経路、コンビニの位置の下見もしているはずですから」

 コンビニや大手スーパーには、外にも犯罪抑止用の防犯カメラが設置されている所が多い。事前に下見をし、計画的に犯行を行うのであれば、それこそそう言った場所を通る道は避ける筈だ。との見解である。閑静な住宅街の公園や墓地周辺。その辺りを通る事になっている。

 だから真麻もただ一人で囮となる為にこうしてふらついているのだが、流石に夜道を一人で歩くのは、少し怖い。襲われたところで対処出来る自信はあるし、それは不安ではないけれど、暗い、と言うのは、どことなく、闇に浚われていってしまいそうな漠然とした何かが胸に落とされるのだ。

 ただ、正当防衛で犯人を取り押さえる事が出来る権利が与えられたのは、有り難い事だった。女として、完全ではないけれど被害者女性の受けた恐怖は多少想像が付く。まして一般人女性に刃物を向ける、死ぬ恐怖を与える様な犯罪に、苛立ちを覚えていたのだ。

 尤も、こんな背の高い可愛げのない女を襲うなんて事はないでしょうが。周辺の警戒要員としてのみ必要とされるなら、こんな洒落た恰好しなくていいでしょうに。内心そうも思っていた。真麻の持ち前の能力は体術であり、ひらひらした恰好だと、動きづらくて適わないのだ。

 しかし、真麻は多少犯罪知識があったとしても、実際は正しく理解していない。女性に暴行を加える類いの犯罪は、あくまで外側から見て犯人が御し得るか、得ないか、それだけで決まる。彼女より体格の良い男性であればターゲットの一人として数えられる事は十二分にある。

 それと、もう一点。真麻は自分が思っているよりも、見た目としても良い方である。相棒の夏希が内心思っているのは、ぱっと見美人系。外面だけならばそんな印象である。

 栗色の長い髪はさらさらだし、猫の様な大きな眼差しはきつめだがぱっちりとしている。まつげも長く、化粧は好まないからグロス程度しか飾っていないが、それだけでも充分に見栄えがする。元々身体を動かすのを仕事としていたから、肩幅は少し張っているが腰も細めで、胸もふくよかで、体型だけであれば非常に女性らしい。

 ただ、彼女が“可愛げのない女”と自分の事を思い込んでいるのには、人生で片手どころか指の一、二本程度しか彼氏を作らなかった事に起因しているのだ。さっぱりとした勝ち気な性格。その上元空手道場の師範代。片方だけなら男も享受出来ようが、心も身体も強いとなると並の男が制御仕切れないどころか、見た目が良くとも近寄りがたい。

 彼女は今年、自分で言ってみせているのだが、とにかく色々と男運が悪い。というより人生で男運が良かった試しなど一度もないのだが。初めて出来た彼氏は高校生時代。ずっと遠くから見ていて、気になっていたんです。と告白されて、浮かれて付き合って三日で破局した。女にしては怪力で、浮かれて腕を振り回し、近所のブロック塀を壊してしまったのだ。それで矢張りイメージと違う、なんて言われて別れてしまった。

 真麻は外見で判断する男はそれ以後やめよう、と懲りたのだ。どうせそれで選んでくる男はろくな奴じゃない。今追いかけている犯人もろくな男ではないだろう。と思っていても、外見で判断する男かどうか、など頭の中からすっぱりと抜けてしまっていた。

 歩く度に、片耳の奥に押し込んだワイヤレス・イヤホンから誰かの衣擦れの音が聞こえる。皆、見えない場所に受信機とマイクを押し込んでいるのだろう。もしかしたら、真麻のものかもしれない。

 矢っ張り何か上に羽織るもの、持ってくれば良かったわ。彼女が受信機を押し込んでいるのは、声が良く相手に通る様に、と空いた胸元の下着と素肌の中間である。鞄に入れてても良かったのだが、万が一対峙する事になったら、邪魔になるからぶん投げて戦うだろうし、結局そこが一番収まりが良く、無理矢理覗き込みでもしない限り見つからない訳だ。その上、マイクのコードもしまえて、良い事づくめだ。問題はもしかしたらこの衣擦れの音が自分のもので、マイクを通して相手に伝わっている可能性があると言うことだ。上着があれば、トップスに隠す様につけられた。ただ、それよりも何百倍も恥ずかしいのは、パステルカラーのふわふわの服を着て、何にも考えずに閑散とした住宅街を一人で歩いている事なのだが。嫌だわ、知り合いに見られて、実はこういう格好が趣味だって思われたら。とため息を漏らしたくなる。とにかく、早く犯人の奴出てきてくれないかしら。出来れば真麻の近くで、この手で捕まえられる様にきてくれるのが一番好ましい。

 何度かワゴン車に遭遇して警戒をしたものの、ただの路駐ばかりで、人の影も形もなかった。

 ていうか、ワゴンタイプって言ったって、上から下まで大きさだってピンキリじゃない。柳にも掛け合ったのだが、ある程度目星の付いている車種、色、大きさの情報が、結局「断定的ではないから」という理由で、警察から下りてきていないのだ。

 もう、これで濃い目の色のワゴン車の横通るの、四台目なのよ。警戒するには越した事はないけれど、真麻はわざとかつかつとブーツのヒールの音を立て歩いた。最近は路上駐車も取り締まりで数は少なくなったものの、あくまで少なくなったのは日の高い内である。結局深夜近くになれば見回りする人間も少なくなり、狭苦しい都心部や、ついでに通報する物好きがいない限り、それらは放置されっぱなしになってしまう。

 車体は比較的綺麗に磨かれていて、か細い電灯の明かりだけでも真麻の長くすらりとした外見を曇った鏡の様にわずかに車体に映す。スライド式タイプのドア。たまにはこう言うのもいいのよね。彼女の車は国外産のスポーツカーだが、たまにはこういうタイプも運転してみたいとは思う時もある。スポーツカーは、メーカーにも寄るが国外産だと、とかく部品やメンテナンスで維持費がかかる。それにスピード性はともかくとして、日本製の車はメーカーにも寄るが質と燃費は非常にいいのだ。けれど流石に一人暮らしで、車を新しく買い換える予算も乏しい。真麻自身も気に入っている車ではあったから、結局レンタカーを借りるでもしなければ、その機会は暫く訪れないだろうが。

 さっさと脇をすり抜けようとした、次の瞬間。真横から伸びてきた手に、口を押さえられ、同時にぴたりと冷たいものを首筋に押し当てられた。

「静かにしろ」

 耳元で、低く、うなる様なかすれ声が鳴ったのに、真麻は内心ため息を吐いた。

 あぁ、しまったな。私、今年男運悪いんだったわ。まさか、あえてのこっち側。お一人様の方がどうやらお好きみたい。

 というか、考え事をしていて油断して捕まりました。なんて、間抜けな話だ。耳の奥に突っ込んであるコードレス・イヤホンから、『真麻、おいっ! 何の声だ』と夏希の声が聞こえる。さすが高性能、夏希の無駄に大きな声はどうやら漏れていないらしく、至近距離の犯人にも聞こえていないのは、有り難い。けれど気づかれていないからこそ、はぁ、はぁ、と生ぬるい息が耳に触ってきて、むしろ気づいてくれればいいのに、と真麻はげんなりとしていた。

 今にも肌を裂こうとしているそれは、暗がりで見間違えていなければ銀色の果物ナイフ。口元に押し当てられた手は革の黒の手袋で覆われていた。何にせよ、素肌で触られるよりは数倍マシではあるものの。ぐっとその手に力が込められ、男の方へと引き寄せられる。

「静かに、こっちにこい。殺されたくなかったらな」

 脅し文句が三流。胸の中で呟きながら、男の身長を何となく予想する。引き寄せられて、うなじが肩口に当たった。大体一〇センチは上かしら。そうなると、一七五以上はあるわね。でも、決して高くはない身長。車へとゆっくりと誘ってくるのに、真麻はどこまでついていこうかしら。と考えていた。

 今でも正当防衛は成り立つだろうけれど、殴りつけて外れて逃げられてはおしまいだ。車は確保出来るだろうけど、実際この手で犯人を殴りたいのだ。

「いいか、俺はあのDークラウンの一人なんだ。逃げたって、組織に追われるだけだからな、おとなしくしていろ……」

 声質から言って、二十台中盤から後半。麗花の予想通りだ。声が僅かに震えているのに、一般人である事ははっきりと取れた。

 D―クラウン。真麻は三度、見えた事がある。しかしそのどれもが臆病に声を震わせる様な奴らではなかった。自信に満ちた芯の通った声。一人は喋る事が得意ではないのか、そうする気がなかったのか、言葉は途切れ途切れだったけれど、矢張り何か、確固たるものを胸に抱いている様な奴だった。

 さて、このままナイフで脅して車上に放り込んで、手錠をかけるのかしら。間接を抑えて身動きが取れないようにすらさせられない、稚拙で、雑な手口だ。可愛らしく手に噛み付いて見せようかしら、とも思ったが、止めた。それよりも自分の拳の方が何よりも効くと解っていたからだ。

「喋るなよ」

 男が首元にナイフをあてがったまま、口元の手を外して、おそらく車両のドアへと手をかけたのだろう。その、隙に。

 ナイフを握りしめている右手側へと思い切り腕を奮って、男の脇腹に肘を叩き込んだ。ぐっとうめいた声と共に、わずかに腕が緩んだ隙を突いて手首を掴み、真麻自身の身体を翻らせる。

「ってぇ!」

 手首から関節を捻り上げると、男が悲鳴を上げる。とどめ、と言わんばかりにブーツで、あくまでも力を入れずに、男の真横の車体を蹴りつけると、今度は車ががん、と鈍い悲鳴を上げる。

「……さて、と。お宅が例の暴行魔って奴みたいね。良かったわ、私一人じゃ勝てない相手じゃなくて。ナツ、こっち移動! ホシ発見!」

 堂々と叫ぶと、マイクの向こう側で夏希がまた高々と「了解!」と揚揚と叫んでくる。

「くそ、てめぇ……警察か!」

「残念ね、正義の味方よ。偽物Dークラウンさん」

 苛立ちと焦燥に彩られた声に、にこりと笑ってみせた。

 Dクラウンではないことが二つ。確かに彼らは仮面で目よりも上を隠しているが、あくまでそれらは合金か何かでできたカラスのくちばしのようなものだ。手首をねじり上げた男がつけているのは、パーティ用のものを加工したのだろう。プラスチック製で、手刀を入れたら簡単に割れてしまうだろう、ちゃちな作りである。もう一つ、度胸がない。彼らはある種一丸である。息をするのも静かで、非常に訓練されている。あえて巧妙を名乗れるのは、恐らく幹部クラスと決まっているんだろう。少なくとも真麻は三人と対峙しているが、末端が口を開く事はない。

 統率のとれた軍隊の様です。その癖、自由だ。以前、対峙した際に藤堂が言っていた。だから実際厄介で、今までたった一人しか脱落者を出していない。その上捕まったたった一人も、組織どころか自分の身元すら未だがんとして話さず、国籍すらも解っていない状況だ。とにかく、彼らにはある一定の美学とこだわりがあるのだろう。しかしこの男には、それらが全く感じられない。

 さて、捻り上げるだけじゃ足りないわね。弱いものいじめをする様な男だもの。以前見た被害者の写真が脳裏をかすめ、ふつりと怒りがこみ上げてくる。夏希の位置は解らないけれど、一発くらい殴っておいた方が、逃げられにくくなるかしら。そんな風に考えていた、一瞬だった。

 突如、がらり、と音が鳴り、真麻は今まで自分を支えていた、車を蹴りつけていた足を取られ、よろめいてしまった。本当に一瞬だった。スライド式のドアが勢いよく開け放たれ、姿勢を崩した真麻ごと、男の身体が車内へと勢いよく叩き付けられる。

「っ! この!」

 真麻が慌てて体制を立て直そうと、身体を起こした、その時。

「くそっ! この女!」

 男のかすれた声と共に、ナイフの切っ先が風を切る。けれどたかが素人の扱う刃物だ。わずかに身を逸らして避けようとしたものの。

 ひらひらと舞った胸元のレースに切っ先が引っかかり、そのままばり、と服ごと裂けてしまった。

 すっかり忘れてしまっていた。そういえば真麻の衣服は、今日は戦闘用のものではなかったのだ。あくまで“襲われる為”の、勝負服だった事を、そして柔らかく柔な生地で出来てている事もすっかり頭から抜けてしまっていた。

 びりびりに切り裂かれた胸元からは、今日はこれでいいわ。と適当にひっつかんで身につけてきた水玉のブラジャーが覗いていて、端っこには、同じように服と共に引っかかったんだろう、マイクと本体をつないでいたコードがぷっつりと切れ、ぶら下がっていた。

 あぁもう、最悪。万が一取り逃がしても連絡は出来なくなっちゃったし、行きずりの男、しかも犯人に今日の下着を見られるだなんて、今年はやっぱり厄年なのね。真麻は頭を抱えてやりたくなった。けれど、流石にそこまでの隙は見せてやる道理はない。

「ここまで来たら、マジで殺してやる。いいか、俺はもう三人やってんだぜ。はは、テメエみたいな女、どうって事ねぇ。全部、ヤって、ぶっ殺して捨ててきてやったんだ!」

改めて、男がナイフを構えるのに、左手で胸元を押さえながら、「まぁ、やれるものならどうぞ」と拳を構えてみせた。例え片手だけだろうと、武器を所持している人間だろうと、素人に負けるつもりはない。

 そう、思っていた時。

「どきたまえ」

 背後から、聞き慣れた声がした次の瞬間。真麻の横を長い足がすり抜け、起き上がりかけた男の腹を蹴りつけ、車内に叩きつけられた男の横面めがけて盛大に踏みつけると、その振動で六月には不似合いの、夜闇よりも黒いロング・コートがひらりとはためいた。

 男が呻き声を上げる間もなく、鈍い金属音が響いた。けれどそれは、深夜の静けさに消えていってしまいそうな暗い小さなものだった。プラスチック製の、安物の仮面に覆われた眉間に銀色の輝きのものが突きつけられ、男と同時に、真麻は息を飲んだ。カラスの嘴を模した様な、目元を覆う鋭く尖った黒い仮面が、街灯の僅かな光に照らされて鈍く輝いた。

「やれ、マナーがなっていないな。レディを口説く時、胸元に突きつけていいのは、ナイフではなく花束だと僕は父に教わったがね。さて、君が僕を切りつけるのと、眉間を打ち抜かれるのと、どちらが早いか確認してみるかね? 本物のDークラウンの仮面なら、この至近距離だって、この程度の銃弾なら脳内に留める程度には頑丈だ」

 カラスの様な、合金で出来た仮面から覗いた口元が不敵に笑った。

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