魔石吸引
海斗は運搬の指輪の中を確認する。
その中に新しく入っていたのはレッドアイズバードの魔石、羽毛、嘴、肉、火炎袋が3つずつ入っていた。
海斗はその中からレッドアイズバードの魔石を一つ取り出す。
その大きさは野球ボールほどの大きさである。
「さて、丁度よく魔石が手に入れることができたし試してみるか」
海斗は周りに誰も居ない事を確認すると、魔石を胸元の心臓部分に近づける。
海斗はホムンクルスの特殊能力である魔石吸引を試すつもりなのである。
するとレッドアイズバードの赤色の魔石は光り出す。
そしてそのまま海斗はどんどんと胸に魔石を押し込んでいく、海斗はその時胸元に少しのむず痒さを感じたが仕方がないと我慢する。
『火魔法素質(極小)を解放しました。』
海斗が魔石を入れ終わると同時にそんな声が海斗の中に響き渡る。
海斗は誰かに話しかけられたのか?と少し驚き周りを見渡すが誰も居ない事をを確認し、その声が頭の中で響いたことだと判断する。
「火魔法素質(極小)だと?だとすると火魔法が使えるようになったということか?」
海斗はそう判断しハリスの知識から火魔法を探す。
どうやらハリスは火魔法使えなかったようだが相手との戦闘の対処の為に知識はあったようで詠唱もわかっているようだ。
「まぁ、試してみるか」
まず海斗は一番簡単な火魔法を使う事にした。
「火よ我が命に従い、此処に集まれ 火」
海斗の指先に火が灯る。
その火はとても小さく、戦闘には役には立ちそうにないが灯や木に火をつけるといったことには役立ちそうである。
そう確認すると海斗はもう一段階上の火魔法の詠唱に入る。
「火よ我が命に従い、球となり彼の者を打ち砕け 火球」
が、発動しない。
「極小ならばこんなものか」
海斗はそう結論をしあっさりと状況を受け止めた。
その後もう一回レッドアイズバードの魔石を身体の中に吸収すれば素質が上がるのでは?と海斗は思い吸収を試みたが魔石は光らずに吸収できなかった。
「まぁ、直ぐに強くなっても仕方がないか」とそんな事を彼は考えているが今の段階でも十分に強い。
海斗はそんな魔法実験を終えまた街を探すために歩き出す。
そして無事に街を見つけることが…………出来るはずもなく……。
「さて、どうするか…」
海斗の目に映っているのは馬車を取り囲み馬車の物資を強奪しようとしている盗賊、それに対抗して馬車を守っている集団である。
盗賊の数は14人、馬車を守っている護衛らしき集団は5人、馬車の中から外をうかがっている商人らしき人物1人の計20人。
盗賊の数は多いため、護衛の集団も中々の技量を見せているが時間の問題であると海斗は判断する。
「まぁ、目の前で殺されていっても胸糞悪いし、街まで案内してもらうためにも助けるか」
海斗はそう呟くと隠れていた木陰から盗賊に向かって走り出し、盗賊の1人に瞬時に辿り着く。
その盗賊は海斗が近づいたことに気が付き、敵だと判断し剣を構えようとするが海斗にとってそれは遅すぎた。
海斗は腰に差した雪姫を構え抜刀するとそのまま雪姫の刃は盗賊の首に届き斬り飛ばす。
突然の乱入者によって仲間が殺された事に少しの間おどろき呆然とした盗賊であったが、直ぐに我に帰ると仲間が殺されたことによる怒りが湧きあがり怒号する。
「このガキが!やりやがったな!」
海斗のそばにいた大柄な盗賊が斧を振りかぶり海斗目掛けて斧を振り落とす。
(ふんっ!大人しく出て来なければ良いものを!相手が悪かったな!死ね!ガキが!)
大柄な盗賊は海斗が此方を見ていないので反応できなかったと感じ勝利の笑みを浮かべる。
「遅い」
がそんなことは海斗にとって気付かないはずが無く、海斗は雪姫で男が武器を持っている方の腕を斬りとばす。
「ギャァァッッ!!」
そんな断末魔をあげる男に向かって海斗は心臓目掛けて雪姫を突き刺し止めをさす。
「嘘だろ…頭が死んだ…」
盗賊達は自分達の中でもトップの実力を誇っていた大柄な盗賊である頭目があっさり海斗に殺されたことにより、仲間を殺された怒りから頭目を殺された動揺に変化する。
海斗はそんな隙を逃すわけもなく次々と盗賊達を殺していく。
海斗の足の速さ、剣速は盗賊達にとって見ることができず、瞬きする間に仲間が倒されていくことに盗賊達は底知れぬ恐怖を感じ逃走をはかる。
「て、撤退だ!てっぐわぁぁぁぁっ!」
しかし、暗殺者として超一流を誇る海斗が目標を逃すことなどあるはずもなく、あっさりと盗賊14人を斬り殺す。
海斗は腰に差してある鞘に雪姫を戻すと視線を馬車の護衛らしき人物たちに向ける。
護衛達はまだ武器を収めず海斗を警戒しており、盗賊を羽虫のように殺した海斗が敵なのか味方なのか分からない恐怖から額に汗を滲ませる。
そんな護衛達に対して海斗は自分は無害だと声をかけようとした時、馬車から出てきた恰幅の良い、如何にも商人といった男が海斗に話しかける。
「いやいや、この度は助けていただいてありがとうございます。私、商人をしておりますアイン=シュバルツと申します。良ければお名前等を教えてもらえれば嬉しいのですが」
自分の事が怖くないのか?と疑問に思った海斗であったがすぐに返事をする。
「俺の名は海斗と言う。旅の途中お前達が襲われているのを見たからな。苦戦しているようだったので助太刀した。いらぬお世話だったか?」
そう言われ護衛達も海斗に対しての警戒を少し弱める。
「いえいえ!とんでもない!私自身、商人人生を諦めていたところでしたよ!それではカイト様!お礼の方なのですが……金貨100枚程で宜しいでしょうか?」
「「「「なっ?!」」」」
護衛達は思わず驚き声を上げる。
金貨100枚と言えば豪邸が一軒購入出来るほどである。
もちろん護衛達自身、護衛をしているアイン=シュバルツという人物がどれほどの人物かは知っているし、金貨100枚と言っても払えるだけの貯蓄は有しているだろう。
だが、それにしては馬鹿げた額である。
しかし、アイン=シュバルツという男は心の中ではたかが金貨100枚ぐらいで命が助かるならば安いと考えていた。
ここで礼をケチり海斗の機嫌を損ね自分たちに盗賊達を瞬殺するほどの武力を向けられるぐらいならば、金を出来るだけ払い機嫌をとっておいた方が良いと考えたからである。
(さて…どれだけの金貨を要求してくるか。金貨150枚までは何とか今払えるが…)
と、心の中で葛藤していたアインのことを露知らず海斗はなに食わぬかをで答える。
「いや、そう言うのは良いんだ。ここから一番近い街まで案内を頼む」
「「「「「…………はっ?」」」」
その場にいる全員が金貨100枚という大金をそんなもの扱いをし、いらないと言った海斗に目が点になった。