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必需品

 水深3000m下に存在する誰にも発見される事のない住居。

 そこで春風海斗は目覚める。


 「…えーっと、確か俺は…」


 海斗はあの男によって刷り込まれた新しい知識に混乱せず何とか冷静に考える。


 「そうか、俺は奴の…いやハリスの後を継ぐために異世界に蘇ったんだったな。魔法や錬金術、この世界の知識は確かに得られているな。あと此処が深い海の底に建てられた住居だということも。」


 海斗の頭の中に流れ込んだ知識の中にあの男の名はハリスである事が分かった。

 そして海斗が現在いる家は深い海の底に造られた海底住居だと言うことも分かった。

 家の外には庭もある。

 その庭の周りをドームのように特殊なガラスで覆われ、この深海という水圧に押し潰されずに存在することが出来るように、後海の底に住むとされている魔獣に襲われないように魔術が施されている。

 もちろん、人間が活動できるだけの酸素が供給できるように魔法装置によって一定の酸素が供給されており酸欠によって死ぬといったことは発生しない。


 まず、海斗はベットの横に置いてある衣服を着る。

 そして一番気になっていたことを確認しにいく。

 それは今の自分はどんな姿をしているのかということである。

 海斗は全身が映る鏡の前に行き自分の姿を確認する。


 「これは…偶然か?」


 そこに映っていたのは175センチほどの細身の男。

 此処までなら海斗自身驚くことはなかったが、顔に問題があった。

 そう、髪と眼は紫色であり堀の入った外国の人間にも見えるが、よく見てみると前世の顔と良く似通った童顔であるのだ。

 前世のコンプレックスであった、童顔ではなくなっているのでは?という淡い期待をしていた海斗にとっては、少し残念に思ってしまった。

 

 「だが…この身体、ハリスの知識が正しければ相当なものらしいな」


 この海斗がハリスからもらったホムンクルスという身体はかなりの性能を誇る。

 まずこの身体は不老であり、身体に使われている皮膚、骨、血管、など色々な臓器はドラゴンやヘビーモスなど超級の魔物たちの素材とハリスの細胞をベースに作り上げ出来た身体なのである。

 身体能力はもちろん、身体の回復力も一般人とは比べ物にならなくなっており、また《雷鳴》と呼ばれたハリスと同様に雷魔法に特化した適性がある体になっており、海斗自身も前世では感じることのできなかった自らの中にある強大な力を認識し少し震えてしまうほどであった。

 だが、唯一の欠点としては雷魔法以外の魔法の適性がないと言うことなのだが。

 そして一番海斗を興奮させるホムンクルスの能力は《魔石吸引》である。

 このホムンクルスという身体はまだ不完全なのである。

 この身体は魔物の中に存在する魔石という石を心臓部から吸収することにより、身体に新たな能力を得ることが出来るのだ。

 ゆえに無限に強くなれる身体と言っても過言ではないのである。

 その事に海斗はワクワクする。

 いくら暗殺稼業に身を置く男だとは言っても彼もまだ子供であり、こういう事には人一倍ワクワクする。


 「とまぁ、今はハリスが言っていた俺にとっての必需品を探すか」


 そう言うと海斗は現在いる寝室から研究室に移動する。

 記憶が正しければそこに置いているはずである。

 研究室の中に入るとそこには様々な魔法陣と様々な研究の為の機材が置いてあった。

 部屋の広さは40畳ほどのかなり大きい部屋である。

 海斗は記憶を辿り部屋の隅に置いてある様々な宝石で装飾された綺麗な箱を発見した。


 「確か…この中にあるあるはず…だよな?」


 どこか自信のないような声を発し海斗は箱を開ける。

 その中は闇。

 果てしなく広がる真っ黒な世界が広がっており底が見えない。

 これはハリスが開発した箱型のアイテムボックスであり、収納できる量はほぼ無限と言って過言ではない量を入れることが出来るようになっている。

 そんな箱に海斗は右手を突っ込む。

 すると、海斗の頭の中に何が入っているのかがはっきり分かるようになり、自分の為に用意してくれたものを頭に浮かべ取り出す。


 先ず一つ目に取り出したのは赤黒いローブ。

 これはハリスが俺と話していた時に着ていたものと同じものだと分かる。

 また同じと言っても彼が着ていたお古と言うわけではなく新しく作ってもらったものだとも分かった。

 このローブはハリスの最高傑作であるローブであり、名を黒緋くろあけのローブと言う。

 この黒緋のローブはホムンクルスの体と同じく超級の魔物の素材で出来ており、外側をブラッティドラゴンと言われる赤黒い皮膚を持つドラゴンの皮膚が使われており、その耐性は斬撃、衝撃、魔法、などに対して圧倒的な耐性を持ち合わせている。

 またローブの内側は最高級の手触りであるワープメリーの羊毛である。

 ワープメリーとは普段は昼寝ばかりしており、人間に対して敵意を見せない穏やかな魔物なのだが、彼らは天敵から身を守るために高度な危険察知能力と転移魔法を有している。

 数々の人々がワープメリーの毛を求めて捕まえようとしたが、捕まえる前に逃げられてしまい、危険度はないが捕まえることがほぼ不可能とされこちらも超級の魔物として認知されている魔物である。

 そしてこれらを縫うための糸にはエンペラースパイダーと呼ばれる魔物の糸が使われており、その糸はそこらの金属にはない頑丈さを持ち、並みのものでは切れないとされている。

 こちらもかなりの素材である。

 そしてこのローブには2つの魔法が付与されており、それは【温度調整】と【劣化防止】の魔法である。

 【温度調整】は外界の温度に合わしてローブが装備者に対して快適な温度に調整すると言う能力である。

 これで春夏秋冬問わずいつでも着ていることができる。

 次に【劣化防止】の機能だがこれはどれだけ使っても劣化がしないという機能である。


 海斗は黒緋のローブを着てみる。

 中はワープメリーの羊毛でかなりの気持ち良さを有しており、また【温度調整】によりかなりの快適さである。

 これはかなり嬉しいプレゼントだと海斗は思った。


 そしてまた取り出していく。

 次に取り出したのは海斗にとっては慣れ親しんだ武器である日本刀であった。

 刃長は70センチ程である。

 鞘は黒色であり柄の部分も黒色であった。

 海斗は恐る恐る鞘を抜く。

 そこに現れたのは少し青みがかった刃を持つ刀であった。

 この時、海斗はこの刀の刃を見て震えた。

 恐ろしい業物。

 このようなものは絶対に自分のいた世界である地球ではお目にかかれないであろうと感じたのだ。

 それはその通りである。

 この刀に使われている金属は地球では無いもので出来ているからである。

 使われている金属は主にオリハルコン。

 そのオリハルコンを軸にミスリル、ドラゴンの牙、フェンリルの牙、など様々なものが錬金術によって組み込まれているのである。

 その刃の切れ味は並みの防具では衣服の様に切れてしまう程の切れ味であり、ドラゴンの皮膚であったとしても無傷とは行かないほどである。

 また、ミスリルが入っていることにより魔力を込めることによって切れ味も上昇するというまだまだ成長の余地がある刀でもある。

 そしてこの武器に備え付けれている魔法付与は【劣化防止】【重量操作】である。

 【重量操作】はこの刀を好きな時に重さを100g程から100kg程にまで操作できると言う魔法だ。

 要するに海斗が持っているときは軽くしておき、敵に斬りかかる時に重さを100kgにすることができ敵にとっては厄介この上ない鬼畜な能力である。

 名前は名付けられて無かったので前世で使っていた刀の名、雪姫と名付けることにしたあ。


 次に海斗が取り出したのは海斗のもう一つの相棒である拳銃であった。

 この世界には拳銃があるのか?と一瞬思った海斗であったが、記憶を辿ると実際には存在せずハリスが海斗の記憶を辿り試行錯誤の末開発した、この世界に一つしかない拳銃だと言うことが分かった。

 まずこの拳銃だが、弾を入れる場所がない。

 それではどの様にして発射するかというと、魔力を込め魔弾として発射する単純な作業である。

 そうなれば海斗の強大な魔力と相性が圧倒的に良い。

 弾をかなりの数発射できるということと、弾を込めるラグを無くすことなできるという拳銃における最大の弱点の一つを気にしなくても良いということである。

 この拳銃の名も決められていなかったので魔法銃と単純な名を海斗は名付けた。

 

 海斗はニヤニヤと笑い、これも気に入る。


 そしてまた次の物を取り出す。

 

 次に出てきたのは茶色の普通のブーツであった。

 しかし、このブーツもただのブーツではなく、空を翔けることができるブーツである、風翔けのブーツと呼ばれる物である。

 海斗は空を歩くことができるという事実にワクワクしながら後で試してみようと、取り敢えず今は履くことだけで我慢しようとブーツを履くのであった。


 そしてまたまた取り出す。


 次に出てきたのは4つの銀色の指輪であった。

 この指輪、それぞれの名を転移の指輪、翻訳の指輪、賢者の指輪、運搬の指輪と言う。


 転移の指輪と言うのは魔法陣を描くことにより、その描かれた場所に転移することができるという指輪である。

 登録できる魔法陣の数は5つだ。

 既に一つはこの住居が登録されているので残りは4つである。


 次に翻訳の指輪と言うのは話している相手が違う言語、違う文字を書いていたとしても理解できるという能力を持った指輪である。


 三つ目の賢者の指輪と言うのは魔法を行使するとき普通魔法使いは杖などの魔法発動体がなければ行使することが難しいのだが、この賢者の指輪はその代わりとなりその能力は一流の杖並の性能を誇る。



 そして最後に運搬の指輪は指輪型のアイテムボックスである。

 その能力は生き物以外なら何でも入れることが可能であり、このアイテムボックスの中は時間経過はせず出し入れしても入れた時のままとなる。

 また、魔物を入れると自動で素材に分解してくれる機能まで付いておりかなりの高性能のアイテムボックスであると言うことが分かる。

 現在中にはハリスが作った最高級の傷を治すポーション、魔力を回復するマナポーション、解毒薬が10本ずつと一週間分の食料と水が入っていた。


 海斗は4つの指輪をはめ雪姫と魔法銃を運搬の指輪の中に入れ、もう受け取るものがないと分かるとそのまま家の外に出たのだった。


 


 

 


 

 

 

 

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