異世界転生
異世界復讐者の筆が全然進まないので、息抜きで書いていきたいと思います。
とある某国にある高層ビルの24階、その場にあるのは大量の死体。
真夏ということもあり空気が生暖かく死臭もこの上なく匂う。
一般人がこの場にいれば瞬く間に吐いてしまうだろう。
そんな所に満身創痍ながら立っている男が1人。
黒髪黒目の童顔の男、彼の名は春風海斗。
海斗の家は江戸時代から続く日本国に仕える暗殺を専門とする武家であり、海斗は第36代目当主、現在18歳の青年である。
海斗は春風家で八男の末っ子として生を受けた。
春風家は強さを求める事を家訓とする事から跡継ぎは長男が継ぐものではなく、兄弟の中で一番強い男が継ぐとされている。
その中でも海斗は春風家の中でもズバ抜けた才能を持っており、いかなる武器を使わせてもーを教えれば千にして返してくる鬼才である。
歴代春風家の中でも群を抜いた強さと言われ、周りの者たちから麒麟児と呼ばれていた。
その中でも特に秀でていたのは刀である。
海斗は春風家から15歳にして全ての武術を皆伝し、そこから1年間で左手に拳銃、右手に刀と独自の戦闘スタイルを確立する。
その強さは一騎当千であり周囲の反対もないまま海斗は18歳の若さにして当主となった。
そして当主となってからの初任務、某国のテロリスト集団の暗殺任務を請け負い今回も難なく任務をこなし日本に帰国する予定であったが、そこで事件が発生した。
報告ではテロリスト集団が13人で密会中と言うことを聞いており、海斗は奇襲を仕掛けるつもりだった。
しかし、そこには待ち受けて武装していた20人の世界各国のトップクラスの暗殺者と彼の兄であり春風家の長男である健二だった。
健二は春風家の長男として生まれその才能は父である弥太郎以上のものであり、次期当主として周囲からもてはやされ育てられた。
しかし、それも海斗が生まれるまでの事。
海斗が生まれてからは周りの目は変わり、その目は蔑みと哀れみであった。
生まれる時代を間違えた長男と呼ばれ、彼はその事で深く悲しみ遂には海斗を恨むことなる。
あいつさえいなければ自分が次期当主だった。
周りに女を囲め、周りの名声を得られ、国の為に仕えることができる。
彼は思う「そうだ、あいつさえいなければ良いんだと」
そんな時だった彼の元に一つの手紙が届いたのは。
それは某国からの春風海斗暗殺計画。
他国からしてみれば海斗の強さは常軌を逸しており何としても消しておかなければならない邪魔ものであった。
並みの暗殺では返り討ちにされ意味もなかったのである。
そこで、彼らは長男である健二を利用し海斗を罠に嵌めることにした。
この手紙に健二は直ぐ食いついた。
そこで考えられたのが健二が春風家のスパイとなり、偽の任務を海斗に与え彼を味方の少ない外国で暗殺すると言うものであったのだ。
「ふふっ」
海斗は地面に倒れ死んでいる兄を見て笑うしかなかった。
いくら自分のことが目障りだと言っても、他国と繋がり、自分を消しに来るとは海斗には考えることが出きなかったのである。
それは海斗が18歳という若さゆえであり、海斗がもう少し経験を積んでいればこの暗殺計画も兄を疑い事前に防げていたことであったのだろう。
しかし、今そんな事を考えても仕方がないことであり、それは結果論でしかない。
海斗の体は数々の弾丸により相当な傷を負っている。
全身からは血が流れ落ち、足は震え今にも倒れてしまいそうである。
海斗は思う。
もう少し生きていたかったと。
この春風家に生まれたからには普通の人生は歩めないであろう。
国から命令される数々の暗殺任務。
日本国を害するテロ集団、法で裁くことができない犯罪者たち、警察と癒着するヤクザや外国のマフィアの暗殺を言い渡されることであろう。
だが、海斗はそれでも良かった。
生きていることは楽しく、美味しいものが食べれれば、愛する女性と結婚できればどんな事があっても幸せと言えた。
別に当主になんてならなくても良かったのだ。
彼はただ生きたかっただけであったのだ。
だが、それは無情にも崩れ海斗の視界はぼんやりとしたものからついに闇に沈んでいった。
「おお……目覚めたか…」
そんな声がして、ふと海斗は目を覚ました。
周囲に見えるのは何もない真っ白とした空間。
それが永遠に続いており気が遠くなりそうになる。
「ここは…どこだ?」
自分は確か実の兄に罠に嵌められ全身に銃弾を受け、死んだはずである。
そうだとしたらここは天国なのだろうか。
「こちらを見よ、儂の後継者となる者よ」
話しかけられた方に海斗は目をやる。
そこに立っていたのは初老の外国の男である。
全身を赤黒いローブで包んでおり、不気味な雰囲気を醸し出している。
「あんたは一体何者だ?あと此処はどこだ?」
「まぁ、落ち着け儂の後継者よ……」
「後継者?俺の事を言っているのか?」
「そうだ、その為にそなたの消えるであろう魂を此処に呼び出したのだ」
後継者?ということにまだ疑念は残るが、確かに自分は死んだはずである。
「ならここは死後の世界?天国なのか?いや…俺の場合地獄なのかもしれないな…」
「いや違う。此処は死と生の狭間の世界である。儂の後継者として儂の作り出したホムンクルスの身体と適応する魂を探していたところ、お主にたどり着いたということだ」
海斗の身体が反応する。
後継者という単語に疑念を感じていたが、もっと驚く単語が聞こえた。
ホムンクルス。
それは確かゲームや小説などで出てくる錬金術士が創り出す人造人間である。
「あんた、アレなのか。錬金術士なのか?」
そう言うと男は眉をピクリと動かし感嘆の音をあげる。
「ほう?儂のことを知っておるのか。流石は儂の後継者といったところか、だが儂の呼びかけに応えたのは異界のもののはずよく知っておったな?」
「異界?と言うことはあんたは俺とは違う世界の人間と言うことなのか?それと、俺の世界ではあんたの職業は伝記や娯楽本などの架空のものとされている。実際には存在はしないぞ」
「ほー…なるほど。まぁ、そこまで理解していれば話は早い、お主には儂の創り出したホムンクルスの身体に魂として入ってもらい儂の長年研究してきた錬金技術を継いでもらいたいのだよ」
「そんな事を急に言われても正直俺は困る。あんたの世界がどんなところかも分からないんだ。何も知らないという事ほどこの世に怖いものはないんだ」
「それはそうだな、儂の世界というものには魔法と言うものが存在する。その中でも儂は強大な魔力を持つ魔法使いであり、また行き過ぎたの錬金術士でもあるのだ。魔法という単語を初めて聞くかもしれんが大丈夫だ。魔法の知識や向こうの世界での知識は全てホムンクルスの記憶に儂が入れておる。お主がホムンクルスの中に入れば直ぐに色々なことを理解しているだろう。」
「なるほどな。しかし、それならわざわざ俺の魂をホムンクルスに宿し俺にあんたの錬金技術を継がせるより、弟子をとって継がせれば良かったんじゃなないのか?」
「それはできない。儂の錬金技術は身に莫大な魔力を宿っているからこそ使用できる技術だ。後、儂が生涯かけて作り上げたホムンクルスという代物を起動したいという理由と儂の技術は行き過ぎておって他人に教えれば悪いことに使おうとするだろう。だがお主ならばそのようなことに使わないと魂を見ればわかる」
海斗は怪訝そうな顔で尋ねる。
「俺に莫大な魔力があるというのか?俺の世界では魔法なんかない世界だぞ?」
「ある。お主の身には儂をも超える魔力を感じることができる。まずそうでなければ儂のホムンクルスに適応するはずがない。」
そう言われると海斗は少し嬉しくなった。
自分の身にはまだ自分の知らない力があったということにだ。
「それで、この事を断れば何かあるのか?」
「いや、何もない。ただお主は輪廻転生の輪の中に魂が消えていくだけだ」
海斗は考える。
このまま輪廻転生の輪の中に入り記憶を失い、今の春風海斗という存在が消えていいのかということである。
18歳という短い人生を終え何も謳歌できぬまま死んでしまった人生である。
もし、この記憶を持ったまま他の世界とはいえ生き返ることができるのであれば、それは俺が死ぬ間際に願ったことではないのだろうかとういことである。
ならばもう答えは出ていた。
海斗は笑みを浮かべながら答える。
「分かった。その話受けよう」
「あい分かった。それでは少しお主の記憶を覗かせてもらうぞ?」
「俺の記憶?」
「あぁ、お主の記憶を見てお主が必要としてる物を作ろうと思ってな。お主がホムンクルスに生を受ける前に作っておこうと思うのだ」
「なるほど、それは助かる。それじゃあ覗いてくれ」
そう海斗が答えると男は海斗の額に手を置き何か呪文のようなものを唱える。
これが魔法というものなのだろうかと海斗が考えていると直ぐにその作業は終わった。
「よし、分かった。お主の要望する必需品は作っておこう。後、説明しておくが多分お主が目を覚ますのは儂の生きている時代から数百年後となるであろう。異なる世界から異なる世界にたどり着くためには何百年と時間が掛かるのでな」
「なるほど、分かった」
海斗にしてみれば違う世界なのだ。
別に時間が進んでいようがどうでも良かった。
生きれるだけで幸せなのだから。
「それではお主を儂の世界に招待する。お主の新しい人生に幸あることを願う。それではさらばだ春風海斗よ」
男がそう答えると海斗の意識はまた闇に包まれるのであった。