ラーゲルレーフ (2)
豪奢な玄関を抜け、城内に入ると、不思議と緊張よりも懐かしさが上回った。
王家の城、ラーゲルレーフへ足を踏み入れるのはすでに数年ぶりのこと。
そしてもし、ウェイディに会うとすれば……いや、会わないわけにはいかないと思っていたが、そのウェイディに会うとなるともはや十数年ぶり。
うっすらとした記憶が城の内観と交わり、一時、帰郷でもしたような奇妙な安心感すらアモンは覚えた。
が、緊張を解くのはまだ先である。
「こちらへ……」
レイモンに導かれ、廊下を進む。
背後についた数人の兵士たちの存在が気が気ではない。
ことここに及んで、背後からいきなりひと突きなどとなったら、同じ死ぬでも、まさしく死んでも死に切れない。
アモンは後ろを振り返りたい欲求を必死に抑えつつ、レイモンの後ろをついて無駄に長い廊下をさらに進む。
今となっては、これほどに大きな城は自分にとって非常に合理的でないものに感じる。
生活の快適さよりも威厳や格式を重んじた造り。
もはや辺境の城での生活はアモンの価値観を完全に塗り替えていた。
そう思うと、ウェイディに対して少なからず同情心が湧く。
人間らしさのかけらも無い生活。
身分の代わりに自由を失った生活。
絶対的権力の代わりに愛する人を得ることも適わない生活。
考えればおかしな話である。
今から自分を殺そうという相手を心からアモンは気の毒に思っている。
しかし、物事の流れは彼の心ほど寛容ではない。
通過したいくつかの部屋のドアとは別格に大きい両開きの扉を前にし、レイモンが言う。
「こちらの謁見の間にて陛下がお待ちでございます。つきましては恐れながら御身を改めさせていただきとう存じます」
「……ああ」
(最終関門到着!)
心の中でアモンは叫ぶ。
見れば、扉の左右から二人の近衛官がこちらへ近づいてくる。




