来たるべき時 (9)
土煙と耳障りな騒音を立て、アモンを連れた一団が城を去る。
それを城門から城の外へ出、道の先まで見送り続ける。
テオドールとアルセイデス。
二人は並ぶように城門前の道に立ちながら、ただアモンが自分たちの元から去ってゆくのを見ているほか無かった。
ほどなく、一団の上げる土煙も薄れ、けたたましかった音が遠くのものに変わったとき、テオドールは、ぽつりと口から言葉をこぼした。
「……いっちゃった……」
その声に反応するように、アルセイデスは横に立つテオドールに目をやった。
何の表情も無く、まさしく茫然自失という状態で、目だけを道の先に向ける彼女を見て、アルセイデスは突然、また涙が溢れてくるのを感じた。
彼女の言う通りだ。
アモンはいなくなってしまった。
容赦の無い現実が心に突き刺さり、それでも足りずに傷口をえぐる。
嗚咽をこらえるのが限界の状態で、その場に立ち尽くしたまま、涙で濁る目をテオドールに向け続ける。
「……いっちゃったよ……」
言葉が繰り返される。
「……アモン……いなくなっちゃったよ……アルセイデス……」
「……テオドールさん……」
「どうしよう……アモンが……アモンがいなくなっちゃったよアルセイデス……」
その言葉をきっかけにしてか、テオドールは感情の波に飲まれた。
無表情だった顔を急速に悲しみと不安、恐怖と絶望が歪め、崩れるようにその場にへたりこむと、深くうつむいた目からとめどなく涙をこぼす。
乾いた土の地面が見る間に悲哀を帯びた潤いに湿されてゆく。
「……いやだよ……アモン……いなくなっちゃうなんて……いやだ……」
体を丸めるようにして地面へとうずくまり、嗚咽と空しい拒絶を繰り返すテオドールに、アルセイデスはもはやかける言葉も、差し伸べる手も無かった。
彼自身、すでに自分の感情を抑えることができなくなっていた。
今、口を開ければ間違い無く、意思とは関係無しに泣き声が溢れる。
そんなもの……漏らすものなんて……涙だけでたくさんだ。
「……やだ……いなくなるの……アモンが……いやだ……」
いつまでも続くテオドールの必死な拒絶の言葉に、耳を覆いたくなる。
気づけば、道に残るのは大きな馬車の残した複数の轍。
風の音に混じり、いつ静まるとも知れぬテオドールの泣き声だけが城の外へ響き続ける。




