来たるべき時 (4)
変化は時に穏やかに、そして時に急激に訪れる。
その日、アモンの城に訪れた変化は不幸なことに後者であった。
辺境に位置するこの城に早朝、仰々しい一団が到着した。
大型の馬車四台、五十を下回らないであろう騎兵、歩兵。
各自が背に大きなベルディニオの国旗を掲げ、一目でそれが尋常な事態ではないことを告げる。
「公爵!!」
蒼白となった顔でテオドールが寝室に飛び込んできた時、アモンはすでに起きていた。
大人数の騎兵や馬車の立てる音に素早くベッドから出たアモンは、窓からじっと外の様子を確認していた。
「……テオドール、今日は早いな。よく眠れなかったのか?」
窓から視線を移し、アモンはテオドールを落ち着いた目で見つめる。
「そんなことじゃありませんよ! 外、外になんかすごい連中が!!」
「……中央の使者団だな」
テオドールの言葉をまるで無視するように、アモンはゆっくりとテオドールへ歩み寄る。
「兵たちの装備や馬車の仕様……それに規模から察して、恐らく王族からの使者だ。最低でも公爵以上……」
「最低でもって……それじゃあ……」
「すまんが、あまり話している時間は無さそうだ。テオドール、上着を持ってきてくれ。私は玄関で待ってる」
アモンの口調は異論を差し挟む余地の無い、厳しいものだった。
一瞬テオドールは口をぱくつかせたものの、結局は口を閉じ、アモンの指示に従った。
早足に部屋を出たテオドールを見送ると、アモンも続いて部屋を出、階段を下りると玄関の錠を開け、静かにテオドールを待つ。
その間にも城まで響く騒音は近づいていた。
と、
「公爵、はい!!」
テオドールの声に振り返ると、信じられないことに彼女は上着をアモンへ投げよこした。
これが普段の行いならばアモンは文句の一つも言うところだったが、息を切らし、汗を額に滲ませ、必死の様子でそんなことをしたテオドールへアモンは、ふと笑ってしまった。
緊張の糸がわずかにほぐれる。
「全く……お前といるとほんとに退屈しないで済むな」
言いながら、渡された上着に素早く袖を通し、アモンは軽く口元に笑みを浮かべた。
「さて……(招かざる客)の応対といくか」
「ちょっ、公爵、それは私の……」
「構わん。直接私が話したほうが手っ取り早い……どっちに転んでも、な……」
言い終わるや、アモンは玄関の戸を開けた。
東の空に、まだその全容を見せぬ太陽が、紫と赤みを帯びた黄色の境界を作る。
アモンはゆっくりと庭園を回り、城門へ辿り着くと、城主自らの手でその錠を外した。




