近づく終末 (7)
「バカ公爵、今日は書簡と何か荷物が届いてますよ!」
いつものように、昼を迎えたアモンの寝室へ大声を上げながらテオドールが入る。
「お、ようやく来たか。送り主はフューレイか?」
すでに起床し、眼鏡を掛けてベッドに腰掛けたアモンが問う。
このところ……正確にはこの前アルバインが訪れて以来、アモンは決まって起きていた。
始めのうちこそ驚いていたテオドールだったが、今ではすっかり慣れてしまった。
……いや、慣れたという言葉が適切であるかは疑わしい。
テオドールはアモンの自主的な起床を変わり始めた日常の一つとして捉え、それについての対処に慣れただけであって、もっと重要な部分……そうした変化に対する、漠然とした不安は日に日に増す一方だったからである。
「……はい、レムレスからの送り印がついてますから、多分そうだと思います」
言いながら持参した上着をベッドの脇へ置き、書簡と何やら梱包された小さな箱をアモンに手渡した。
アモンはベッド脇の小物入れの中から小型のナイフを取り出すと、書簡の封を開け、小箱をくくっていた細い縄を切り取る。
書簡にまず目を通す。
二枚の便箋にびっしりと書き込まれた文字を読みながら、アモンはゆっくりと目を横へ滑らせつつ、表情が真剣になってゆく。
そして二枚目の便箋へと目を移した時、わずかに目を見開き、口元へ笑顔を浮かべると、アモンは満足そうにうなずいた。
「あの……今度は何のお知らせです?」
「ん? ああ、いや、ちょっとしたことさ。ただまあ、少なくとも良い知らせだと言っておこうかな」
「?」
「つまり私の心配事が一つ減った。そういうことだ。細かいことは気にせんでいいよ」
話しながら、アモンは読み終えた書簡をたたみ、小物入れの上に置くと今度は小箱の包み紙を丁寧に解いてゆく。
二重の紙で包まれた小箱が本体を見せると、中身は小ぶりな林檎ほどの木箱だった。
すぐに蓋を開け、中身を確認しにかかる。
箱を覗き込み、指先でその中からアモンが取り出したそれはどうやら大振りの……正方形をしたカフスボタンのようだった。
「届け物って……ボタンですか?」
わざわざフューレイがアモンに対して、ボタン一つを送ってきた理由がまるで分からず、テオドールは疑問も露な顔をする。
「そう……ボタンだ。少し大きいが、ただのボタン。そう見えるだろ?」
「はあ……」
アモンの答え方が妙に不自然な言い回しだったおかげで、テオドールはさらに表情へ困惑を加えた。




