近づく終末 (4)
暗殺工作についての説明は始めに言われた通り、極めて単純だった。
そして、回避不可能であることも確かだった。
話を聞き終えて、アモンはただ呆然とするほか無い。
今際の際。
年貢の納め時。
死神の鎌の砥ぎ終わり待ち。
己の置かれた状況をいろいろと表現して考えてみる。
不思議に思えた。
とっくにある程度の覚悟をしていたつもりだった。
それなのに今、自分でも情けないと分かっているが、石にすがり付いてでも死にたくないと思っている。
無論、死ぬのが怖いというのもある。
しかしそれ以上に離れたくないもの、失いたくないものが、この城に来てから、自分にはあまりにも増えすぎた。
(死にたくない……)
心の中をそんな思いに満たされ、アモンは無意識に唇を浅く噛み切っていた。
口の中に広がる暖かい血の味が、自分がまだ生きていることを強く示す。
そんな混乱にも似た思考の末、しばらくの間を置き、アモンは意を決するように、眼鏡を外すと両手で自らの頬を力いっぱい叩いた。
迷いや不安をいくら重ねても何も解決しない。
すべき覚悟の時はまさに今なのだろう。
我が身を縛り付けられるような思いの数々を振り切り、アモンは眼鏡を掛け直すと、毅然とした表情でアルバインに言った。
「……アルバイン、少し時間をいいか?」
「時間……と、いいますと?」
「フューレイ宛に書簡を書く。それと、そちらの国の細工職人に作ってもらいたいものがある。すぐに書き上げるから待っていてもらえるか?」
「……分かりました。では、こちらでお待ちしております」
「それほど待たせんよ。茶でも飲んで体を暖めておいてくれ」
言って、アモンは廊下へ出た。廊下にはテオドールがさも不安そうな面持ちでたたずんでいたが、そんな彼女にアモンは珍しく笑顔で笑いかける。
「すまないな、ずいぶん待たせたか?」
「いえ……そんなことより一体、話ってどんな……」
「悪いがこれから少し急ぎの用事だ。私は書斎に行くが、アルバインに熱いお茶を出してやってくれ。私のほうは気にしなくていい」
テオドールの質問を押しのけるように、アモンは一方的に話すと、そのまま二階へと早足に駆け上がり、そのまま書斎に籠ってしまった。
約一時間後。
書斎を出たアモンが二通の書簡をアルバインに手渡すと、以前の訪問の時と同様、アルバインは即座に城を後にした。




