諍いの果て (5)
城を出てからすでに十日目。
今日もアルセイデスは森の洞穴に潜むテオドールを訪ねていた。
「どうですか、少しは落ち着きました?」
「……まあね」
明らかに答えの内容とは異なる口調でテオドールが答える。
途端、大きく息を吸い込んだところでため息をぎりぎり我慢したアルセイデスだったが、それでも落胆の影の濃い表情だけはごまかせそうに無かった。
「……じゃあ、また明日も様子を見に来ますので、どうか体調に気をつけてくださいね。もう随分と寒くなってきましたから」
「うん……」
今日も目すら見ずにテオドールが返事を返す。
アルセイデスの胸中もすでにテオドール並みに複雑になっていた。
果たして、アモンにテオドールの居場所を教えなかったのは得策だったのか。
気を廻して行なったつもりの自分の行為はもしかしたら、ひどく的外れだったのではないか。
十日間という長い時間をかけても一向に解決に向かわない状況に、アルセイデスは自分にも非があるのではないかと思わずにはいられなくなっていた。
洞穴を出てから、テオドールに聞こえないようにそっと小さなため息をつく。
自分が万能でないのは承知している。
とはいえ、ある程度の能力はあると思っていた。
いや、思いたかったのかも知れない。
二人のいざこざも、なんとか上手く処理できるかもと、そんな慢心がもしかしたら自分にはあったかも知れない。
負の感情は伝染する。すでにアルセイデスも感染者だ。
これから城へと帰れば今度は空腹と孤独、そして大きな喪失感で暗く落ち込んだアモンが待っている。
アルセイデスはふと城へも森へも居たくなくなっている自分に気づいて一層悲観した。
洞穴から城へと向ける足が鉛のように重い。
行くも引くも立ち行かず、思わず両手で顔を覆った。
気を張っていないと正直泣きそうだった。
と、その時。
森の向こう……城のある方角からかすかに人の声が響いてきた。




