氷の古城 (5)
廊下をテオドールと連れ立って玄関まで来たアモンは、手に持ったままの林檎酒で満ちた杯を指で弾きながら、アルセイデスに問うた。
「一体、何事だ? 私は急がし……くは無いが、非常に気分が優れないというのに……」
アモンが言い終わるのも待たず、アルセイデスは玄関の戸を全開にした。
瞬間、
アモンもテオドールも息を飲んだ。
雪である。
白く、淡く透き通った微小な氷の結晶。
気づけば外は一面が白く彩られ、まさしく雪化粧をほどこした城と森とがまるで溶け合うような光景が広がっている。
降りしきるはかない雪の粒は、時折吹く横風を受けて真っ白な花の吹雪を想起させた。
「部屋の暖かさで窓が曇ってたから、全然気づかなかったわ……」
しんしんと降り注ぐ雪に興奮したように、テオドールは庭園へ早足に歩みだす。
見れば、すでに足跡を残せるほどの雪が地面を覆っている。
「時期は少し早いですけど、こういうのもたまにはいいですよね」
玄関先に立ちながら、傍らで外を見つめるアモンにアルセイデスが言う。
テオドールはさらに積もり始めた雪に、はしゃぎながら足跡をつけ続けている。
「雪見酒か……なかなか風流だな……まあ、悪くない」
横に立つアルセイデスに言うでなく、アモンは思いが口から漏れ出すようにつぶやくと、雪の中で舞うテオドールを見ながら杯を空けた。
明日には見渡す限りの白銀の世界が広がるだろう。
それもまた悪くない。
白く汚れの無い世界が一時といえども現れる。
いつしか凍えていた体は、明日目にするであろう世界への期待でほのかにぬくもりを感じ始めていた。




