氷の古城 (4)
「やっぱり部屋が暖かいと心にも余裕が出てくるわねえ」
「ほんとですねえ」
アモンの貴重な蔵書によってすっかり暖まった食卓の間で、二人の従者は楽しげに話す。
対してアモンは部屋の隅へ椅子を置き、すっかりふてくされて林檎酒をすすっていた。
「……レイモン・ヤコブスの薬草図解……ウォラギネ・デルフの植物と薬理……ホルヘ・シーベリィの高等薬草学事典……」
恨みがましく燃やされた蔵書の名を暗唱する。
「さて、これだけ暖まれば気力も出るわあ。さっそく夕餉の支度を整えちゃいましょ!」
そう言って、テオドールは機嫌よく台所へと向かった。
「じゃあ、私は庭の様子を確かめてきます。この寒さだと霜が降りるかもしれませんから気をつけませんとね」
そう言って、アルセイデスは機嫌よく庭園へと向かった。
一人、残されたアモンはさらに苛立ち、林檎酒を飲む勢いを増したが、不思議なほど酔いが回らない。
「……おかしいなあ……なんでいつもの林檎酒がこんなに塩辛いんだろう……」
女々しい涙を杯に落としながら、なお飲む速度は衰えない。
気づくと、膝を抱えて座っている自分に情けなさがいや増す。
すると突然、
「殿下ー、テオドールさーん、ちょっと外に来てくださーい!」
玄関から廊下を響き、アルセイデスの呼び声が届く。
落ち込みつつも、普段では普通あり得ないアルセイデスの呼び出しに反応し、アモンは廊下へ出た。
「何事ですか?」
「私が知るか!」
ちょうど廊下で顔を合わせたテオドールに問われ、隠しもせず不機嫌に答える。
「早く来てくださーい!」
玄関先から廊下へ顔を出し、アルセイデスが手を招く。
何故だか満面の笑みを浮かべて。




