氷の古城 (2)
険悪な雰囲気の中、三人揃って一つの暖炉に当たりつつ、ふとアモンはちょっとした不安に駆られ、先ほどから暖炉の前をてこでも動こうとしないテオドールに問うた。
「……ところで、今日の夕餉は一体どうするんだ?」
「一食ぐらい抜いても死なないでしょ?」
明らかに寒さを理由にした職務放棄宣言である。
アモンは無駄に腹を立てて空腹が促進されるのを避けるため、努めて冷静に反論した。
「私はその一食で一日を生きてるんだぞ。それを抜いたら間違いなく死ぬだろうが……」
「はいはい、言い方を改めます。一日二日は食べなくても死んだりしません!」
血が滲まんばかりに唇を噛みしめる主人。
わざとらしくそんな主人にそっぽを向く従者。
いたたまれない空気にもはやため息しか出ない庭師。
彼らのあまりに非建設的な時間はそのまま日暮れまで続くかに思えた。
しかし、
「あ、そうか」
「?」
いきなり、一人で勝手に納得したようなことを言うテオドールに疑問の視線を投げかけると、テオドールはやけにいやらしい目つきで笑い、二人に言った。
「バカ公爵の蔵書……あれ、燃やしましょう」
アルセイデスは、ああ、なるほどといった顔。
アモンは……死刑宣告でも受けたような顔をした。
「……えーと、テオドール。お互い寒いのはよく分かるんだが、できればもう少し面白い冗談を願いたいな。今の冗談では逆に凍え死んでしまうぞ……」
「本気です」
アモンの言葉に食い気味で返答する。
と、いそいそとテオドールは立ち上がり、部屋を出ようとドアへ向かった。
「ちょっ、ちょっと待てテオドール、どこに行く気だ!」
「まずは一階の書庫から片付けようと思いますので、ご了承ください」
「了承するかそんなもの!!」
「アルセイデス、悪いけど手伝ってもらえる?」
「はい、分かりました」
庭師の同意にアモンは一瞬、気が遠くなった。




