氷の古城 (1)
「寒い!!」
アモンがこの言葉を口にするのは果たしてもう今日何度目だろうか。
もはやテオドールもアルセイデスも、ましてアモン当人もすでに分からなくなっていた。
時期外れ……とまでは言わないまでもかなり早い時期に突然この辺りを訪れた強烈な寒波がアモンの城を包んだ時、折り悪しく城の燃料は底を尽きかけていた。
「テオドール、これから本格的に寒くなるという時期にコークスを切らすとは何事だ!!」
「仕方ないでしょ! ここのところやたらと忙しくって、つい注文を忘れちゃったんですから! 大体、私のする仕事自体どう考えても多すぎるんですよっ!!」
主人の文句に反論しつつも、当たる暖炉は一緒である。
コークスとは、石炭を乾留して作られる多孔質の固体で、強い火力を発生する。
主に鍛冶屋の製鉄、調理場の煮炊き、冬場の暖房に暖炉などの燃料として用いられる。
それが現在、城にはほとんど備蓄が無い。
結果、主人と従者、そして庭師の三人が仲良く集まって一つの部屋の暖炉の前に丸まっていた。
「アルセイデス……ほら、なんだった……あー、エントとかいう妙な樹。あれに薪を集めさせるとかは出来ないのか?」
「無理ですよ。少し考えれば分かるでしょうけど、彼ら自身も樹なんですよ? 樹に樹を燃やすから持ってこいなんて言えるわけないじゃないですか」
「……くそっ、役に立ちそうで変なところ融通が利かないな……」
毛布にくるまりながら、アモンはうらめしそうな文句を漏らす。
「あー……これでランタンの油まで切れたら、心まで折れるな……」
「油はちゃんと在庫しておりますからご心配なく。全く……このバカ公爵は細かいことをねちねちと……」
「何か言ったか!?」
「空耳ですっ!!」
必要以上に喧嘩腰の二人を見ながらアルセイデスは、
(どうしてこの二人はこういった気力を有効なことに利用できないんだろう……)
暖炉からのぬくもりを感じつつ、そんなことを思いながら一つ小さなため息をついた。




