プロローグ (5)
森に入ったアモンは周囲を探ると手ごろな場所を見つけて腰を下ろし、ゆったりと紫煙をくゆらせることにした。
煙草入れの中には現時点で在庫が二十と七本ある。
アモンは次の煙草の葉が調達できるまでどの程度かかるかを考えながら、慎重にこれからの喫煙間隔を模索していた。
深い樹々に囲まれ、薄い木漏れ日を見ながら忘れ草を肺に満たし、至福の時をぼんやりと過ごしながら些細な思索にふけっていると、ふといつも思っていた疑問が頭をよぎる。
そういえばアルセイデスはいつも一人でどうやってあんな樹々を庭に植えているのか?
当たり前のことだが、苗木の状態で運んだというなら合点はいく。
しかし、アルセイデスは常にああいった樹々を、成木の状態で庭に植える。
うっすらとした想像の中、巨木を根っこから引き抜き、肩に担いで城へと向かうアルセイデスの姿が頭に浮かんだが、そのあまりの現実味の無さに想像を止めた。
(まあ、庭師の仕事の方法まで主人が把握する必要も無いだろう……)
気づくと煙草の火が口元まで迫っている。
手の中の煙草入れを転がしながら今、もう一本に火をつけるべきか、アモンは苦悩した。
人の悩みは尽きない。それがどんなにくだらない事柄であっても。