大挙する暗殺者 (5)
ドアの蹴破られる音が聞こえた後の隣室から響いてくる音はまさに悪夢のようだった。
次々に室内へ侵入してくる足音、何人もの怒号のような叫び声、散発的に鳴り響く銃声。
それが露の間を挟んで急に音の種類が増えた。
金属同士の摩擦音、いくつもの短い悲鳴のような声、それと合わせるように響く、鈍い、床を叩くような音。
いつまで続くか分からず部屋を満たし続ける不快な戦闘の音は、少しずつアモンから理性を削り取っていく。
実際、気をしっかり持っていなければアモンは自分がどうにかなりそうだった。
暴力的な音の洪水に加え、部屋の中に金臭い鮮血と硝煙の匂いが濃く立ち込めてきた時、不覚にもアモンは一瞬、気を失いかけた。
くわえていた煙草が口からこぼれる。
震える唇とあごは、もはやそれを繋ぎ止めておけなかった。
続くように次は膝が震え始め、さらに指、肩、そして全身に及ぶ。
もはや正気だけでなく、体を支えることにすら気力を振り絞らねばならなくなり、アモンは自分の精神的な限界がすぐそこまで迫っているのを嫌でも思い知らされ、己の非力さにただただ失望するほか無い。
(頼む……頼むからこらえろ……お前は腐っても、この城の主なんだぞ!)
自分自身を叱咤する心の声を必死に繰り返しながら、同時にどうか一分一秒でも早くこの状況が終わってくれることを祈り続ける。
しかし、アモンはこうした手前勝手な願いは総じて叶わないことも分かっていた。
それでも、対象すら定かでなく祈ることを止められなかったのは、恐らく単に漠然とした何かにでもすがらねば、もう自分を保ち続けることが出来なかったからに他ならない。
その証拠にドアの下から床を這うように部屋へと大量の鮮血が染み入ってきた時、アモンはついに限界に達した。
込み上げる強い吐き気すら忘れるほどの本能的な衝動に支配され、部屋に入る前にアルバインからされた指示も完全に無視し、アモンは内側からかけたドアの鍵を開けると、右手に銃を構えながら部屋を飛び出し、隣室に躍り込んだ。
全身の震えはすでに止まっている。




