大挙する暗殺者 (4)
突然、隣の部屋から重くのしかかるような轟音が響いてきたのは、まさしくアモンが頭を抱えたその時だった。
まるで耳を引き裂くような、それでいて腹の底に響くような音が、継ぎ目も無く隣の部屋から聞こえてくる。
あまりの音の大きさに耳がバカになり始めたが、おかげで逆に細かな音の構成が理解できた。
まずガラスの砕ける音。
続いて石壁を金槌が叩くような音。
そして止む事無く続く何かの炸裂音。
それはまだ中央にいた頃、式典で打ち鳴らされた大砲の音を想起させたが、一つ一つの音はそれとは比べ物にならないほど小さい。
とはいっても、連続して響き続けるその音は十分にけたたましかった。
が、程無く音は途切れ、再び静寂が戻った。
気づくと自分がくわえている煙草の匂いにわずかながら硝煙の匂いが混ざりだしている。
「アルバイン、何事だ!!」
大声を張り上げたはずの自分の声が、やたらと小さく聞こえる。
代わりに、静寂が戻ったはずの耳に、ひどく低い笛のような音が響き続けている。
「敵の銃撃です! 恐らくこれから弾丸を再装填した後、直接城内へ乗り込んでくるものと思われます!!」
高く、通りの良いアルバインの声すらも今のアモンの耳では聞くのもやっとであった。
「ああそうかい! となるとやはり最初に言ってた通り、お前一人で百人からの敵を相手にするわけか! そりゃ、けっこうなことだ!!」
「大人数では一度にこの部屋へ押し入るのは不可能です! となれば全体の数はそれほど重要ではありません!!」
「理屈がどうあれ、百人の敵は十分問題だろうがっ!!」
「大変申し訳ありませんが、もういつ戦闘が始まってもおかしくありません! お話は後ほどにお願いいたします!!」
自分でさえ聞き取ることの出来ない舌打ちを鳴らし、アモンは部屋のドアから離れると、苛立ちながら銃を構え、時を待った。
正直、涙が出そうなほど我が身が情けない。
いくら当人の申し出とはいえ、女一人に百人もの敵を任せ、自分は縮こまってこんな狭い部屋の中に身を潜めている。
とてもではないが己の身分を思うと耐えられぬ屈辱だった。
本来、高位に身を置くものは率先して前線に立ち、他に範を示すのが慣わしである。
自分の父……先代当主だったオーギュストもまた、そうして死んでいった。
無論、自分にはそんな気概も誇りも無い。
それは分かっている。
分かってはいるが、いざ現実に他人を盾に生き延びようとしている我が身を思うと、あまりにもいたたまれない。
(いっそ、この部屋から出てアルバインとともに敵と切り結ぶべきではないか……)
そんな危い考えすら浮かび始めた時、石壁を通して廊下から響く多くの足音が隣室に迫るのが聞こえてきた。
「アルバイン、返事は要らん! もう一度言うからしっかり聞け!!」
アモンはドアに向かい、大音声で叫んだ。
「絶対に死ぬな!!」
まもなく、隣室のドアが蹴破られる音が聞こえた。




