再びの来訪者 (4)
森の散策。
そしてそこでの喫煙は、アモンにとって一日を構成する要素の中でも特に必要不可欠なものである。
にもかかわらず、今日のアモンはそれらに対し微塵も喜びを感じることが出来なかった。
実際は喜びを感じる余裕が無かったというのが正確だが、そうした表現の問題より今現在アモンが抱える、すなわち心の余裕を根こそぎ奪っている根本原因が何しろ問題だった。
それは今、彼の懐にある。
あの変わり者のフューレイに助手として仕える義手の森人アルバインからの贈り物。
本来それはアモンに安心を与えるはずのものだったが、人の価値観というものはまさに十人十色である。
そして不運なことに、アモンの性格はその贈り物を心の拠り所とする性質ではなかった。
(……どっかに捨てちゃおうかなぁ……)
これがせっかくの贈り物に対するアモンの偽らざる気持ちであった。
いつものように手ごろな岩へ腰掛け煙草に火を灯す。
贈り物の一つ、グルフィアの煙草。
グルフィアは大陸中央部の農業が盛んな国で、特産は大陸一の品質と名高い煙草であり、さらに付け加えるならその中でもグルフィア東部、ルイス地方で栽培されたものは別格の扱いとなる。
まさに煙草呑みにとって至高の一品。
なのに、
それを口にしながら、今日のアモンはその喜びにまるで浸ることが出来ない。
「……味が分からん……」
自然に独り言が漏れる。
今のアモンにとってはこの至高の煙草と単なる生木の燻る煙との区別すらままならないかも知れなかった。
しかし、長年に渡って染み付いた癖の悲しさゆえか、アモンは無為に極上の煙草を燃やす作業を止められずにいた。
日は徐々に傾く。
だが時間の経過とは一切比例することも無く、結局日暮れを迎えてなおアモンに安らぎが訪れることは無かった。




