再びの来訪者 (3)
「あ、殿下。これからお散歩ですか?」
いつも通り、庭を回って城を出る途中でアルセイデスが声をかけてくる。
「ああ……さっきの客人から極上品の煙草をもらったんでな。一つ森の中でゆっくり堪能してこようとね……」
「……なんか、おっしゃっていることとお顔が合っていませんけど……」
アルセイデスは引きつった笑顔でどこか遠い目をしている主人を見てひどく心配になったが、それ以上に気になったのは主人がやたら懐の辺りを手でまさぐっていることだった。
「殿下、その……胸の辺り、なんかあったんですか?」
「え? いや、何も無いさ。ああ、別に何ということは無いんだ……」
「はあ……まあ何も無いのでしたら構わないんですが……」
全身から陰気な雰囲気を漂わせつつ、アモンは城門へ向かう。
と、
突然アモンは急に踵を返し、アルセイデスに向き直ると、妙な質問をしだした。
「アルセイデス、もし、もし万一の話なんだが、先日の賊の一件、ああいったことがもしまたあったと仮定してだ、マンドレイクで賊を撃退するという方法はまた使えるかな?」
何故かは分からないが、アモンの瞳は淡い期待にきらめいて見える。
すると、いきなりの奇妙な質問に始めこそ戸惑ったアルセイデスだったが、すぐに落ち着いて答え始めた。
「無理ですよ。あの時はそれこそ本当に絶体絶命という事態だったからあんなことしましたけど、もし賊が来た時、城の周りに誰か無関係な人がいたとしたらどうなります。罪も無い人を危険にさらすようなことはもう出来ませんよ」
否定の余地無き完璧な答えだった。
「……だな。そりゃそうだ。うん、いや、妙なことを聞いてすまなかったな……」
「別に構いませんけど……殿下、ほんとに大丈夫なんですか?」
「大丈夫……何事もないさ、うん。心配いらんよ……」
先ほどよりもさらにうなだれて城門へと足を向けるアモンの背中は、もはや哀愁すら漂い始めていた。




