再びの来訪者 (2)
「どうもレムレスの連中は何が根拠か分からんが、私のことを異常に買い被っているような節があるな……」
早々にお引取り願ったダナンのことを思い出しながら、アモンはいぶかしげに言う。
「買われないよりは買われるほうがましだと思いますけどね。人間、良いように言われているうちが華です」
お茶を注ぎながらテオドールが答える。
「まず間違いなくフューレイの仕業だ。あいつめ、絶対私について有ること無いことレムレスで話しまくってるに違いない」
「良い噂なんですから、そんな目くじらを立てたものの見方するもんじゃありませんよ。あ、そういえば……」
「なんだ?」
「フューレイさんの助手をされてた……ほら、アルバインさん。ダナンさんが彼女からの手紙を預けていかれたんでした」
そう言うと、テオドールはポケットの中を探って一通の手紙を取り出した。
「何か大事なことかもしれませんから、ちゃんと読んでくださいね」
「大事な内容ならこんな紙切れでよこすわけ無いだろ。全く……」
言いつつも、粗末な封筒の先を指で切り落とすと、中の小さな紙片に目を通す。
紙の大きさに見合った短い文章。
わずかに三行。
殿下の身辺にわかに不穏の動きあり。
よくよくご用心を怠り無きよう。
ついては贈り物をお受け願いたし。
「……なんだこりゃ?」
「この前の賊のことですかね……」
「だとすればもう事は済んでるだろう。それより、なんだこの贈り物って……」
「……もしかすると、あれのことでしょうか?」
言って指差した先には件のダナンが置いていったいくつかの贈り物の木箱が並んでいる。
正確には箱は四つ。
アモンはそれを一つ一つ開けていった。
「こっちは銀食器が一式……こっちはレムレス産の陶磁器か……これは……おお、愛しきかな忘れ草! しかもこりゃ、グルフィアのルイス地方産じゃないか、極上品だぞ!」
「……バカ公爵。はしゃぐ前にもう一つ……」
「ん? ああ、これの中身は……と」
促され、最後の木箱を開けた瞬間、アモンとテオドールはアルバインの手紙の意味を嫌というほど実感させられた。
「なるほど……身辺の用心のための贈り物……ね」
木箱の中身を手にとって確認しながら、アモンはため息をついている自分に気づくとともに、なにやら胃がきりきり痛むのを感じた。
「テオドール……」
「なんでしょう?」
「これ……お前が持たない?」
「イヤです」
至極はっきりしたテオドールの否定にアモンはしばし、遠い目をせずにはおれなかった。




