病みて語る記憶 (4)
昼を大きく回ったころ、アモンは目覚めた。
昨日までのとてつもない苦痛が嘘のように、今朝……ならぬ、昼はすこぶる体調がいい。
体のふしぶしがなんとなく痛むことを除けば熱も下がり、頭もすっきり晴れやかである。
(それ見ろ、たかが風邪なんぞ私の回復力からすればこんなものだ!)
昨日まで晒してきた自らの醜態は棚にあげ、アモンは意気揚々と起き上がろうとした。
起き上がろうとした……が、
胸の辺りに大きな圧迫感……というより重量感があり、身が持ち上がらない。
どういうことだろうと不思議に思い、あごを引いて自分の胸元を見て愕然とした。
テオドールが椅子に座ったまま、上半身を覆いかぶせるように自分の胸の上で寝ている。
己の腕まくらで気持ち良さげにぐっすりと眠っているその姿を見て、アモンは混乱した。
(……これは一体何事だ……?)
いかにしてこのような経緯となったのか、記憶を必死に辿ってみるが、驚くほど何も思い出せない。
昨晩、一体何があったのだ?
上げていた頭をやたらぬるくなった水まくらに落とし、しばし冷静になって思い出そうとする。
が、やはり全く記憶が無い。
「……大丈夫です。心配いりませんよ……」
寝顔に笑みを浮かべながら、テオドールがなにやらつぶやく。
どうやら寝言と思えるが、これまた何のことやら意味不明だ。
「……」
考えを尽くした結果、アモンが導き出した結論は、
(……もう一度寝よう……)
再び、静かにそのまぶたを閉じることだった。




