レムレスよりの使者 (1)
「バカ公爵!」
心地好い眠りをお決まりの罵声が切り裂いたとき、アモンは天井を睨みつけている自分を自覚していた。
「テオドール……お前も分かってるはずだろう……私はここ数日、例の森人を拾ってきてからというもの、ろくに寝ていないんだ。せめて今日ぐらい思うさま寝坊しても罰は当たらんだろうに……」
「そうはいきません。ほんの少し前にレムレスからの使者だとかいう方々が貴方にお目通り願いたいと、尋ねてきたとこなんです。さっさとこれ着て一階に行ってください。お客人をお待たせしたら失礼ですよ!」
言いながら、テオドールは寝ているアモンの顔へ、ねじ込むように上着を押し付ける。
寝ている主人の顔に上着をねじり込むのは失礼には当たらないのかという疑問を考え込む余地も与えられず、アモンはさらにテオドールに襟首を掴まれると、力任せにベッドから勢いよく起こし上げられた。
ふわりとベッド脇に着地した主人を確認し、テオドールは軽くうなずいて部屋を出る。
いまだ朦朧とする意識の中、なんとなく手に持った上着をほとんど無意識に羽織ると、続いてアモンも部屋を出た。
(私は何か神に恨まれるようなことでもしたかな……)
力無いあくびをかきながらそんなことを考えつつ階段を下りると、さっそく階下でテオドールが苛立たしげに待っていた。
「なにのんびりしてるんですか。お客様、もうあの森人の部屋でお待ちですよ!」
言われて、件の森人の部屋へと向かう。足取りはこの上なく重い。
大体、レムレスからの使者とはなんだ?
またぞろベルディニオの亜人差別に文句でも言いに来たか。
とするなら、私なんぞのところに来るのは筋違いだ。とっくに政治的には失脚している私にそういった話を持ってこられても困る。文句があるのなら法王の書簡の一つでも持ってウェイディ……国王の所にでもいくのが筋だろうに……。
などと考えながら、今メイフレイルにあてがい、そしてさらにレムレスからの使者がいるという部屋の前まで来て嫌なことが頭をよぎった。
(まさか、今回の件で私が怒られるなんてことはないよな……)
当然、メイフレイルの傷の咎はアモンにはない。
それどころか、必死の治療と看病をした事実からすれば、褒められてもいいほどである。
しかし、
(事実がどの程度正確に伝わってるかが問題だ……)
アモンは天を仰ぐと、大きなため息とともに部屋のドアを開けた。




