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Crowd 「クラウド」
別に嫌いなわけじゃなかったんだ。
一人で居るのが辛いだけだったんだ。
一人で居ると、何かしていないと自分が取り残されていくような気がして。
胸を自分で締め付けているような気がした。
――そうするのが好きだったのかもしれない。
だからそう思わないように人ゴミの中に紛れた。
そうするにはこの都会は少し便利すぎて。
俺の全てを隠してくれるような気がした。
――そうして「俺もただの人間だ」と言い聞かせた。
でも本当は怖かったんだと思う。
俺は自分の力を使うのは好きじゃない。
壊すのは得意だけど、好きじゃない。
――沢山いろんなものを壊してきたけど。
結局大切なのは自分だったってだけの話。
俺が泣いているのは誰も気が付かないだろう。
こんな飄々とした奴が。
でも誰からに気づいてもらえないかなって思ってしまう。
――こんなに汚いのに。
気に食わないものは気に食わないといい。
他人の涙を嫌い。
他人の存在すら嫌ってしまう。
――そのくせ誰にも嫌われたくない。
嫌うより嫌われる方が楽だと分かっていても。
俺の頭はそれほど優秀ではなくて。
天邪鬼な俺は。
今日もこうやって人ごみに自分を隠すんだ。