Cliff Edge [クリフエッジ]
身体中が痛い。
今日は普通の日だったのに。
瞳に涙が溜まるのが分かった。
僕は死ぬのか。あぁ、短い人生だったけどそれなりに幸せだったような気がする。
カクリと空を仰いでいた首が力なく横に倒れる。
どうやら身体が限界らしい。
母さんの誕生日に死んでしまうなんてとんだ親不孝者だ。
「・・・?」
霞み行く視界で。白髪の少年がこちらを見ていることに気が付いた。
ほんの少し前に始めて出会った彼が立っていることを確認して、ほんの少し安心して目を閉じる。
「本当は死にたくないんでしょう?」
女の子と思われる幼い声が聞こえた。
その通りだが、身体にもう力は入らない。声を出す事すら出来ないどころか、開け放しの口を閉じることも出来ない状態だ。
「んー。彼は死なないよ。」
少年の声が聞こえる。
「・・・やっぱり貴方は苦手だわ。」
「えぇ!?いきなり!?」
「大げさにリアクションしてる暇があったらさっさと運ぶわよ。直ぐに人が来るわ。」
女の子がそう言うと僕の身体は誰からに抱きかかえられ地面から離れた。
母さんに会いたい。母さんに抱きしめて欲しい。僕の一人の家族なんだ。
薄れ行く意識を手放さないように、目を開けようとするが当然目は開くはずも無く意識を手放した。
茶髪の少女は力なくうなだれてしまった黒い髪の少年を見て呟いた。
「この子の人生は残酷ね。」