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Run away!3

雨は僕らを呼ぶ。

作者: 貴幸

それは俺、赤羅魏 奏也が高校生で、とても雨の降る夜の出来事だった。











雨は僕らを呼ぶ












その頃、俺は人生を生きる意味に悩んでいた。

わからなかったんだ。

こんなにも勉強して、お金を使って、病気にかかって苦しんで怪我をして苦しんで。

結局何十年も苦しんだ後に待つのは死だけ。

それなら、今生きる意味とはなんなんだろう。

楽しみなんて、俺にはなかった。


だから、死ぬことにした。


「うわ、ロープねえや。」


今回は首つりだ。

しかし肝心のロープがないから買ってくるしかない。


「まあ、いいだろう。」


外に出ると雨が酷く降っていた。

夜中であるからかもう車の通りもなく、ただただ雨が降る音が聞こえた。


「これくらいで諦めると思うなよ。」


俺はいつも自殺をじゃまされる。

自殺の薬がただの睡眠薬だったり。

屋上から降りようとしたらおばさんに発見されたり。

カッターで手首を切っても切った所が悪く死ななかったり。

今回は雨だ。

まあ、雨なら諦めないさ。

傘をさすのがめんどくさくてそのまま来てしまった。

これは風邪をひく。


…まあひくまえに死ぬが。


歩いていると一人のこどもとすれ違った。





「こども!?」


つい声にだしてしまう。

こどもがこんな夜中にであるくか!?

しかも傘をさしていない!


「おい、何してんだこんな所で。」


俺はたまらず手をつかみ声をかける。

振り向いたこどもは泣いていた。

いや、雨かもしれない。

髪はボサボサだし、隈はあるし手は少し痣がある。

虐待…?


「どこから来たん…っておい!」


こどもは突如俺に倒れこんできた。

普段こどもと関わることのない俺にはどうしていいのかわからない。

そのまま俺によしかかり気を失ったようにピクリと動かなくなった。

寝たみたいだ。


「…うーん。」


ロープ…。


「ああもう!くそ!!」


見事に自殺は食い止められた。











家に帰り、ガキの服を脱がした。

痣は少しだけらしい。


「男か。」


髪が長く顔立ちも綺麗なので女かと思っていた。

ガキは気を失ったまま起きない。

とりあえずそこらへんにあるパーカーを着せてやることにした。


「…柄見て泣き出しませんように。」


クマが血をだして笑っている柄だ。


「…さっむ。」


ガキの手をつかむと手は死んだように冷たかった。


「やばい、このままじゃ死ぬかもしれない。」


毛布をかけ手を握った。


あ、でも、暖かい。

俺はいつの間にか、寄り添い目をとじていた。












「ん…。」


寝ていたらしい。

目を開けると目の前にガキがいた。


「うわ!!!」


ガン見されている、無言で。


「…調子は、大丈夫?」


「うん…。」


静かに返事をされる。


「じゃあ家に返すからどこから来たか教えてくれるか?」


そう言うと首をふった。

ああ、暴力がいやなのか。


「大丈夫、親には俺が言うさ。なおらないようなら警察に行く。」


何故暴力振るくらいなら産んだんだ。

せめて孤児院に預ければ良いのに。


「そのパーカー、怖いだろ他のにするから。」


脱がそうとすると嫌がった。

…ん?


「このパーカー好き。」


「え、お前…これが?」


こんな悪趣味俺くらいだ。


「あと、お兄さんも好き。」


そう言って、抱きついて来た。

どうすれば良いのかわからない。

俺はただ緊張と違和感で汗がだらだらとでてきた。

ダメだ、これは人の子なんだ。

それに俺は高校生。

あまり干渉してはならない。


「で、家は何処なんだよ。」


「たくさん人がいるの。大きい家で。」


大兄弟!?

…外国!?


「お前マジでどっから来たんだ…」


「やだ…帰りたくない…ここ家…」


なんて勝手なガキなんだ!

せっかく助けてやったのに居座りつこうなんざ!

…あれ、なんで俺は人の子だから干渉してはいけないなんて思ったんだ?

まさか飼うつもりなのか!?

待てよ?大家族…って。


「孤児院?孤児院の人間なのか?」


「それ!」


「帰れ!帰るんだ!」


いやでも暴力を受けてるならここで飼った方が…


「そういえばお前名前は?」


「ヒロキ。」


「ヒロキ、俺お前の期待にはこたえられないんだよ。わかるだろ?お前には帰る家があるの。」


ヒロキは少し悲しそうな顔をした。

そうだ、自殺にも邪魔なんだかえせばいいんだ。


「…わかった。」


ヒロキは一つ頷くと俺にまた抱きついた。


「ありがとう、お兄さん。」











朝になれば雨も止み、ヒロキは帰っていった。


「…。」


まだ、温もりが残っている。

忘れかけていた人間の体温が。


「気持ち悪…」


「気持ち悪いんだよ、気持ち悪いんだよ…!!!」




…まだ、間に合う。





家を飛び出し走る。


「間に合…」


間に合うも何も、ヒロキは路を曲がってすぐそこにいた。


「はあぁ〜!?」


力が抜ける。

途端に飛び出してきた事がばれて恥ずかしくなってきた。


「違う…これは、パーカーを返してもらいたくて…」


無性に腹がかゆくなる。

ヒロキは嬉しそうな顔をした。


「良いの?」


「聞くなよそんな事…」


ヒロキは俺に抱きついてきた。


「ありがとう、お兄さん。」




「お兄さんじゃない、アカラギだ。」




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