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第二話 始まりの赤

今は昼時。皆から気味が悪いと侮辱され、傷つけられても諦めず、寂しがってる者、苛められている者などを助けていた。そんな十歳の頃の夢。


そんな中、一人の少年が一人ぽっちで公園の奥に行ってしまった。何だか解らなかったが後を付けてみるとその子がナイフで自分自身を傷つけようとしている。


「止めて!!」


その子にしがみつき、ナイフを取り上げた。


「どうしてこんな事するの!」


「だって...」


男の子だった。フードを被っていたけどその服装で分かったのだ。


「僕、罪のある子だから...友達を死なせたから...だから僕も死のうと思って...」


取り上げたナイフを放り投げ、何故か傷ついた少年の体をそっと抱いた。暖かい。でも、悲しい。


「どうして君が泣くの?関係ない君が...どうして...」


「君が自分を傷つけるから...それが悲しくて...」


加奈は泣いていた。よくは分からない、けど悲しい。


「自分を傷つけないで...もっと大切にしてあげて?もっと自分を信じてあげて...簡単に死のうなんて思わないでよ...世界にたった一つしか存在しない大切な自分の命なんだから...」


少年は彼女の腕から逃れ、一人泣く少女を見つめる。


「わかった。」


「ほんと?」


「うん。助けてくれてありがとう...」


強い風が吹き、彼のフードが頭から外れた。そこには...


「髪の色...ヒマワリとおそろいだ。」


「僕は嫌いだな...皆と違うから。」


「どうして?私は好きだな。この色...見てると気持ちがポカポカしてくる。まるで...お日様みたい!」



その言葉を聞いて彼は笑った。



「僕も好きだな...君の髪の色...」






いつも気味が悪いと言われ続けられてきたこの髪の色





お父さんにも


親戚にも


友達にも...






「皆を優しく包む夕日の色。君みたいだよ。」





「ありがとう...」





なんだか照れくさい。



そう思っていると彼は加奈の手をマジマジと見つめ、そして彼女の手が異様に傷ついている事に気づき、真剣な眼差しで言う。


「ずっと守ってあげる。だから僕の事信じて?」


そして加奈は目を覚ます。



夢...?いや、きっとコレはまだ自分が人を助け、諦めてなかった頃の記憶...




そしてその時、バシ!と鈍い音が聞こえた。


「どうしてそんなことを言うの?あなた...」


この声はお母さんのものだ...


「言うに決まってるだろう!あんな奴が俺の子供な訳が無い!!なんだあの気味が悪い髪の色は!!」



コレはお父さんの声...



「どうせ俺の知らない所で出来た子だろう?素直に認めたらどうだ?!」


「違う!違うわ!!あの子はアナタと私の子よ!あの髪は一種の病気にかかってあんな色になっただけって医者も説明したでしょう?」


「うるさい!誰があんな気色悪い髪の奴を俺の子と認めるか!」


そう言いながらお父さんはお母さんを痛めつける。そして、怖くて蹲ってる私の所へ来て...


「起きろよ!」


ドカ!


「う...」


「いい御身分だな。ええ?今までグッスリ眠れて良かったなぁ?俺が毎日どんな気分で過ごしているかも知らずに!」


助けて。


来るはずも無い誰かに助けを求めた。


「どうしてお前はココにいるんだ?」


誰か助けて。



お母さんは地面にうつ伏せに倒れている。



そうか...そうだ、ここで私がいなくなれば...お母さんはもうこれ以上傷つかなくてすむかもしれない。



「お前なんか誰もイラナイんだ。解るか?お前は汚らしい他の奴の子なんだ。ゴミカスなんだよ!!」




そう言いながら殴ろうとするその男の拳を、何かが間に入り止めさせた。加奈の目の前に黄色い何かがいる。



「やりすぎだよ。」


「誰だお前は!!そこをどきやがれ!!」


「どかないよ。」


ニコリと笑うその黄色い髪の男の子。彼の金髪が美しく輝いている。


「いつも加奈を苛めて...おじさんも痛いんでしょ?」


「なんだ?何を言ってるんだ。」


そして今度は鋭い目をしてきた。


「自分の心の痛みを、彼女にまで与えるなんて...許さないよ?」


たったの十二くらいの子なのに。大の大人の男が気押されていた。


「おじさんも他の人に蔑まれてるってこと、僕知ってるんだ。」


「!」



思い出すは皆の言葉。


親からは絶望され


親戚やお隣からは酷く影で散々悪口や変な噂をながされ


会社ではつねに怒られ


友達には酷い扱いを受けてきた。



「おじさんのせいじゃないのに。でも、耐えられなくなって加奈や妻に八つ当たりするなんて、父親として失格だよ。」



そう言いながら黄色い子は加奈の側までいき、彼女を支えるように起き上がらせた。



「御免ね。遅くなって。大丈夫?」


彼女は驚いていたが、心配に顔を歪むこの少年を見て、なんだか無性に安心させたくなった。

彼のこんな顔、見たくない。


「うん。大丈夫。ありがとう。」


そう聞くと彼は安心し、笑顔になった。


「悪かった...」


加奈の父のその言葉で二人、そして後ろの母までも驚き彼を見る。


「俺は弱い人間だったんだな...許してくれるなんて思ってないけど...でも...」


するとこれまでになく笑顔になった黄色い子は嬉しそうに言った。


「変わろうと思う事が大事なんだ。そこからやり直すことが出来る。必要なのは切っ掛け。僕が加奈に助けられたようにね。」


「あなた...」


恵美めぐみ...今まですまなかった!お前を信じきれず、傷つけそして...加奈にまで手を上げた俺は...夫として、父として最悪だ...」


沈み込むその父を母が優しく抱きしめる。


「ううん、もういいのよ。私もアナタが辛い立場だった事に今まで気ずけないで...ごめんなさい。」



二人とも泣き崩れてしまった。

その二人を静かに見守っていた赤と黄色の子は家から少し離れる事にした。

これ以上あの場に居たらきっと駄目だろうと感じたからだ。

少し行くと公園に行き着き、そこのベンチに座ることにした。



「ねぇ、どうしてあそこまで私のために頑張ってくれたの?」



その言葉を聞き、彼は少し頬を赤く染め、恥ずかしそうに目をそらす。


無意識だろうが、なんかその行動がめちゃくちゃ可愛い。なんだこの可愛い生き物。



「君の事が...大好きだから!」



その時の笑顔はヒマワリのように可愛く、お日様のように温かい笑顔だった。

やばい、今の笑顔でクラッってきた。好きではなく、よりにもよって大好きときた。



「う、嬉しいよ...ありがとう...」



「加奈ちゃん、顔、赤いよ?」



「あ、あんたこそ赤いじゃない!!」



「そう?じゃあお揃いだ。君の綺麗な夕日色の髪と。」



気づけば周りは夕日で赤く染め上がっていた。出会った時と同じだ。



「私も大好きだよ。特にあなたのお日様のような笑顔。」



この二人の出会いを良く思わない赤いドレスの少女が、二人の笑顔を悔しそうに、悲しそうに見つめていたが...誰一人として気づく事はなかった。



「忘れてしまったのね...なら...壊すまでよ...」


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