第一話 忘れていた温もり。
第一話 忘れていた温もり。
時間は夕刻。空が赤に染まり、カラスが鳴き始める。バサバサとその空へ飛び立っていくのを一人見つめている少女がいた。
その姿は十二くらいの年で、その体には幾つもの傷跡が見えた。髪は真っ赤な赤い髪。目は虚ろになっていて裸足でペタペタと道路を歩く姿を見れば、何かしらの出来事が起こったと予測できる。
しかし、誰一人として気に留めるものはいない。
そして少女も気にせず歩いていく...いや、彼女にはもはやそんな感情も無いのだろう。ただ単に光の無い瞳でひたすら足を前へ出す行為を行なっているだけだ。
「どうしたの?」
ふと、何も聞こえなかったはずの世界に声が響き渡った。
「どこ行くの?」
少女は立ち止まる。ユックリと後ろを振り向けば、そこには同い年の男の子がいた。髪は金髪で目の色は清んだ茶色。
少年は優しく少女の手を掴むと笑顔で言った。
「僕とお話ししない?」
夕日は沈んでいく。
外は段々と夜を迎える準備をしている。
そんな時刻に話そうなどと無謀すぎる。
もうとっくに家へ帰っている時間ではないのだろうか。
「...どうして?」
重い口から出た言葉は少女の気持ちを含め少年への疑問。
「...家に帰って。私に構わないで。」
何も言えなく少しガッカリしている少年に彼女は優しく、そして悲しそうに言う。
そんな少女を見て少し微笑みながら少年は続けた。
「よかった。僕の事ちゃんと見えてるね。いつもこの道を通るでしょ?どうしたの?って聞いても振り向きもしなかったから、もしかしたら見えてないのかなって思ってたんだ。聞こえなかったら僕の声も聞いてないから、振り向くはずないし。」
いつも見てたのか?この少年は。
「どうして私に構うの?誰も気に留めない、ちっぽけな存在の私なのに...」
そんな言葉を言ってから彼女は俯いてしまう。
そうだ、最近じゃもう慣れていたのだ。
自分の小さな存在なんて無視する皆の態度なんか。
そして一人ぼっちなのも...なのに。
「私は悲しむ事や苦しむ事を止めた。だから、気に留めないで。私なんて最初から居なかったように無視すればいい。」
「そんな悲しい事、言わないで...」
見れば彼はその体を震わせながら大粒の涙を流していた。
「どうしてお前が...泣くの?」
少女は驚いていた。どうして彼が泣くのだろうか。
「だって...」
彼は静かに震える声で少女を見上げた。
「君が泣く事が出来ないから、僕が代わりに泣いてあげるの。」
そして涙を拭きながら握っていた手をもっと強く握り締め、強く真剣に真っ直ぐ見つめ返す。
「君が忘れてしまった事、僕が思い出してあげる。笑うことも、怒ることも、泣く事も...だから、君の背負ってる重たい物を、僕にも分けて。」
そう言いながら彼はそっと彼女を抱きしめた。
暖かい...
忘れてた温もりが、安心感がその少年にはあった。どこかで感じた事があるこの温もり。しかし、彼女は思い出せない。
どうしてこんなにも彼は優しくしてくれるのだろう...?
どうして赤の他人のために涙を流せるのだろう?
どうして私なんかのために...
「はな...して...」
少女は思い出したように、そして酷く重たそうに彼に言う。
「離してよ...私は...この世に生まれてこなければ良かった存在なの!」
ドン!
思いっ切り彼を押した。少しよろめいて、しかし、その場から動こうとしない彼を見て彼女は怒鳴りつけた。
「最初からいなければ...お母さんに苦しい思いをさせる事は無かった存在なの!私なんて...世界のゴミなのよ!!」
そうだ...私はゴミのように汚くなんの価値も無い。存在する事も許されない。
そんな自分だから感情も必要ない。
いつからだったか、それが解った時、自分は普通の人と過ごしてはいけない事を知った。
誰も信じちゃいけない。
触ってはいけない。
汚らわしい自分と交わってはいけない。
そうだ、自分は...
「人間で居ちゃいけない。」
だから―――...
「良いんだよ。君は君のままで。」
「!」
ふと耳に届いた暖かい声。見上げればそこには太陽のように笑う先ほどの少年...
「僕は知ってる。いつも君が苦しんでる事。その苦しみから解放しようと必死になってあがいた事。どれも失敗して諦めてしまった事...」
そっと彼女の両手を自分の手に乗せる。
「この手でいつも小さな命を救っていた事。本当は、誰より優しい人だって知ってるんだよ。」
辺りはすでに暗闇。街灯が彼らを照らす。
「だから、自分を嫌いにならないで。君は何も悪いことなんてしてないんだ。」
彼はそっと自分の手で彼女の濡れてしまった頬を拭いた。
「泣きたければ、泣いていいんだ。我慢してもいいけど...今は...泣いて良いんだよ...」
いつ自分は泣き始めたのだろう...もう泣かないと誓ったはずなのに。
「平気だ...から...」
もういい。これ以上私と関わるな。ろくなことが起きない。
そう言いたいのに喉からは泣き声しか出ない。いつの間にか自分は彼の腕の中で泣き崩れてしまった。
「どうして私なんだ。」
しばらく一通り泣いた後、彼女は少年から離れながら聞いた。
「僕の事を救ってくれたのは君なんだよ?」
「...え?」
いつの間にか少年の目は黄金に輝いていた。
「だから、ずっと守ってあげるって約束したじゃない。」
「お前と私はどこかで会ってるの...?」
「そうだよ。忘れたのはしょうがないことだけど...でも。」
そう言いながら少年はまた彼女を自分へと引き寄せそして強くその幼い腕で抱きしめる。
「それでも君を必ず救ってみせる。」
その言葉を聞いた途端に少女は眠気に襲われた。
「僕を信じて。そうしたら加奈ちゃんにはもう、辛い思いさせない。」
どうして自分の名前を知ってるのだろうか。
「だから、今は安らかに眠ってて。」
彼がそういい終えると、少女加奈は自分の意識を夢へと飛ばした。
う~ん...やっぱ恋愛系はうまく書けないな~...
秀「そうか?」
って!なんで君が、まったく関係ないこの小説の後書きに出てくんの?!
秀「だってよ、作者が次の話書かないから暇でしょうがなくって。」
それで出てくんのかよ!!
秀「でもさ、これベタすぎね?有りがちで無いような...」
...うう。
秀「若干不思議入れようとして失敗してるしな!苦手なら書くなよ。恋愛小説。」
しかたなかったんだよ!!だってさ、書いている内に何故かそれっぽいお話になっちゃったんだもんさ!!
秀「...ああ、もういいよ。それじゃあな」
しくしく...なんだよもう。『俺の今日』書けてないからって八つ当たりしにきて!!
まあ、もういいや。それでは皆さん!
またね~!