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もしかすると喜ぶべき事
そこでは“次”が決まっていた。
次にすべき事、次の目標、次の夢。
何も迷うことなく進んでいった。
疑問を抱くという事は決定事項になかったので、仕草一つ迷う事は無かった。
そもそも考えるという事も決定事項には無かったのだ。
必要なのは理解し、遂行する事だった。
ある種美しいとも言える程に、全てが理路整然としていた。
遠くからそれを眺めていた黒い馬と白い馬は、何時までも崩れることなく続くその均衡に飽きて立ち上がった。
そうして黒い馬は嘲笑するように一声いななき、白い馬は悲しそうに一声いなないた。
それから連れ立って走り去った。
しかしその声は、人々の耳に届いてしまった。
決定事項にないその音に、怖くなり震える者もいた。
眼中にないように仕事を続ける者もいた。
武器を取った者もいた。
悲しい程に綺麗だったそこは、混沌と化した。
誰もが、たかが馬のいななきに狂わされていた。
ただ一人。
栗色の目をした少女だけが、この状況を悲しんでいた。
彼女は一粒涙をこぼすと淡い桜色の霞となって消えた。
それを見て青い鳥が一際高くさえずった。




