7.緊急事態法施行…
その事が全国的な話題になるまでそんなに時間はかからなかった。
「ニュースの時間です。残念なニュースが入ってきました。軍国主義の再来とも言える緊急事態法が成立してしまいました。永田町の伊藤さん?」
「はい。伊藤です。強行ともいえる決議で成立した緊急事態法ですが、棄権や反対した議員は一人もいないとの事です。この回りには、平和団体の一行が反対コールを起こしています。」
「緊急事態法は憲法違反だ!」
一緒に戦況をいままで隠していたメディアさえも一斉に内閣をバッシングする。それは、いつの時代も同じのようだった。まるで、自分たちも被害者のような書き方。総理はそれになれているようだったけど、僕には相当理不尽な話に見えた。
たしかに僕と約束した時から、もう解っていた事。でも、総理は、僕との約束を破れなかった。自分の下手な意地みたいなものも含めて、「法律」という形で公開した。「私ができるのは、これだけしかないんだ。」といわんばかりに...。
緊急事態法は、僕…つまりは「秋人」一人に対して召集を促す法律。だからこそ、余計反対は大きい。ただ一つ言えることは、あの大国Aですら、賛成していた。誰一人ももう、後戻りはできなくなっていた。
「本当にこれでよかったのか?秋人くん。」
「これで…いいんです。悪い方向にいったら、多分世論が止めてくれるだろうから…いいんです…」
覚悟しているつもりだった。でも、僕の目からなにか滴のようなものがこぼれていた。たぶん…ナミダ…
「私も、死ねませんから。…それよりも…死にたくありませんから。」
正直な気持ち…いくら五泉総理の前でも、そればかりは嘘をつけない。本当に。
「死なせないさ。…私の命にかけても…。君への最初の指令は…生きて帰ってくる事だ。」
五泉総理は、少し涙目で言っていた。ナミダすらも道具として使われ大人の世界。でも、大丈夫だろう。この人を信じても。たぶん。…きっと…。