2.夢?現実?…夢であってほしい……
―地球外生命体SR9781により、地球侵略。日本政府自衛隊の増強図る(特殊戦闘部門の発足か?)
2月15日、バレンタインデーの翌日から、こんな記事をみるとは本当に、思ってもいなかった。生まれてからずっと、戦争というものを体感していなかった。
僕だからというのもある。けど、それでもなにかしっくり来ない。あれだけ平和憲法を誇りにしていたこの国が…だからだ。
困りきっている僕に対して、母は落ち着いている。ひょっとすると冷静を装っているだけなのかもしれないが、今の僕にとっては信じられないほど、普段どおりの母なのだ。
―そうだ。きっとこの辺で母が私を起こす声が聞えるだろう。
そう思ってぽっぺたをおもいきりひねってみる。痛かった。まぎれもない現実だ……。その言葉を聞いてか、聞かずか普段どおりの母はぼっそりとつぶやく。
「なるようにしか、ならないわよ…」
とは言っても、時間は普通に進む。そろそろ学校に行かなければ遅刻する。慌てて家から駆け出した。
当然ながら、通学中は、その話でもちきりだった。
「あのアニメみたいに、だれかが、戦士に任命されたりして。」
とか……。呑気なものである。もちろん僕も例外ではないのだけど。
「アメリカが動く訳でもなく、日本が動くとすればひょっとしてロボットとか隠し持ってないかな。」とか、。「ひょっとするとロボットですらないかもしれない。あのアニメのように…」とか。そういや、あれは司令官の息子が呼び出されて半ば強制的に乗せられてたっけ。
(実感が全くないよ。平和ボケって言われる理由かもしれないけど。まあ、どちらにせよ、僕には関係ない事だよね。たぶん。)
変に妄想をしながら歩いていた。実際、妄想である。戦争ですらテレビを通してしか見たことがないし、それがつくりものか現実なのかを聞かれると、正直それに答える自信がないからだ。
そのせいかもしれない。直前まで僕はまったく気がつかなかったが、あとから考えると、その時から背後には誰かいたらしい。その次の瞬間、意識を失った。
気がつくと、僕はなにかの上で寝ていた。ベット…なのだが、どちらかと言えば固めの椅子のような素材のなにか。そのヨコでは数人の男達がなにやら相談をしているようだ。僕は慌てて気絶しているふりをする。
「事前資料通りです。彼の一部かと思うくらい波長が一致します。たのサンプルのデータとは比べ物にならないくらい、ぴったりです。ただ、拉致に近い状態で連れてきちゃった訳ですし、納得しますかねぇ」
白衣を着た男がモニタに表示されている波形を見て興奮しながら質問をする。それに対して、…たぶん、ボスだと思うのだけど、スーツを着た男が壁の方を見ながら答える。
「無理を承知で、彼に頼み込むしかなかろう。地球は宇宙の塵と化してしまうのを防ぐ方法はそれしかなんだから。…ただ、万が一の覚悟はしとけ。」
目の前で起こる信じられない出来事。しかも、それが僕自身に向けられている。
もちろん夢であって欲しかった。もし、現実だったら…そう考えると、気を失ったふりを続けるのは無理だった。
「うそだろ!なんでだよ!早くうちにに返せ!」
まわりは、いっせい、僕の方に向いた。