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日本発・異世界ゲートVlog ―数年前に異世界ゲートが出現したので、一般人が許可証を取って旅してみる話―  作者: mii


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第5話 魔法都市2日目 楽しい箒体験…のはずが!


「皆さん、こんにちはー!

今日はアルカニア滞在二日目の朝からスタートです。

今いるのは、魔法都市の宿の一室です。」


先程、宿の朝ごはんを食べてきたんですが動画を撮るの忘れたので軽く説明します。


テーブルの上には、白い皿と銀色のカトラリー。

注文を終えて、気づいたら…料理が揃っていた。


運ぶ人影は見えなくて、まさに魔法って感じ。

初見だとちょっとホラーだけど、ここではこれが普通らしい。


注文したのは、色がカラフルに変わる飲み物と卵料理(何の卵かは不明)にパンみたいな食べ物。


異世界人向けの味付けになっているみたいで、見た目はちょっと…奇抜だったけど、めちゃくちゃ美味しかったです。


映像に残したかった…本当にごめん。


気を取り直して部屋の中を、撮っていきます。


「昨日の夜は気づかなかったけど、壁にかかっているランプの炎?ガラスの中で小さな火の玉が浮いていて、燃えるものがなくてもずっと燃えています。」


「天井には、魔法陣みたいな模様が薄く描かれていて、装飾なのか機能なのかは分からないけど、夜に見上げると、線がほんの少しだけ光っていました。」


窓の外には、塔と煙突と、細い路地。


「箒に乗った人が、何人か飛んでるのが見えます。

出勤中なのか、移動手段として使っているっぽい。」


「今日はこの後、この箒に乗れる体験に行きます!」


というわけで、簡単に支度をして外に出ます。


今日のメインイベントは「箒体験コース」。

もちろん観光客向けなので、高く飛びすぎないように安全装置付き。


……のはずなんだけど、これを見てくれている人はお察しの通り、それはまた動画の後半でお話しします。


服装は、動きやすい普段着にしました。


ローブを貸し出してくれるプランもあったけど、飛ぶ前にローブの裾を踏みそうなので、今回はやめておいた。


箒体験の受付は、城壁近くの広場にあります。

昨日の魔法体験ホールとは、逆方向です。


道の横を、小さな魔導車みたいなものが通っていきました。

車輪はあるけど、地面との間に僅かな隙間があって、

音もほとんどしません。


「これも魔法で動かしてるんですねぇ」


しばらく歩いていくと、城壁が近づいてきました。

灰色の石が積み上げられた壁は、下から見上げると首が痛くなります。


「ん?何か落ちてる。」


石畳の隙間にはまるようにして、銀色の鎖が光っている。


「…ペンダントだな。」


鎖の先に、小さな黒い石がついている。

石というより、艶のあるガラスみたいな質感。


「よく見ると、黒い石の中に、猫の形をした影みたいなものが見えます。んーどうしよう。」


ここは、観光客も多いし大切な物かもしれないので、このままにしておけず悩みました。


「あっ城門の前に魔法使いが見えます!多分、ここの門番だと思います!」


明らかに「この世界の人」って感じの雰囲気で助かったと思ったんですけど…。


…まぁ、続きをご覧ください。


「すみません、これ、そこに落ちてたんですけど——」


門番の人はちらっとペンダントを見てから、調べてくれます。

何か呪文を唱えているみたいですが、小さくて聞き取れませんでした。


そのまま受け取ってくれるかと思ったんですが…。


「お返しします。」


「…え?」


ペンダントを返されてしまいました。


「あの、これ落とし物、だと思うんですけど」


「それは、もうあなたの物です」


「…????

いやっ!違います!そこで拾ったんです!」


意味が分からず、声が大きくなってしまいました。


「ペンダントが、あなたを選びました。

 持ち主として、もう結びついてしまっています。

 無理に手放そうとすると、厄介なことになりますよ」


はっ?…怖い。


さらっと怖いことを言われて、この時は拾ってしまった事を後悔しました。


「な、なんで俺なんですか」


「選ばれた、ということです」


編集するまで気が付きませんでしたが、

俺の口、ずっと開いてますね。

絵に書いたようなポカン顔です。


「心配であれば、ゲートの受付で相談してみるといいでしょう。

 管理局と連携して処理されることもあります」


……はい。


とりあえず…言われた通り、帰りに受付の人に相談する事に決めました。


よく分からないペンダントをポケットにしまいながら歩き始めます。


今考えると…ここまでで、すでにおかしな事が起こってるんだけど、この後に遭遇する出来事は、まったく予測すら出来なかったです。


城壁近くの広場には、「箒体験コース」と書かれた看板が出ています。


翻訳表示でそう見えているだけで、本当は別の文字なんだろうけど、とにかく分かりやすい。


広場の端には、短めの箒が何本も並んでいました。

柄の部分が太くて、座りやすいような形になっています。


「受付を済ませました!昨日と同様、めっちゃくちゃ楽しみでワクワクしているんですけど、空中を飛ぶわけですから…やっぱり緊張します!体験中の動画撮影もOKと言うことです。注意事項なども載せておきますので参考にして下さい。では!撮っていきます!」


・このコースで使う箒は、一定以上の高さには上昇できないように制限がかかっていること。

・落下防止の魔法が組み込まれていること。

・急な操作をするとバランスを崩すので、ゆっくり動かすこと。

安全第一です、って何度も言われました。


ヘルメットと簡易プロテクターをつけて、指定された箒にまたがります。


ここからヘルメットに取り付けたカメラの視点になるので画面が少し揺れます。


地面に対して少し斜めに置かれた箒は、不思議なことに、誰も支えていないのに倒れない。


「では、合図で、柄を軽く握ったまま“浮け”と念じてみてください。声に出さなくても大丈夫です」


柄を握る手に、力が入っていますねー。


「 浮け!」


本当に浮きました。


高さは、膝ぐらいでしょうか。


座れる部分が小さいせいか、姿勢の問題なのか、バランスを取るのがクソ難しかったです。


他の参加者たちも、それぞれの箒で浮き上がっていくのが見えます。


参加者の子どもたちの歓声が、あちこちから聞こえてきました。自分も大きな声で感動したかったけど、大人なフリをして我慢しています。


最初は、指示に従って場内をゆっくり周回。

係の人が前を飛び、その後ろを列になってついてい来ます。


曲がろうとすると、ひっくり返りそうになる。

自転車なんかより、もっと神経を使います。


慣れてくると、箒の動きが素直に感じました。


前に進め、と思うと少しずつ進み、止まれと思うと速度が落ちるみたいです。

ただ俺は、ずっと声に出していました。


ブレーキが急にかからないのが、逆に安心する。


「おっ自由時間みたいです。体験会場内なら自由に飛べるらしい。もう少し高度を上げてみたいと思います。」


地面が遠くなるというほどではないけど、足元がふわふわします。


「今は、人間の肩くらいの高さでしょうか。少し高度を上げるだけで、ちょっと怖いです。最初の説明によると、高さの制御はもう少し上の方なんですが、俺はここら辺でちょうど良いかな…!

……っえ…? ちょちょちょ…」



——ここで、ちょっとカメラ越しの皆さんに注意。

この先、少しだけショッキングな映像が入ります。

高い場所や、落ちる感覚が苦手な人は、必要に応じて飛ばしてください。



自分の中で「上がれ」と思った覚えはないのに、箒が、すっと高度を上げます。


最初は、自分が無意識に考えちゃったのかと思っていました。


「下がれ!…下がれ!…っく、止まれ!下がれって!っもう!」


眼下の地面が、みるみる小さくなっていきます。


本当に怖かったです。

この時の俺は、ただただ何とか高度を下げようと、箒から落ちないように必死でした。


係の人が何か叫んでいるのが聞こえますけど、風と距離でよく聞こえません。


「言うこと聞け!下がれって!…お願い。」


その時でした。


ポケットの中で、何かが熱くなる。

さっき入れた、ペンダントです。

布越しでも分かるぐらいの熱でした。


反射的に手をポケットに当てると、そこからまばゆい光が漏れています。


次の瞬間、


半透明の黒猫が、そこにいた。


大きさは、普通の猫と同じぐらいです。


輪郭が少しだけ揺らいでいて、向こう側が透けて見えています。


「にゃー」


妙にのんびりした鳴き声。

状況とのギャップがひどい。


黒猫はひらりと身をひねると、俺が乗っている箒の先端に、ちょこんと座りました。


その瞬間、風の音が止まり

さっきまで上昇していた箒の勢いが、ふっと抜けました。


ゆっくりとした下降が始まります。


俺は、箒にしがみつきながら呆然としていますね。

この時の出来事は、一生忘れないと思います。


黒猫は、箒の先で尻尾を揺らしながら、特に何をするでもなく座っているだけに見えるのに、確実に地面が近付いているのがわかります。


箒が地表から少し浮いた位置で一度ふわりと止まり、足が付くとそのまま、地面に倒れ込みました。


あっ怪我とかじゃなくて、腰が抜けてしまい…。


黒猫は、いつの間にか消えています。

ペンダントは、ポケットの中にちゃんとありました。


係の人たちが駆け寄って来て。

スタッフ同士が、早口で何か話しています。


…と、ここで動画は終了です。


この動画を投稿する少し前に、ネットニュースになっていました。当日、アルカニアのあちこちで似たような事故が起こっていたらしいです。


昨日行った魔法体験ホールのほうでも、体験用の魔道具が一時的に制御不能になったとか。

魔法動物園でも、一部の保護エリアで、生き物たちが一斉に落ち着きを失ったとか。


幸い、俺のところでは大事故にはならず、怪我もしていません。


でも、他の場所では、転倒して怪我をした人が出たり、軽い火傷を負った人もいたそうだ。


ニュースでは、「異世界反対派」を名乗る一部の魔法使いたちが、

観光客向けの魔道具や施設に干渉して妨害行為をしていた——と報じられていました。


その影響で、動画の撮影は続行出来ず、異世界人は皆、強制送還。


安全が確認できるまでゲートは封鎖されるみたいです。解放されてもゲートランクを1つ上げるらしい。


向こうのお偉いさん達は異世界交流を続けたいらしく…まぁ多分、お金のため。

だから、またすぐ解放されるんだろうけどゲートランクが1つ上がるだけで、観光客は激減するだろう。


箒体験の動画は、編集しながら何度も手が止まりました。

正直、本当に迷ったけど

「異世界が今どうなっているか」の一部だから、隠さずに出すことにしました。


見てくれてありがとう。


もう少し落ち着いたら、近況報告でまたライブします!

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