第2話 天空の宿泊施設に泊まってみた
録画、回しました。
「どうも、サクです。
保護施設のあと、そのまま帰るのはもったいないってことで――今日は、天界圏の宿に一泊しまーす。」
まずは、ルームツアーから。
「こちらが今日、泊まる部屋になります。では、さっそく入ってみますよー。」
ドアがすごく軽い。金属のように見えるが…取っ手が固くないし、冷たくもない。
開けた瞬間、空気がふわっと変わりました。
匂いが…薄い花?みたいな。
強くないのに、ずっと残る感じ。
床が白い。
石みたいだけど、硬い音がしない。
歩くと、足裏が少し沈む。
沈むっていうか、受け止められてる…。
部屋全体が静かで、壁も天井も、角がない。丸い。
そして窓が大きい。
というか、窓というより切り取られた空を見ているような感覚です。
「ガラスがあるのか無いのかさえ分からないです。目がおかしくなりそうだ。」
近づくと、外の風景がやたら鮮明で、逆に現実味が薄い。夢の中にいるような感じがします。
「外を見て下さい。
雲の層が、下にあるんですよ。
あれがたぶん、この世界の地形なんですね。
白い地面が、ゆっくり流れてるみたいに見えます。」
空が青いのに、眩しすぎないのも不思議。
「窓の近くにあるのがベッドです。
これ、ベッドって言っていいのかな。
白い台の上に、薄い羽みたいな布が重なっています。触ると…うわぁ、ふわふわだ。」
寝たら絶対起きられない。
机はある。椅子もある。
ただ、全部軽いし。丸い。
次は、これ。
「部屋の隅に、水盤みたいな丸い器があります。」
蛇口は見当たらないのに、水面だけが静かに揺れています。
飲めるのかは怖いからやめとく。
なので顔を洗ってみました。
肌がすっと軽くなるような…気がする。
「……はい、これでルームツアー終わりです。」
◆
少し部屋でくつろいだ後です。今、外を歩いています。
ターミナル周辺より、こっちのほうが「街」だ。
道は白い石で、段差が少ない。
屋台みたいなものが並んでるけど、匂いがやたら上品です。
甘いのに、重くない。
「結構、人?も多いですねー。」
羽のある存在が普通に歩いてるし、羽がなくても雰囲気が天使っぽい人がいます。
「ここは、ショップかな?服が売ってようです。少し入ってみよう。」
布が…薄い。
光が透けています。
そしてとても柔らかいような…。
記念にひとつ購入します。絶対に着ないけど。
店内は…装飾があるんだけど、派手じゃない。
線が細いっていうのかな。
さて、街の散策を続けます。
時々、誰かとすれ違うたびに、風鈴みたいな音がどこかで鳴ったりします。
何が鳴ってるのか分からないけど、耳に刺さらない。
「あっ道の端に、水が流れてますね。」
川というより、細い水路のようです。
底が見えるくらい澄んでるのに、反射が少ない。
覗き込んだ自分の顔が、ちょっとだけかっこよく見える。
…多分、光のせい。
しばらく歩くと、広場が見えてきました。
白い柱が輪になって立ってて、真ん中に木が一本あります。
「葉が、薄い金色だぁ。」
風が吹くと、シャラって音がします。葉っぱが金属みたいに鳴るのに、硬さは感じない。不思議だ。
観光客っぽい人も普通にいる。
日本語じゃない言語もあちこちで聞こえる。きっと地球側の別の国だろうな。
みんな同じ感じで空を見上げています。
それだけで、ここが「来たくなる場所」だって分かる。
……さて。
今日の目的は飯です!
ここに、オススメのレストランがあるんです。
"人間でも食べられるメニュー"があるところ。
「あ、見えてきました。」
外観はよくあるカフェみたいです。
白い壁に、薄い金色の看板。文字が読めないのに、意味だけ分かる感じがして、…ちょっと怖い。
「お腹がすいたので、さっそく中に入ります。」
空気が甘い。
甘いっていうか、温かい?
音が吸われてるみたいで、人の話し声が柔らかく聞こえます。
席に案内されました。
椅子が軽い。座ると、体が沈むのに、姿勢は何故か楽。
テーブルの表面が、つるっとしてるのに固くないです。初めての感触。
メニューが置いてあります。
ちゃんと「地球人向け」って欄がある。ありがたいですね。
怖いので注文は、無難にしたいです。
おそらく…パン系と、スープ系と、飲み物を注文したはず。
最初に来たのが、飲み物です。
透明に近いのに、光が入ってるみたいに見えます。
本当に飲んで大丈夫なんだろうか。
ドキドキしながら口に含むと、味が「薄い甘さ」。
でも、後味が消えるのが早い。
言葉にするのが難しいですが とにかく口の中が、すっと整う感じでした。
感動していると、料理が運ばれてきました。
見た目は普通のパンに見えますが…
真っ白で、焼き色がない。
でも触ると、外はほんの少しだけ弾力があって、中はふわふわしています。
噛むと、音がなく。
味は、塩気がほぼないのに、なんだこれ。
満足感がとてつもなくある。
甘さもなく、穀物の香りだけが残る感じ。軽いのに腹が落ち着く。これ、すごい。
「味がほとんどしないのに、なんでこんなに美味しいんだ…?」
次はスープです。
器が薄く。
湯気が出ているのに持つと、熱くない。
中身は淡い金色で、表面に光の膜みたいなものが揺れてる。
匂いは…
花?柑橘かな。
あと、雨上がりの空気みたいな。
口に入れるのに1番勇気が必要でした。
これも味が……説明が難しい。
しょっぱくない、甘くない、でも「うまい」。
舌より先に、喉が納得する感じです。
何言ってんだ俺
食べ進めるうちに、体が軽くなる気がします。
錯覚かもしれないけど。
周りを見ると、羽のある客が同じものを食べてるわけじゃない。
もっと色の濃い料理もあるし香りが違う。
あれは多分、地球人には無理なやつだ。
皿が空になって、上を見ると夕方っぽい色になってる。
でも、太陽が見えない。どこが夕方なのか分からないのに、空気がそう言ってるんだよね。
支払いは専用のカードで行います。
皆さんも異世界に来る際には、カードの登録を忘れないように注意して下さいね!
「とても満足しました。じゃあ、宿まで帰りますか」
今回、天界を歩いて思ったのは、ここは「清潔」って言葉じゃ足りないってこと。
汚れがないんじゃなくて、最初から余計なものが置かれてない。
音も匂いも、刺さらない。そして全部が軽い。
その分、長くいると現実が恋しくなる気もする。
コンビニの蛍光灯とか、夜の湿った風とか、そういう「重さ」。
ここは優しすぎて、逆に自分が薄くなったみたいに感じる瞬間がある。
……でも、旅行としては最高です。
「今日はこのへんで終わります。
明日は現実世界に帰ります。
たぶん、戻った瞬間に「あ、重っ」って言うと思う。
じゃ、ご視聴ありがとうございました。またね。」




