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コルク栓を抜いたら異世界に飛ばされそして謎に日本語と英語で会話してる異世界で生きる俺って一体  作者: みなと劉


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第十六話 知識の衝突と座標固定液の真実

王立図書館の静寂な通路に、緊張が張り詰めていた。

 レンシオの短剣の刃先は、アリスの首筋にわずかに触れている。一歩でも動けば、取り返しのつかない事態になるのは明白だった。

「オービーエス? 知らねぇネ、そんな街。コールド・ガールが考えたフェイクだろ」

 レンシオは鋭い笑顔を保ったまま、短剣の圧力をわずかに強めた。アリスは痛みに顔を歪める。

「レンシオ、嘘じゃない。これは、姉が残した新しいメモだ」

 俺は、先ほど回収したばかりの羊皮紙の束をレンシオに向かって投げた。

「読め! 座標固定液は、王都じゃ使えない。行き先は、イーフォン国境を越えた先、技術研究都市オービーエスだ!」

 レンシオは警戒しながらも、飛んできたメモの束を受け取り、走り書きの羊皮紙に目を通した。彼の表情が、一瞬で硬直する。

「……OBSオービーエス? マジかヨ。なんでここに、こんな情報が……」

 彼の目には、焦りと、情報が錯綜したことへの動揺が明確に見て取れた。

「王族が欲しがっているのは、あなたの持つ『座標固定液コーディネート・フィクサー』だけじゃない」

 アリスが、レンシオの短剣の切っ先に耐えながら、低い声で言った。

「彼らは、姉が残したすべてのメモを回収し、転移の原理を完全に解明しようとしている。王都にいるのは、姉のメモの一部に過ぎないわ!」

 レンシオはメモから顔を上げ、俺とアリスを交互に睨んだ。彼の脳内でも、この新しい情報と、王族から与えられた指令が衝突しているのがわかる。

知識の衝突

 俺は、この瞬間が最大のチャンスだと直感した。

 **【知識統合】**を最大に起動。銀の杖を静かに右手に握り、レンシオの短剣から発せられる青いエネルギーの波形を、脳内で解析する。

処理結果:

* レンシオの短剣: マナではなく、**転移者と同じ系のエネルギー(高密度)**を使用。

* レンシオの身体: 獣人族特有の筋力(STR)の高さ。敏捷(AGI)は俺の2倍以上。

* 状況: アリスは人質。真正面からの戦闘は不可能。

 俺の知力(INT)は10。筋力(STR)は5。勝てる要素は、**『情報の優位性』と『マナ兵器へのカウンター』**だけだ。

「レンシオさん。あなたの持っているその短剣、**『銀の杖の簡易版』**ですね」

 俺は敢えて、ピュア・ジャパンで冷静に言い放った。

「あなたが、短剣に自分のエネルギーを流し込み、特定の対象のマナ制御を破壊する対マナ武装だ。王族が、転移者の技術を解析して作り出した、マナ・ハンター用の武器だ」

 レンシオは完全に動揺した。その表情は、俺の推測が図星だと物語っている。

「ナ、ナニを言ってんだヨ!」

「俺は、あなたの短剣のエネルギー波形を読んでいる。あなたの目的は、銀の杖と座標固定液の回収。特に座標固定液は、この世界のマナ・コアを一時的に崩壊させる可能性がある。だからこそ、王族はそれを恐れている」

 俺は、レンシオの注意が完全に俺の言葉に集中している一瞬を逃さなかった。

 銀の杖をレンシオの短剣に向けて構え、**『ノイズ(妨害電波)』の知識ではなく、元の世界の『周波数同調シンクロナイゼーション』**の概念を流し込んだ。

 ビリビリビリ!

 銀の杖が強烈に振動し、レンシオの短剣が発していた青い光が、瞬時に消滅した。

「ウワッ!」

 レンシオは短剣から手を放し、熱くなった柄から手を引いた。マナが消えた短剣は、ただの金属片に戻った。

 アリスはその隙を逃さず、レンシオの拘束から脱け出す。

「ユウ、今よ!」

逃走ルート

 レンシオが態勢を立て直す前に、アリスは俺の手を取り、図書館の奥の通路へ走り出した。

「さすがユウ! 短剣を無効化するなんて!」

「体力は『5』まで回復したけど、杖の反動でまた消耗する。急がないと!」

 俺たちは、図書館の奥の、書庫へと続く小さな扉をくぐった。

「この先は、王族の個人書庫よ。古いマナ・ロードが通っている。王都の地下全体に張り巡らされている緊急輸送路があるはず」

 書庫には、埃をかぶった羊皮紙の巻物が天井まで積まれている。

 背後から、レンシオの地を這うような怒声が響く。

「待てヨ、イセカイ・マジシャン! 逃がすか!」

 彼は武器を失ったが、獣人族としての身体能力は健在だ。階段を駆け上がってくる足音が近づいてくる。

「ユウ! 知識統合で、輸送路を探して!」

 俺は、通路の床に張り巡らされたマナの波形を可視化する。図書館の静かなマナの流れの中で、一つだけ、一定のリズムで流れる、太い青い線を見つけた。

「ここだ! 書架の裏!」

 俺たちは、大量の巻物が積まれた書架を押し倒し、その下にある隠された金属製のハッチを発見した。

「開けて! マナ制御じゃないはず!」

「王族の緊急輸送路だ。暗号があるはず!」

 ハッチの横のパネルには、キーボードのようなボタンが並んでいた。

 **【知識統合】**が再び起動する。

(緊急輸送路……緊急時。最も速く、かつ権威を示す暗号……)

 閃いた。

「豊臣重信の紙幣に刻まれていた数字だ! 建国年号と、王族の紋章のコード!」

 俺は、王立図書館に入るために使った年号とは異なる、豊臣重信の紙幣に刻まれていた四桁の数字を、アリスに指示した。

 プッ、ピーー!

 ハッチが軽い音を立てて開いた。その下には、人が一人入れるほどの垂直なシャフトが伸びていた。

「飛び降りて! 王都を出るまで、これが最速ルートよ!」

 レンシオの姿が書庫の入口に見えた。彼は、短剣の代わりに、床に落ちていた金属パイプを掴んでいる。

「待てェ!」

 アリスが先にシャフトに飛び降り、俺も躊躇なくその後に続いた。

 ハッチが、頭上で再び閉まる音を聞いた。

 シャフトを滑り降りながら、俺はアリスの姉のメモを強く握りしめた。

(オービーエス……。俺は今、オムネット王族が最も警戒する場所へ向かおうとしている。)

 王都の地下を滑り落ちていく俺たちの前には、暗く、そして高速で進む輸送路が、夜明けの光を遮っていた。

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