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コルク栓を抜いたら異世界に飛ばされそして謎に日本語と英語で会話してる異世界で生きる俺って一体  作者: みなと劉


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第十五話 王城への潜入とオービーエス


 王都に入ってから、アリスの行動はさらに周到になった。

 彼女はマナの光で描かれた道路のパターンを熟知しており、我々は常に人通りの少ない裏通りや、物資搬入口の影を選んで進んだ。

 俺は、銀の杖をリュックの奥に隠したまま、青いカードの【知識統合】を常に起動させていた。アリスの解説と、周囲のマナの流れ、そして衛兵の交代時間を照合し、彼女の指示が正しいかどうかを内面で検証する。そのおかげで、俺の行動もより迅速かつ正確になっていた。

 夜明けを完全に迎え、王都は本格的な一日の始まりを迎えていた。

 道行く人々の多くは、清潔なローブや、マナを帯びた装甲服を身につけている。彼らは皆、堂々としており、南シティの住人とは明確に異なる階級社会を感じさせた。

王城への侵入

 王城の周囲は、最も厳重な警戒区域だった。

 アリスが目指したのは、巨大な城壁の北側にある、廃棄物処理用のハッチだった。

「王城は外見は石造りだが、内部は複雑なマナ・パイプで構成されている。この廃棄物処理路は、王城地下へつながる最も目立たないルートよ」

 処理路の入口は、数時間ごとに開閉する分厚い金属製のシャッターで守られている。

「シャッターが開くのは、あと五分。衛兵の巡回ルートとタイミングを合わせる必要がある」

 アリスが金属製の装置を取り出し、シャッターの横にあるパネルに近づけた。それは、昨日の偽装装置とは別の、**通信傍受用スニッフィング**のデバイスだった。

 俺の脳内でも、**【知識統合】**が処理を始める。

 衛兵の交代時間、シャッターのマナ流量、風向き……

「アリス。シャッターが開いた直後、衛兵が『西側壁の異常』を報告する。その報告の波形と、この装置の出力波形を三秒間だけ重ね合わせれば、衛兵の検知器は『バグ』と認識し、異常を無視するはず」

 俺の提案に、アリスは驚きながらも、すぐにその精度を理解した。

「流石ね。私の姉のメモには、衛兵の報告を『書き換える』なんて発想はなかったわ。やってみて」

 俺は銀の杖をリュックから取り出し、アリスの通信傍受デバイスのアンテナに軽く触れさせた。そして、**『知識統合』**の力で、衛兵の報告の波形を正確に再現し、それをノイズとしてマナに流し込む。

 ジーッ……

 シャッターが開き始めると同時に、衛兵のマナ検知器が「異常」を示す赤ランプを点滅させた。

「どうした!」

 しかし、その赤ランプは一瞬で消え、検知器は緑に戻った。

「なんだ、ただのシステムノイズか。最近、この辺りのマナ制御が不安定だな」

 衛兵は首を傾げ、再び巡回を続けた。

「今よ!」

 俺とアリスは、開いたシャッターの隙間から、廃棄物が排出される前に、王城の暗い地下へと滑り込んだ。

王立図書館の暗号

 王城の地下は、マナ制御システムが集中する**中枢コア**だった。

 廃棄物処理路を抜けた先は、円形に広がる通路。壁には、鮮やかな青い光を放つマナ・パイプが縦横無尽に張り巡らされている。

「ここから王立図書館へは、階段を下りて三階層。エレベーターは使えない。マナ反応が強すぎる」

 アリスは、再びランタンを灯した。

「図書館には、姉のメモのほかに、オムネット王国の真の歴史に関する書物もあるはず。元の世界へ戻る手がかりは、単なるアイテムだけじゃない。この世界の**『真実』**にあると、姉は信じていた」

 階段を下りながら、アリスは壁に刻まれた紋様を指差した。

「この紋様……王族の守護魔法よ。図書館の扉は、強力なパズル形式の封印で守られている。マナを流すだけでは開かない」

 俺は、杖を使いマナの流れを可視化し、その紋様を見た。

 紋様は、幾何学的な図形と、この世界にはない古代文字のようにも見える記号で構成されていた。

「この文字は、オムネットの古語と、イーフォン語の技術用語が混ざっている。姉が言っていた、王国の歴史の**『異端』**を示しているのかもしれない」

 アリスは、紋様をスケッチした紙を取り出し、俺に渡した。

「解読はあなたの【知識統合】に頼るしかない。私は衛兵の巡回を警戒する。急いで」

 俺は壁に寄りかかり、青いカードを握り、目の前の暗号図形と、俺の脳内の知識を照合し始めた。

(古語、技術用語、幾何学……これは、暗号だ。元の世界のコンピューター科学の論理と、この世界の魔法陣の原理を組み合わせた……!)

 一分後、俺の脳内に、鮮明な答えが浮かび上がった。

「これは、マナを流す順番じゃない。この図形は、座標を示している。王都の地理的な座標と、王族の歴史上の特定の年号の組み合わせだ!」

「年号……! 姉のメモにあったわ! 豊臣重信がこの国を建国したとされる年号と、マナ制御技術が確立した年号……!」

 アリスは震える手で、俺が指摘した紋様の場所を、正確な順序で触れていった。

 キィイイイイン……

 図書館の巨大な石扉が、鈍い音を立てて開いた。内部からは、古い紙と、抑えられたマナの静けさが感じられた。

「やったわ! ユウ!」

 アリスは安堵の息を吐いた。

新たな場所『オービーエス』

 図書館の内部に潜入したアリスは、すぐに通路の奥にある小さな部屋を指差した。

「姉のメモは、そこにあるはず。私はここで衛兵を警戒するわ」

 俺は小さな部屋に駆け込み、古い木製の机の引き出しを開けた。そこには、予想通り、アリスの姉が残したと思われる、古びた羊皮紙の束が収められていた。

 その一番上に、走り書きのような文字で、新しいメモが追加されていた。

> ***『座標固定液は、王都のコアでは使用不可。目的地は、イーフォン国境を越えた先にある、技術研究都市。*オービーエス(OBS)へ向かえ』

>

 オービーエス。聞き慣れない都市名。

 そのメモを読み上げた瞬間、通路からアリスの短い悲鳴が聞こえた。

「ユウ! 逃げて! レンシオよ!」

 慌てて部屋から飛び出すと、アリスはすでにレンシオに組み伏せられていた。彼の短剣の切っ先が、アリスの首筋に突きつけられている。

「チェック・メイトだヨ、コールド・ガール。王都へのルート変更、見抜いてたネ」

 レンシオは、俺を見て鋭く笑った。

「ユウ。アイテムは素直に渡せ。そうすれば、二人とも命は助ける」

 レンシオは、俺のリュックを指差した。

 俺は、逃げ場のない状況で、王立図書館の静寂の中で、銀の杖を静かに握りしめた。

「レンシオさん。俺たちの目的地は、王都じゃない。オービーエスだ」

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