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コルク栓を抜いたら異世界に飛ばされそして謎に日本語と英語で会話してる異世界で生きる俺って一体  作者: みなと劉


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第十一話 魔道馬車と東門の異変

東門へ向かう道すがら、俺は宿に戻ってわずかな荷物をまとめた。着替え一式、財布、そして最重要の三点セット——青いカード、銀の杖、座標固定液の小瓶をリュックの奥深くへしまい込んだ。

 東門に近づくにつれ、街の喧騒は軍事的な活気に変わっていった。大きな石の門の前には、分厚い鎧を着た衛兵が立っており、物資を積み込んだ馬車や、装甲車のような妙な機械が列をなしている。

「オー、魔道馬車マナ・キャリッジはあそこだヨ!」

 ふと、背後から声をかけられた。振り返ると、レンシオがいた。彼はさっき別れたはずだ。

「レンシオさん? キノコ狩りに行ったんじゃ……」

「アフター・オール、ユアが心配だネ。それに、この時間帯はインフォーマーとして動かないとマズイヨ」

 レンシオはそう言って、周囲を警戒するような目つきで辺りを見渡した。

「ユアが乗るキャリッジは、奥のデカいヤツ。あれは王都直行。途中はノンストップ」

 レンシオが指差したのは、通常の馬車よりも二回りも大きく、車体全体が青い光を帯びた馬車だった。馬は繋がれておらず、代わりに車輪の周りで小さな魔法陣が回転している。これが、この世界の「魔道馬車」らしい。

「あれ、馬がいないんですね」

「オウ。アレはマナ駆動よ。普通の馬よりずっと速いし、ケモにも襲われにくい。ユアの搭乗券を見せれば大丈夫。この東門はセキュリティがベリー・タイトだからネ」

 俺はアリスから受け取った羊皮紙の搭乗券を握りしめ、魔道馬車に近づいた。

 門番を務める衛兵に搭乗券を見せると、衛兵は無言でそれを確認し、馬車の車体側面に開いた小さな扉を指差した。

「搭乗完了。さっさと中へ入れ」

 言葉はピュア・ジャパン。この街でも、権威のある者は英語混じりの言葉を使わないらしい。

 俺が扉を開けようとした、その時。

「ストーップ!」

 東門の広場全体に響き渡る、甲高い女性の声がした。

 衛兵も、物資を積んでいた作業員たちも、一斉に動きを止めて声の主を振り返る。

 声の主は、黒い制服姿のアリスだった。彼女は息を切らし、こちらへ走ってくる。

「アリスさん!?」

「ユウ、乗っちゃダメ! その魔道馬車は**危険デンジャー**よ!」

 アリスは俺の腕を掴み、強く引っ張った。

 衛兵が即座に反応した。

「民間人! 何をする! 許可なく輸送を妨害するな!」

 衛兵が長柄の槍を構える。

「許可? これは斡旋所が正式に発行した**緊急中断命令エマージェンシー・ハルト**よ!」

 アリスは懐から、もう一枚、今度は赤い紋様の入った羊皮紙を取り出し、衛兵の顔の前に突きつけた。

 衛兵は赤い羊皮紙を一目見て、顔色を変えた。

「こ、これは……王立斡旋所の特別指令!」

 その間に、レンシオが俺たちの横に駆け寄ってきた。

「コールド・ガール! 何してんだヨ! ユア、自分の斡旋したクエストをフリーズするなんて!」

「レンシオ! あなたが王族のインフォーマーだと知っているわ。この魔道馬車は、王都の諜報機関が仕掛けた**トラップ**よ!」

 アリスの言葉に、レンシオの顔から笑顔が消えた。

「ナニ言ってんだ! これは正規のルートだ!」

「正規のルート? 馬車は王都に着く前に、イーフォン国境近くの廃棄施設に向かうルートにすり替えられていたわ! あなたの仲間が仕組んだのよ!」

 アリスは俺を庇うように立ち、レンシオを睨みつける。

「王族は、ユウの身柄を保護するためではなく、あなたの持つ『異世界アイテム』を強制的に回収しようとしている! 私の姉が残したメモで、王族の連中は転移者の『銀の杖』が、彼らのマナ兵器を無効化できることに気づいたのよ!」

 その瞬間、俺は背筋に氷が走るのを感じた。

(マナ兵器を無効化……俺の知力と、銀の杖で!?)

 俺の心臓は激しく鼓動した。レンシオは、今や完全に敵対者の顔つきになっている。

「チッ……コールド・ガールめ! そこをどけ! ユウを渡せば、ユアの罪は問わない!」

 レンシオはリュックから、隠し持っていた短剣を取り出し、構えた。その刃先が、微かに青く光っている。

「レンシオ! 私は姉の二の舞にさせるわけにはいかない! 私の力は知っているでしょう!」

 アリスは一歩も引かない。

 衛兵たちは、アリスの持つ特別指令と、両者の緊迫した対立に挟まれ、身動きが取れずにいる。

 その時、魔道馬車の車輪の周りに回転していた魔法陣の光が、突如として赤く点滅を始めた。

「まずい! 馬車が、予定ルートを逸脱して強制出発する!」

 アリスが叫んだ。

 ゴォオオオォッ!!

 車体全体を包む光が赤色に強まり、巨大な馬車が、轟音と共に東門の奥へと急発進した。

「ユウ、急いで!」

 アリスは俺を掴んだまま、東門の外、人々のいない影へと引きずり込んだ。

 背後では、レンシオが悔しそうに短剣を地面に突き立て、怒鳴っている。

「ちくしょう! イーフォンに先を越される! 今すぐ追え!」

 (イーフォン? レンシオの仲間じゃなくて、イーフォンが仕掛けた罠だったのか?)

 混乱が極まる中、アリスは俺の耳元で囁いた。

「王都行きは中止よ。私たちは、別のルートで街を出るわ。あなたには、今すぐイーフォンへ向かってもらう」

「イーフォンに!? なぜ?」

「姉のメモにはこうある。『転移者が元の世界へ戻る手がかりは、この世界では異端とされる場所にある』。それは、オムネットとは敵対関係にある、技術大国イーフォンよ!」

 アリスは、俺のリュックのチャックをそっと開け、銀の杖と青いカードの存在を確認した。

「東門はもう監視下よ。私たちは、裏の地下水路から街を抜ける。覚悟して、ユウ。これがあなたの本当のスタート地点よ」

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