第五話 嬉し恥ずかし新婚初夜
アラクロ大陸に到着したわたくしは、正装してガーネット様と一緒に王族専用の馬車に乗りました。
結婚式パレードです。大通りをゆっくり馬車で移動し、民衆に笑顔で手を振るのがわたくしの役目です。
ケモノの耳を持った人、ツノのある人、緑色の肌をした人など、魔族は多種多様です。
最初はびっくりしてしまいましたが、皆さん笑顔でわたくしたちを祝福してくださったので、だんだん驚きよりも喜びの方が勝ってきました。
こんなに喜んでくれるなんて、魔族の皆さんはとても柔軟な思考を持っているのね。人間もこのくらい大らかな気持ちになれるよう頑張らなければ、などと感心してしまいました。それと同時に、受け入れてもらえてとても嬉しかったです。
パレードから帰ってきたら上級魔族の方たちと晩餐会です。皆さん終始笑顔でわたくしに対応してくださり、とても楽しい時間が過ごせました。
晩餐会が終わったあとは湯浴みをし、白いネグリジェに着替えました。
侍女に部屋に案内してもらい、ベッドに横になります。
つ、疲れましたわ。ここ数日ハードスケジュールでしたものね。もう寝てしまいたいけど、ここからわたくしの最後のお仕事です。
最後のお仕事……つまり、夜のお勤めです。
ガーネット様と夫婦になったからには、世継ぎを産まなければいけません。普通は結婚したその日に旦那様と初夜を迎えるものです。つまり、今夜わたくしはガーネット様と本当の意味で夫婦になるのです!
きゃーー!
緊張してしまいますわ! 床の作法は一通り学んできましたけど、失敗したらどうしましょう!?
ガーネット様は、優しくしてくださるかしら? 下手くそだって怒ったりしないかしら?
いいえ、大丈夫よ。だってガーネット様は大人ですもの。きっとお子様なわたくしをうまく導いてくださいますわ。
「きゃーっ! わたくしったら、はしたない!」
わたくしは嬉しさと照れ臭さが混同して、きゃあきゃあ言いながらベッドを転がり回った。
さあ! 覚悟を決めなさい、ロゼリーヌ!
もうすぐガーネット様がお越しになる。
わたくしはワクワクドキドキしながらガーネット様が来るのを心待ちにしていたのだった。
※※※※
「ロゼリーヌ様。お目覚めください。もう朝ですよ」
侍女の声が聞こえて、わたくしは眠りから覚めた。
ハッとしてベッドから飛び起きる。
窓の外を見ると、爽やかな朝日が差し込み、眩しかった。
え!? もう朝じゃない!
わたくし寝てしまったの!?
ガーネット様との熱い初夜は!?
動揺するわたくしには気付かずに、侍女が笑顔で朝の挨拶をする。
「おはようございます。ロゼリーヌ様」
「お、おはよう……。あなたは?」
「私はロゼリーヌ様のお世話を任されたニーナと申します」
「そ、そう。よろしくニーナ」
ニーナはウサギの耳が生えた可愛らしい獣人だった。
歳はわたくしと同じ十六歳くらいだろうか? こんな子がわたくしのお世話をしてくれるなんて嬉しい。
でも、今はそれよりガーネット様よ!
昨晩ガーネット様はわたくしの寝室に来てくださったのかしら? わたくし、あの方が来る前に寝てしまったのかしら? かなり遅くまで待っていた気がするんだけど……。
「ロゼリーヌ様。朝の準備をお手伝いしても構いませんか?」
考え込むわたくしをよそに、ニーナは笑顔でそんなことを言った。
「え、えぇ。よろしく頼むわ」
あれ? おかしいですわね……。
なぜガーネット様はわたくしを抱いてくださらなかったのかしら?
それとも抱こうとして寝室に来たのだけど、わたくしが先に寝てしまったから諦めたのかしら?
もしそうなら、起こしてくだされば良かったのに……。
分からない……。
初夜に夫婦の営みをしない新婚なんて有り得る!?
なにかの間違いじゃないかしら!?
ガーネット様はどういうおつもりなの!?
誰か! 誰か教えてーーー!
わたくしは頭のなかで盛大に叫びながら、ニーナに身支度を整えられたのだった。




