第四話 お父様の思い
とても楽しかった舞踏会が終わり、それから披露宴の準備が始まりました。
最初はイヤイヤと駄々をこねていたわたくしが、舞踏会のあとは人が変わったようにウキウキしていたので、お父様はとても驚いていました。
「ロゼリーヌ。一体どうしたのだ?」
「だって、ガーネット様ってとっても素敵なお方なんですもの!」
「……」
普段表情を変えないお父様が、この時はとても嬉しそうに微笑んだのです。
「そうか。ロゼリーヌもガーネット殿が気に入ったか。ワシも、あの方はとても素晴らしい方だと思う。粗野などと言われてきた魔族だが、それは偽りだと確信した。ガーネット殿を見れば、魔族はとても礼儀正しく、聡明な種族だと分かるだろう?」
「はい。その通りでございますわ。ガーネット様とお話して、噂など信じていた自分を恥ずかしく思います」
「おおっ。よくぞ言った! さすがワシの娘じゃ」
「ふふ。ガーネット様との披露宴、楽しみです」
お父様はニコニコ微笑みながら、わたくしの頭を撫でてくれた。
「良い子だロゼリーヌ。幸せにおなり」
こうしてお父様とも無事仲直りをし、わたくしはガーネット様との結婚式を心待ちにしていたのだった。
※※※※
披露宴は人間の国で挙げた。
たくさんの人にお祝いされ、それはもう盛大な式となった。貴族たちはこの前やった舞踏会でガーネット様を拝見したのでさほど驚いた様子はなかったが、平民にお披露目したとき、みんな目を丸くしていた。やっぱり魔族の特徴である頭のツノに驚いてしまったようだ。
まあ、最初は困惑しても仕方がないと思う。
これから魔族もどんどん人間の国にやって来ると思うので、少しずつ慣れていってくれればいい。そうしていつか魔族と人間の溝が薄まり、肩を並べて語り合う姿が見られたら、それ以上に嬉しいことはないですわ。
わたくしとガーネット様の結婚が、両種族が仲良くなれる架け橋となればいい。
そんなことを思いながら、わたくしは幸せいっぱいで国民の顔を見回したのだった。
※※※※
披露宴が終わったあと、わたくしはいよいよアラクロ大陸に向かった。馬車で行ったら何ヶ月も掛かる旅になるのだが、そこは心配いらない。
なんと、魔族は『転移魔法』が使えるからだ。
転移魔法とはその名の通り、今いる場所から転移して他の場所に移動する魔法なのです。
城に常駐している大賢者様ですら、そんな高度な魔法は使えません。
それをガーネット様率いる魔族の精鋭部隊は軽々と使いこなすようなのです。
やはり、魔族は魔法が得意と言う噂は本当だったようですね。
旅立つ前に、最後の挨拶をお父様とお母様に伝えた。
「では、行って参ります」
「ああ。体に気をつけるのだよ」
「行ってらっしゃい。ロゼリーヌ」
目に涙をためてこちらを見つめる二人に、わたくしはニッコリと微笑み手を振ったのだった。
さあ、新しい生活の始まりです。
文化も環境も違う世界でうまくやれるか不安ですが、それよりも大好きなガーネット様と夫婦になれるのが嬉しくて、わたくしは胸いっぱいの希望に満ち溢れた気持ちで、アラクロ大陸に向かったのでした。




